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君と僕にエールを
前回の記事に、温かいコメントをいただいて、ありがとうございました。
さすがに本調子でないところに、遊びに行けなくてストレスためてる子供たちの面倒を見ていて疲れ気味だったので、本当に励まされました。

お陰さまでまだ薬は残っているので飲みきらないといけないのですが、とりあえず家族みんな元気になりました。
私も実家に行ってゆっくりさせてもらったりして、少しお話の方から遠ざかっておりました。

そんな時ほど不思議なもので、妄想って浮かんだりするんですね・・・
これから少しずつ、それを作品にしてみようかと思います。

今日はリハビリ(?)で書いた短めのお話を。

時期的に、もう少し早く公開したかったなあ・・・

そんなわけで、お付き合いいただける方はつづきからどうぞ。
... Read more ▼
・・・・・・・・・・・・

「…………」

入江家のダイニング。
大きな窓からは朝陽が射し込み、床を明るく照らしていた。まだまだ冬ではあるが、爽やかな朝そのものの風景である。

しかし。
食卓についた琴子の顔は浮かない。はあぁぁぁー……と、もう何度目かになる長い溜め息をついている。目の前には紀子が作った朝食があるのだが、なかなか手をつけようとしない。かれこれ10分ほど、その状態が続いている。

「全く何だよ、さっきから溜め息ばっかりついて!さっさと食べろよ」

同じテーブルについてトーストをかじっていた裕樹が怒鳴る。

「だ…だって……」

琴子は途端に目を潤ませ、裕樹を見た。

「だって…つ、ついに来ちゃったのよこの日があっ!あたしのあたしの運命を決める日が……!」

「そんなこと言ってたってしょーがないだろ。泣いても笑っても今日が本番なんだから」

今日は看護師国家試験の当日。この1年、琴子が必死に勉強してきた成果をぶつける日が、ついにやってきたのだ。
しかし……本人は過度の緊張からか元気がない。足取りは重く、覇気の欠片すら見当たらない始末だ。
裕樹は呆れつつも、何とか少しでも琴子を前向きにさせようとしている、のだが。

「ほら、さっさと切り替えろよ!もう当たって砕けるしかないんだから」

「く、砕けるなんて…なんてこというのよーっ!縁起でもないっ」

言うなり、琴子はテーブルに突っ伏してしまった。うう…と声が漏れ聞こえる。

「大丈夫よ琴子ちゃん!この日のために、琴子ちゃんはこの1年頑張ってきたんじゃないの!お兄ちゃんと離ればなれになっても健気に……だから絶対大丈夫よっ」

コーヒーサーバーを持ってキッチンから出てきた紀子が琴子のそばにやって来た。ひたすら明るい声で励まそうとしている。

「お義母さん……」

琴子がそろりと少しだけ顔を上げて紀子を見た。目にはまた涙が浮かんでいる。

「でも、あたし昨日からすごい緊張しちゃって……3日前から入江くんに電話しても留守電だし。昨日の夜にもかけたんですけど、やっぱりいないみたいで声も聞けなくて。もうそれから落ち着かなくてあんまり眠れなかったし……」

そう言う琴子の顔色は確かにあまり良くなかった。

「それに……もし今日、試験が全然できなかったらって思うと……もう1年、入江くんと離れて暮らさなきゃいけないのかって考えたら、も、もう」

そう言ってまた涙を浮かべる琴子に、裕樹がキレた。

「そんなこと今考えるなよ!ともかく、試験は受けないことには始まらないだろっ。ここでぐずぐずしてたら、遅刻して受けられなくなるぞ!そしたら受かるもんも受からないからな!」

「そ、それは嫌っ」

「じゃあさっさと食べて出掛けろよ!」

「は、はあい…」

琴子は力なく返事をし、箸を取ろうとした。
その拍子に。

「あっ」

するりと箸が手から落ちた。

「………」

琴子がそのまま、固まっている。そして。

「お…おちた……」

瞳を大きく見開き、唇を震わせたかと思うと。

「いやあーっあたしもうダメーっ!落ちるーっ!」

再びテーブルに突っ伏した琴子に、裕樹も紀子も思わず溜め息をついてしまった。





紀子に宥められつつ、何とか朝食を食べられるだけ流し込み、支度を終えた琴子は玄関で靴を履いていた。

「ファイトよ、琴子ちゃん!大丈夫よ、絶対!」

「ま、やるだけやったんだから。今日は頑張って来いよ」

まあ、見送る時くらいはちゃんと励ましてやるか。そう裕樹が言ってやると。

「……!今、今の!も1回言って!入江くんに言われてるみたい!」

「ちょ…は、離せよっ」

いきなり琴子にしがみつかれ、裕樹は真っ赤になった。
最近、裕樹は声変わりして声が直樹に似てきている。
と、そこに。


RRR…

リビングの方から、電話の音が聞こえてきた。

「あ、電話っ」

裕樹は咄嗟に琴子を引き剥がし、リビングに走っていく。

「あーっ、もう。もうちょっとだけでも、入江くんに似た声聞きたいのに……あ」

不満げに頬を膨らませた琴子は、廊下の奥から現れた人物に気づき、目を丸くした。

「お父さん。寝てたんじゃないの?」

裕樹と入れ替わりに現れたのは重雄だった。

「うるさくて寝てられるか。さっきから大騒ぎしやがって」

「ご、ごめんなさい」

「今日はしっかり頑張って来いよ」

ぶっきらぼうに言いながらも、重雄の目は心配そうだった。

「う、うん……ど、どうしようお父さん。あたし……」

「何言ってんだ。もうここは腹くくって、試験を頑張るしかないだろうが」

「そ、そうなんだけど、でも怖くって」

諭すように言い聞かせる重雄に、琴子はまだ不安でいっぱいの顔を向けた。
そこに。

「琴子。電話」

リビングから戻ってきた裕樹が、琴子に電話の子機を差し出した。

「電話?あたしに?」

目を見張る琴子。こんな朝早くに、電話が来ることなどそうそうない。首を傾げながら、そろそろと受話器を耳に当てる。

「……もしもし」

――よお。

(え……?って)

短い第一声。受話器から、間違いようのない声が聞こえた。
思わず琴子は固まってしまう。

「い、入江くん!?」

――ああ。そろそろ家を出るだろうと思って。

落ち着いた低い声は、確かに直樹のものだった。

「入江くぅん……あ、あたし」

3日前からずっと聞きたくて聞けなかった直樹の声に、琴子は思わず涙ぐんでしまう。

――お前のことだから、ここ3日、ずっと電話してきたんだろ。ずっと、当直だったり急変があったりして帰れなかったんだ。

「そうだったんだ……」

直樹の口調はいつもと変わらない。淡々としたものだった。

――とにかく、落ち着けよ。忘れ物はないな。受験票とか。

「うん。さっき確認したから大丈夫」

――試験会場間違えたりするなよ。

「それは、モトちゃん達と待ち合わせして一緒に行くから大丈夫」

答えながら、琴子は少しずつ気分が落ち着いてくるのを感じていた。

「い、入江くん……あの」

――お前は大丈夫だ。絶対。

また少し弱気な声で呼び掛けた琴子の耳に、それまでとは違う口調の直樹の声が飛び込んできた。

――お前は絶対、大丈夫だ。

もう一度、直樹が言った。しっかり言い聞かせるように、力強く。

――だからお前は、そう言ってる俺を信じろ。

「入江くん……」

――ほら、もう行け。気をつけろよ。

「う、うん!あ、あたし、頑張るねーっ!」

そう言う琴子の顔は、さっきとはうってかわって明るいものになっていた。
通話が切れた子機を裕樹に返し、顔を上げる。

「お父さん、お義母さん、裕樹くん。あたし、頑張るからね!行ってきます!」


――大丈夫。あたしは、絶対。

直樹の言葉を心の中で繰り返して。

琴子はドアを開け、明るい光の射す外へ踏み出した。


***


「あっ入江先生。ここにおったんか。教授が探してたで」

そう声をかけられたのは、外来の待合室の隅にある公衆電話から直樹が離れようとしていた時だった。

「ああ。今行く」

呼びに来てくれた同じ研修医の同期に答え、医局の方へと歩き出す。

「昨日の夜も急変あったりで大変やったらしいなあ」

同期が横に並んで訊いてきた。

「ああ。何とか今は落ち着いてるけど」

「あれ、一昨日も当直やったよな?2日帰ってへんの?」

「いや、その前も急患で帰れなくて」

「うわ、3日!?大変やったなあ。……って、それにしちゃあんまり疲れてるよーに見えへんけど」

「そうかな」

そう答えながらも、直樹は今、確かにあまり疲れを自覚してはいなかった。

「今、充電したからな……俺も」

「え?」

「いや、何でも」


(今日が休みじゃなくてよかったな)

直樹はふと、そんなことを考える。
家で一人でいたら、きっと落ち着かなかっただろうから。病院で忙しさに没頭していた方がいい。

(自分の試験の時は緊張なんかしたことなかったのにな)

そう思い、思わず苦笑する。

――でも。
琴子が、頑張っているから。今日もきっと、この1年離れている間に一人でやってきたことを、ぶつけてくるだろう。

――神戸に来るために。

(だから、大丈夫)


だから、自分も。
今は精一杯、自分のすべきことをしよう。
どんなに忙しくても。体は疲れていても。

この春が明るいものになることを信じて。


頑張れ、琴子。
頑張れ、俺たち。


離ればなれの時間は、きっと、あともう少し。
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Re: マロン様
コメントありがとうございます!

琴子にとって、この試験は今までとはまるで重要度が違いますよね。受かれば直樹のもとに行ける、そうでなければもう1年離れ離れ・・・まさに天国と地獄なわけで。
プレッシャーは半端なかったと思います。
でも、そこは琴子。直樹の一言で百人力!

そして一方の直樹は、試験で緊張なんて生まれて初めてだったでしょうね・・・しかも自分の試験じゃないのに(笑)。

「頑張れ・・・」のフレーズ、その通りです!私もあのシーン凄く好きで…直樹にも言ってもらいたくて、今回このお話を書きました。

体調の方はだいぶ落ち着きました!子供たちもすっかり元気です。お気遣いいただいてありがとうございました!

(*^_^*)
Re: たまち様
コメントありがとうございます!

直樹がいない、声が聞けない・・・それがどれだけ琴子にダメージを与えてしまうか・・・
こうなると、ほんとに誰が何を言ってもダメなんですよね。
でも、直樹からのほんの短い電話でも、琴子にとっては無限のパワーを与えてくれます。

確かに、仰る通り、一緒に働きたいのは直樹の方が強いと思います。
離れ離れになることを最初に言い出したのは直樹ですし、実際離れてみて予想外のダメージを受けたのも直樹ですしね。

本当にそうですね。直樹はきっと琴子に、自分に対して尊敬の気持ちを持っていてもらいたいっていうのはあると思います。だからこそ、直樹も頑張れる。
そうやって、実は支え合っている二人です。

Re: ののの様
コメントありがとうございます!

はい、皆元気になりました!ううう、オムツトレーニング・・・ホントにハードル高いです。でも前にのののさんに言っていただいた通り、取れない子はいないですもんね。気長に頑張ります。

はい、この時期は実は直樹はもういっぱいいっぱいではないかと。
直樹にとっても、琴子の試験は人生において重要なことになってますよね。

私もお話を公開するにあたって、時期とか季節とかはやっぱり気にしています。
のののさんは西暦シリーズでかなりピンポイントにあわせていますよね。凄い!
私は書くのが遅いので、合わせるつもりがズレまくりなんです・・・(>_<)

確かに、国家試験の合格発表、今よりも遅かったって聞きました。
でも原作がそこまで詳細に書いていないので、私はあんまり気にしなくてもいいかなー、と思っていたりします。原作に準じる!ってことで(笑)。(すみません、根がアバウトな人間なんです・・・・・・)

はい、なんだかんだでもう新年度ですね。うちも明日、始業式です。ちゃんと朝、起きれるのか…目下の命題はそこですね・・・
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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