スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
あの頃から、ずっと。
リクエストいただいていたお話です♪

原作の後のお話になります。琴美ちゃんが出てきます。


... Read more ▼
・・・・・・・・・・・・

「ただいま~!」

ある日の午後。
入江家の玄関が開き、元気な声が響いた。

たったったっ…

廊下を走る軽快な足音がし、

「パパ!」

勢いよくリビングのドアが開いた。可愛らしい声とともに、小さな影が飛び込んでくる。

「お帰り、琴美」

出迎えたのは直樹。今日は当直明けでこの時間、家にいた。
読んでいた本を閉じ、ソファから立ち上がる。琴美はばふ、と直樹に抱きついた。
琴美は幼稚園の制服を着ている。現在は年長さんであった。

「パパ、今日はおうちにいるんでしょ?後で公園に遊びに行こうよ」

「ああ、いいよ」

無邪気な愛娘に顔を綻ばせる直樹。こんな直樹を見たら間違いなく琴子は焼きもちを焼くところだろうが、今、琴子は日勤のため不在であった。

「今日は幼稚園、どうだった?」

琴美を抱き上げ、直樹は顔を覗き込む。
途端に琴美は顔を曇らせた。

「どうした?」

下を向いてしまった琴美に、おや、と思う直樹。いつも元気な琴美にしては珍しい。

「う、ん……あんまり楽しくなかった」

「どうして?何かあったのか?」

琴子に似て明るい琴美。幼稚園でも人気者だ。いつも楽しそうに幼稚園であったことを話してくれるのだが。

「あのね……おんなじクラスのユウトくんがね、意地悪するの」

「意地悪?」

「うん。ボールを琴美にぶつけてくるの。それで、やめてって言ったら、わざとじゃないよって言うの。それで、からかってくるんだよ」

その時のことを思い出したのか、琴美は少し怒った顔をしている。

「琴美が違うところに行ったら、またやるの。やだって言ってるのに」

「………」

「ねぇパパ、何でそんなことするのかな?やだって言ってるのに、やめてくれないの。すごく楽しそうに、同じことしてくるんだよ」

「……何でだろうな…?」

複雑な顔になる直樹。

「帰ってくる時、おばあちゃんに聞いたんだけど、わからないって。だからパパに聞いてごらんって」

「お袋……おばあちゃんが?」

「うん。パパならその子の気持ち、きっとよくわかるわよって。パパも昔、ママに同じようなことしてたからって。おばあちゃん言ってた」

「………。おばあちゃんはどうしたんだ。一緒に帰って来たんじゃないのか?」

琴子が仕事でいない日、琴美を幼稚園まで迎えに行くのは紀子の役割である。

「おばあちゃんは買い物に行くって言ってた。だから帰るまでの間、パパに聞いておいてって」

「………」

「ねぇパパ、どうして?それに、どうしてママに同じことしたの?ママも嫌がってなかった?」

純粋な瞳で見上げられ、直樹は返事に窮した――



***


(ボールをぶつけて、か……)

夜の寝室。
ドレッサーの前で髪をブラッシングする琴子を何とはなしにベッドから眺めていた直樹は、ふと思い出していた。

あれは高校3年生の夏休みのこと。
テニス部の練習のため、直樹は斗南高校のグラウンドに出てきていた。
ラリーの練習中にふと目に飛び込んできたのが、翻る長い髪だった。

(………?)

もしかしなくても、あれは。
ラリーが途切れ、グラウンドに目を走らせると、それは、やはり琴子だった。何故か制服姿でグラウンドを走っている。部活の練習で多くの生徒がそれぞれのユニフォーム姿で活動している中、長い髪を振り乱して走る琴子の姿はかなり目立った。
恥ずかしいのだろう、真っ赤な顔をしながらそれでも必死に走る琴子に、直樹のイタズラ心が芽生えた。


ボールが、ネットの向こうから飛んでくる。直樹は目の端で走る琴子の位置を見た。そして。


バコン!

「ぎゃっ」

直樹の打ったボールは、見事琴子の頭に命中していた。

今度は怒って更に真っ赤になっている琴子に、自分は言ったのだ。

「あーごめん。わざとじゃないよ」

「・・・・・・・!」

「補習してなかったの」

ニヤニヤしながら聞いてやる。

「ほっといてよ。走りたいのよ」

ふてくされたように答える琴子。

「裕樹に報告しなきゃな。あんたの学校での様子、教えろっていうし……琴子は先生に怒られてグラウンドを走らされていました、と」

「いわなくっていい!」

図星を刺されたのだろう、琴子はむきになって怒鳴った。

「もうっ!どーしてそう、兄弟してあたしをバカにするのっ!」

「俺がこんなに注目してるんだぜ?嫌なのか?」

「えっ…ち、注目……?」

「ああ。俺に見られてるの、嫌?」

「えっ……と、あの……あたしを見てる、の?」

「ああ。まるで違う生物だからな」

「またそうやってからかって!!」

その後はもう、喧々囂々の言い争いだった。
いや、琴子が怒って言い返してくるのを、自分はさらりとかわしてやる。そんなことの繰り返しだった。
ただ、自分のすること、言うことに反応して目の色を変える琴子が面白くて。
もっともっと、その反応が見たくて。

今となっては、その感情に名前をつけることができるけれど。
当時は思いもよらなかった、そんな自分の心の奥底。

(ああ、あの頃から俺は――)

そんな風に思う相手は、後にも先にも琴子しかいない。

「入江くん?どうしたの?」

くすりと笑った直樹に、琴子が振り返った。

「……いや。今日は琴美はお袋のところか?」

「うん。何だか二人でお話があるんだって」

ブラシを置いてスツールから立ち上がった琴子は、ベッドにやってきた。

「そういえば、みーちゃん、パパは天才なのにわからないことがあるんだねー、って言ってたけど…何を聞かれたの?」

直樹の隣に潜り込みながら、琴子が尋ねる。

「さあ、何だろうな?」

「えー、知りたい!入江くんが答えられなかったことって、何!?」

とぼける直樹に、琴子はがしっと腕を掴んでじっと見つめてきた。好奇心で輝く瞳。

「知りたい?」

「うん!」

「どうしてママは看護士になって何年も経つのに未だに失敗ばっかりなんだろう、って」

「嘘!みーちゃんがそんなこと言うわけないじゃない!」

途端に不満をあらわにする琴子。
その拗ねたような、怒った表情に直樹は破顔する。

「もうっ、何笑ってんの!」

…こんな顔も。

「それは嘘。本当は、ママは何でいつまでもあんなに可愛いのかなって」

「えっ。ほ、ホント?///」

……こんな顔も。

「ばーか。嘘だよ」

「もうっ!」

……こんな顔も。

くるくる変わる表情から、目が離せない。

「まあ、質問に答えられなかったのはな」

「…え?」

「強いて言えば、お前のせいだな」

「なっ…何それっ……っ」

思い切り責任転嫁すると、直樹は言い返そうとする琴子の唇を塞ぐ。


(俺にも、答えられないよ)

どうして、こんなにも琴子から目を離せないのか。
どうして、その反応をずっと見ていたいと思うのか。自分によってその表情を変えていくのが、たまらなく面白くて――心惹かれてならないのだ。


(天才にも、わからないことがあるんだよ)

あの時も、今も、変わらない。

そしてそれは、きっと永遠の謎――




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

いや、あの頃の君の愛情表現は幼稚園児並みってことですよ、直樹さん!

てなわけで、リクエスト内容は、「原作2巻のテニスをしている直樹が琴子にボールをぶつけるシーンの真相を」ということでした。
あの時のことを直樹に回想させてみたのですが……ねーさん様、いかがでしたでしょうか…
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

Secret
(非公開コメント受付中)

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re:マロン様
コメントありがとうございます!

ホントですか?ありがとうございます。嬉しいです!
(*^_^*)


はい、直樹はそういう感情をずっと知らずに来ましたからね。高校当時も、自分ではよくわかっていなかったでしょうね。
リクいただいて、原作読みなおしたら、天才なんて言われていながらなんて子供っぽい!って思いましたよ(笑)。

この二人には子供ができても永遠に、こんな素敵な恋人同士でいてほしいな、と思います。

そして紀子さんは・・・(笑)。しっかり琴美ちゃんを一晩預かるなんて、ホントに手回しいいですよね。でも、子供が生まれてからは、直樹はむしろ感謝しているかも・・・と思いました(笑)。
Re: たまち様
コメントありがとうございます!

直樹は、意外に子煩悩・・・というか、琴子に似ている琴美だから、可愛くて仕方ないんじゃないかな、と思いまして。これが男の子だったら、また違う反応だったりして(笑)。

そうそう、男はそういうとこ、馬鹿ですね(笑)。天才といえども、その辺は変わらなかったんですね。
紀子さんのほくそ笑む顔が見えるようなこの展開(笑)。
きっと、お兄ちゃんもあれだけ琴子ちゃんをいじめたんだから、自業自得よ~、とかって思っていそうww。

そうですよね、テニスがうまい直樹のこと、あんな風に頭にぶつけるなんて、どう考えてもわざととしか思えません。
実はこの頃から、琴子におちていた、ということを今頃自覚しています。

わあ、やっぱり実際にも幼稚園くらいでそういうことあるんですね。
Bくん可哀想。Aくんに嫉妬していたのかな?
なんだか微笑ましいです。
(*^_^*)
Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!

よかったーーー!!
そう言っていただけて良かったです。

そうそう、もうあれは幼稚園児並みですよ。
天才といえども、やっていることは子供なんだって、何年も経ってから琴美ちゃんによって直樹に気づいてもらいました(笑)。

あら、ねーさんさんもいろいろやっていたんですか?男前!(笑)

直樹の子供ですか・・・考えたことありませんでした。まだ琴美ちゃんしか書いたことなかったですね。
でも、コメント読ませていただいて、男の子がいたらどうなんだろう・・・と想像してみたので、その内そんなお話を書くかもしれません。
しかし11人って!直樹さんどんだけ・・・(爆)

そんなところを想像してもらって、ありがとうございます。
ほんとに嫌みだ・・・そんなところに天才的なテニスのテクニックを使わなくてもいいのに(笑)。

いえいえ、こちらこそ、楽しく妄想&お話を書かせていただきました!
リクエストありがとうございました!
ema様
拍手コメントありがとうございます!

癒された、なんて言っていただいて凄く嬉しいです!ありがとうございます。
拙いお話ばかりなのですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。