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あの日の夜をもう一度 3
先日の記事に、たくさんの拍手&励ましのコメントをいただいてありがとうございました!
すごく嬉しかったです。

そのお陰もあって、続きを書くことができました。

不器用すぎる直樹と一途で強い琴子のお話。
お付き合いいただける方はどうぞ。

... Read more ▼

・・・・・・・・・・・・

「…おい。お前、キンチョーしてる?」

「俺と一晩過ごすんだもんな。何かあるかもって」

「キスしたり。もっとそれ以上のことをしたり」

ちょうど1年前の夜、俺が言った言葉。
同じベッドの上、同じ布団の中にいるあいつに向かって。
真っ赤になって固まって……どう見ても緊張している琴子を、俺はからかった。
そうやって、見ないふりをした。あいつを意識している自分の心を。

いつもと違う――ざわざわと騒ぐ自分の心。
それに戸惑って。

俺の中に、得体の知れない炎が棲んでいる。
俺は、生まれて初めてそれを知った――


***


「帰らないって……」

琴子の言葉に、俺は戸惑いを隠しきれないでいた。
心が大きく波立って、ざわついて。

そんな自分を琴子に見せたくたくて、俺はいつもの調子で言った。

「ったく、何言ってんだ。あれくらいのアルコールで、もう酔っぱらったのかよ」

「酔っぱらってない」

凛とした声が響いた。
俺を真っ直ぐ見つめる琴子の目。
そこには、いつもの無邪気さは欠片もなかった。

「帰らないよ、あたし。ずっと、入江くんといたいから……」

はっきりとそう言った琴子の瞳は本気で。
軽口や冗談で済まされない、そんな決意が感じられた。

そんな琴子は、あまりに予想外で。
いつも突拍子もないことをしては、俺を呆れさせていたけれど、今の琴子は、今までのどんな時とも違っていて。

こんな琴子は――知らない。
俺の知らない顔をしている。


「お前……」

わかっているのか?
本当に?
ずっと一緒にいるってことの意味。

「わかってるよ、あたし」

俺の心の中を読んだように、琴子が言った。

「入江くんが好きだから……大好きだから」

俺を射抜くように、真剣な瞳。

「だから、あたし……」

そこまで言うと、琴子は口をつぐんだ。
さすがに、その続きは口に出せなかったらしい。
けれど、琴子は真剣な顔のまま、俺をじっと見つめている。


琴子の視線に囚われたように、俺もまた琴子を見つめていた。

琴子がまさか、そんなことを言うなんて――
そんな戸惑い。

でも、それとは別に。
俺の心の片隅に、密かに隠してきたものが息づいているのがわかる。
琴子の言葉が、視線が。
まるで俺に火をつけるように。
今まで抑え込んでいたそれと、図らずも対峙しなければならない、この状況。
そのことに、俺は何より戸惑っていた。

俺は、その時どんな顔をしていたのだろう。
不意に、琴子の顔が歪んだ。
強気な表情は、一転してみるみる弱々しいものへと変わっていく。

「やっぱりあたしが、お子ちゃまだから、……その気にならないの……?」

沈黙に耐えかねたように、琴子が呟いた。
その瞳が、涙で潤んでいる。

「あたしなんて、いくら頑張っても……スタイルよくならないし。あんなにチキンだって食べたのに」

――え?

「チキンって…」

何の話だ?
確かに最近、よくフライドチキンを食べていたけど。
訳がわからないでいる俺から視線を外し、琴子は更に続けた。

「理美にどうして胸がそんなに大きいのか聞いたら、鶏肉がいいのよって言うから……じんこの友達も、あそこのチキンよく食べてて、胸が大きいって」

「………」

そんな理由でチキンばっか食べてたのかよ。
思わぬ琴子の言葉に呆気に取られる。
そんな俺を他所に、琴子はいよいよ泣きそうになりながら言葉を紡ぐ。


「バストアップに効くっていうから、毎日頑張って体操もマッサージもしたのに……も、もしかして手術しなくちゃ入江くんにその気になってもらえないかもって……」

そこまで言うと、琴子はわっと泣き出してしまった。

……おい。
そんなことまで考えてたのかよ。
手術って……
なんだってそんな極端な発想になるんだか。
それに……体操って、もしかしてあれか?
さっき俺が帰ってきた時にそれに気づきもしないくらい熱心に何かやっていたけど。
あの時の、琴子の顔を思い出す。
どこか必死さを感じるくらい切実な表情。
それは。
お前もまた、俺達の関係を進めたいと思っていたのか?
――俺の本心と同じように。
いつも俺のそばで無邪気に笑い、はしゃいでいる琴子。
そんな姿からは想像もつかなかった。そんな想い。

全く、こいつは……



はあ、とため息をつくと、琴子がびくっと反応した。
涙でいっぱいの瞳をこちらに向けている。

「違う……そうじゃなくて」

俺の声は掠れていた。
違う。違うんだ。

「子供なんて思ってねーよ」

むしろその逆だ。だからこそ、悩んでいた。
子供なら、こんなこと思わない。
俺の言葉に、琴子が顔を上げた。目を見開いて俺を見つめている。

「え……でも昔、言ったじゃない。Cカップになったら……って。だからあたし……」



……おい。
お前、忘れっぽいくせに何であんな昔の俺の軽口は覚えてるんだよ。
おまけに、そんな早とちりで、そんなことまで考えて……

「ったく…お前は」

また溜め息が出て、俺は思わず苦笑していた。
相変わらずの突飛な発想と言動。
でもそれは、俺への想いから来たもので。
真っ直ぐな――呆れるほど真っ直ぐな、こいつの想い。
複雑に考えすぎていた俺を軽く飛び越えて、向かってくる。
そんな想いが、俺を……俺の心を解きほぐしていく――

そう。
…わかってる。わかってるんだよ。お前が、俺のことをどれだけ好きかってこと。
だからこそ俺は、……そんなお前を傷つけるのが怖かったんだ。
自分の中に抑え込んだ、小さな炎。
それは、俺の中に初めて生まれたもので。見慣れない、得体の知れないもの。
それが、お前を焼き付くしてしまいそうで。傷つけてしまいそうで。
自分でも、この炎を解き放ったらどうなるかわからないのに――
制御できないかもしれない。
本当は、それくらいお前を欲しているから。
ずっとずっと。
そんな自分を見たくなかった。
俺は、俺自身が怖かったんだ――


けれど。
こいつはいつもそうやって、感情のまま、突き進んできて。
俺を暴いていくんだ。
自分ですら知らなかった感情を、引きずり出していくんだ。
そして、俺に教えてくれる。
自分の感情の解き放ち方を。


本当は――

キスしたい。抱き締めたい。……抱きたい。

そんなことを思うのは、琴子だから。
お前だけだ。
生まれて初めての、こんな感情。
だから、どうしていいかわからなくて……自分がどうなってしまうかわからなくて。
それでも、琴子は大切で、傷つけたくなくて。

そんな想いと、自分の中のわけのわからない衝動の狭間で、俺はずっと、逃げていたんだ。
こいつの気持ちに気づかずに。


「あ、あの……もしかして、……呆れてる?」

俺が苦笑したからだろう、琴子が小さな声で訊いてきた。
おずおずと俺を見上げる瞳。そこには不安げな色が見える。
でも。
一度息を飲むように間を置くと、琴子は思い切ったように口を開いた。不安を吹き飛ばすように。

「でも、あたし……もっと入江くんを、知りたいの。もっともっと、近づきたいの。もっと……」

しかし琴子はそれ以上、言葉を続けられなかった。
俺の唇に、塞がれていたから。
噛みつくようなキスを繰り返すと、琴子の方もわずかに応える動きをした。
俺はそれを逃さず、そっと舌を琴子の咥内に侵入させる。
思わず引きこもる琴子の舌に自分の舌を絡ませると、俺は強く吸った。

「んんっ」

琴子の口から苦しげな声が漏れだす。

お互いの咥内に漂う濃厚な洋酒の香り。それに煽られるように、俺はキスを深くしていく。

――琴子。
お前はそうやって、俺をいつも導いていく。
あの時だってそうだった。
魂だけになっても。
その強いパワーで、俺を動かしていく。
俺のつまらないプライドや意地など、簡単に打ち壊して。
ああ。いくら抗ったって、結局無駄なんだ。
俺はこんなにも、お前に惹かれているから。


俺は、自分の心があの炎によって燃え盛るのを感じた。
ああ。もう、止められない。

「お前が……欲しいんだ」
唇を離して、俺はそう、呟いていた。
真っ直ぐに琴子を見つめて。

「ほんとはずっと、お前が欲しかった」

「え……」

琴子が目を見開く。
信じられない言葉を聞いたように。

「入江くん……本当?」

琴子が茫然と呟く。

「本当だよ」

強く琴子を抱き締めて、俺は耳許に囁いた。

「いいんだな?……どんな俺を見ることになっても」

「……うん」

琴子が頷いた。

「入江くんだから。どんな入江くんでも、あたしは大好きだから」

ああ、また、お前はそうやって、俺を受け止めるんだな。
そして、俺を動かしていく――


ちょうど1年前に生まれ、気づかないふりをした自分の感情。

それが今、解き放たれようとしていた。




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


この次の場面、翌朝っていうのはやっぱりないですよね……


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Re: たまち様
コメントありがとうございます!

琴子の言葉、行動は直樹にとって本当に強烈だったようです。
そうなんです。まさに、そういう直樹を書きたくて、このお話を書きました。
小さい頃のトラウマもあり、直樹って自分を出すことが本当に苦手だと思うんですよね。
たまちさんの言うとおり、これまでの人生は想定内で生きてきましたし、思い通りに行かないことも琴子に出会うまではなかったので、見たことのない自分を見ることが彼にとっては結構怖いことなのではないかと。

そんな直樹に一歩を踏み出させるのは、やっぱり琴子の男前なパワーなわけなんですね。

さて、この次・・・頑張って鋭意執筆中です・・・
Re: ねーさん様
あ、ありですかね・・・(汗)

いや、部分的(?)に書きたいことはあるのですが、・・・どうしたものかと。
生殺し、書きましたね!あれは楽しかったなー。
さすがに今回はできませんしね(爆)。

続き、頑張って書いております!
Re: ののの様
コメントありがとうございます!

な、ないですか・・・!!
いえいえそんな、私に期待はかなり荷が重いですー。
まあ確かに、この直樹さん5か月もよく耐え忍びましたよねえ。
耐える直樹が書きたかったわけではなく、結果的にそうなってしまっただけなのですが(汗)。

とりあえず、頑張って続き書いています。
Re: マロン様
コメントありがとうございます!

萌えていただきましたか・・・・・・よかったあ。今回はかなり難産だったので、そう言っていただいて嬉しいです!
そうそう、ほんとに口に出してあげればいいのに・・・そこで言えないのが直樹なのですが。

はい、琴子の思いはほんとに一途で強いです。とくに今回は直樹が弱いので(え)余計に際立っていますね・・・

な、なしですか・・・・・・
が、頑張ります!
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

琴子ちゃんは本当に恋する女の子そのものですね。
それだけに純粋で、確かにいろいろグダグダ考えすぎる直樹は適うはずありません。
確かに直樹は少し、過去の発言や行動を反省してほしいかも。まあこうして、自分に跳ね返ってきたりもしているのですが。

ともかく、ようやく箍が外れました!後は、直樹も突き進むのみ・・・

プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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