スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
あの日の夜をもう一度 2
更新が遅くなっていてごめんなさい!

実は、一昨日更新しようとしたら、それまで書いていた分のデータが消えてしまい……
(>_<)

記憶を掘り起こして書いてみたものの、何か違和感を感じてしまい加筆修正を繰り返していたらこんなに遅くなってしまいました。

季節ものなのに……
(ToT)


とりあえず、書き直した分を公開します。

... Read more ▼

・・・・・・・・・・・・

家庭教師のバイトが終わる時間は、決して早くはない。
あまり時間はないな……
俺は啓介くんの家を出て、家路を急いでいた。
ふと空を見上げると、澄んだ空気に星が瞬いている。

去年はあんなに大雪だったのにな。風も強くて、傘が全然役に立たなくて。
そんな中、この道を琴子と二人、歩いた。タクシーも捕まらず、駅に行っても電車が動いているかどうかもわからず……

「俺のマンション、来るか」

そう言った時は、まさか琴子を泊めることになるとは思っていなかった。

――だから。
そのことが、俺に何をもたらすことになるのか、

その時の俺は、全く――知らなかった。


***


上がった息を整えてから、俺はドアを開け、滑り込むように中に入った。
パタン、とドアの閉まる音。
しかし、何の反応もない。
もしかしていないのか?一瞬そんなことが頭をよぎったが、1枚ドアを隔てた向こうから明かりが漏れている。
なんだ、やっぱりいたか。そうだ。今日のこの日に、あいつがここに来ないわけがない。
去年の今日だって、あいつは大雪の降る中、雪だるまになりそうになりながらドニーズにやって来たのだから。

しかし、全く反応がないというのは……いつもなら、俺が帰ってきたら、すぐに玄関まで出てきて笑顔で出迎えてくれるのだが。
……何やってるんだ?俺はそっとワンルームに通じるドアを開けてみる。

琴子はちゃんと部屋にいた。こちらに背を向けているので、顔は見えない。

ずいぶん姿勢よく立っているな、と思っていたら。

琴子がおもむろに両腕を持ち上げた。両手を胸の前辺りで合わせると、両肘を同じ高さにした。そして手を合わせたまま、ゆっくりと左に移動させていく。


……何をしているんだ?一体。

今度は合掌した手を右に移動させている琴子。
よほど集中しているのか、全くこちらに気づかない。
俺は大きくドアを開けた。

「ただいま」

「わっ」

琴子がびっくりして前のめりになっている。

「い、入江くん……お帰りなさい。は、早かったね」

どことなくうろたえている様子で振り返った琴子。

「いや。お前、何やってたんだ?入ってきたのに全然気づかねーし」

「えっ?な、何もしてないよー。あ、入江くん、外寒かったでしょ。コーヒー淹れるねっ」

何かごまかすように、琴子はぱたぱたとキッチンの方へ向かっていく。
何なんだ……絶対に何か隠している。動きもぎこちないし。
バレンタインで何か渡すから緊張してる、ってことはないよな。
俺がそんなことを考えながら、脱いだコートを片付けていると、芳しい香りが漂ってきた。
琴子がここに来るようになってから、コーヒーを淹れる道具一式を家から持ち込んできた。お陰で、それまでインスタントだったのが美味いコーヒーを飲めるようになった。
琴子がコーヒーを淹れるのを見ていると、分量をきっちり計っているわけでもないのに、ちょうど俺好みのコーヒーになってるんだよな。

「お待たせ~」

琴子がトレイにマグカップを2つ載せて運んできた。琴子が選んで買った、お揃いのカップだ。
湯気の上がるコーヒーをゆっくり口に含むと、気分が落ち着いてくる。
琴子は俺がコーヒーを飲むのをじっと見つめていた。俺がカップを置くと、テーブルの下からさっと何かを取り出し、俺へと差し出す。

「入江くん、これ」

それは青い包装紙で包まれた平たい包みだった。少々不恰好なリボンがついている。こいつが自分で飾ったんだろう。

「あのね、これ、生チョコなの。今日作ったんだ。食べて」

「……お前が?」

「おばさんにうまくできたって言われたから大丈夫!甘さは控えめにしたし。ね、開けてみて」

明るく言う琴子に言われるまま、俺は包みを開けた。中から出てきた箱を開けると、焦げ茶色の粉末が大量にまぶされた四角いチョコレートが入っている。小さく切り分けられていた。

「ね、食べてみて!」

キッチンから持ってきたフォークを俺に差し出しながら、琴子が俺の横に座ろうとした、その時だった。
不意に、琴子の顔が歪んだ、と思ったら。

「――っくしゅん!」

琴子が、盛大なくしゃみをした。ぶわっとばかりに、チョコの上の粉末が吹き飛んだ。
俺の手とトレーナーは、粉まみれになっていた。

「あーっ、せっかくココアパウダーがいい感じだったのにっ」

――………。

お前、人の手と服を汚しておいて、第一声がそれかよ…

「つーか、これココアか?ったく、大量にかけすぎだろ」

「あっ!入江くんごめんねっ。何か拭くもの持ってくる」

ココアまみれの手を払っている俺にようやく気づいた琴子が、あわててキッチンへ身を翻す。

「ご、ごめんなさい。でもそんなにかかってたかなあ」

首をかしげながら戻ってきた琴子は、手に布巾を持っていた。俺のそばにすとんと腰を下ろすと、俺の手を拭こうとする。
琴子の小さな手が、俺の手に触れた。

「いいよ。自分で拭くから」

俺はとっさにそう琴子に声をかける。

「え?でもあたしが汚しちゃったし」

「いいって」

大きな瞳が、すぐ間近から俺を見上げる。俺はさりげなく目を逸らすと、琴子の手から布巾を取り上げた。手早く拭いていく。

全く…付き合い始めて最初のバレンタインに、何やってんだか。まあ、琴子らしいけど。

「ごめんね。はい、どーぞ」

そう言うと、琴子はフォークにチョコを突き刺し、俺の口許に運んできた。いつもの無邪気な、わくわくした表情で。
……まあ、さっきみたいに挙動不審なのよりはいいか。俺は言われるまま、チョコを口にする。
琴子の目が大きく見開かれ、それから嬉しそうに笑った。

まず口の中に広がったのは、強い洋酒の香りだった。これ、ブランデーか?ずいぶん入っている気がする。
でも、チョコの食感は悪くない。なめらかにできているし、甘さも控えめだ。こいつが作ったにしては、上出来ではないだろうか。

「ど、どう?」

少しだけ不安を滲ませながら、琴子が訊いてきた。

「ん。悪くないんじゃねーの」

「ほんと!?よかったあ」

途端に琴子の顔がぱあっと綻んだ。
そしてまたフォークを持つと、また1切れ刺して俺の口に運んでくる。

「でもこれ、だいぶ酒が入ってるみたいだな」

反射的に口に入れ、また洋酒の香りを味わいながら俺は言った。
そう。これは……酒に弱い奴が食べたら、結構やられそうな気がする。

「うん、ちょっと大人向けにしたんだ。あたしたち、もうハタチだもんねっ」

……大人向けに、ねぇ。
まあ確かにこれなら俺にも食べられるが。もう一つ、琴子にチョコを口に押し込まれ、俺の口の中はブランデーの香りでいっぱいになった。

「でも、よかったあ。今年はちゃんと渡せて」

琴子が幸せそうにふわりと笑う。
その言葉に、俺の中に一つ、疑問が浮かんだ。

「そういえば、去年はお前からもらった覚えがないな」

「えっ、ああ……そうだね…ち、ちょっと忘れちゃって」

「お前、あんな大雪の中来たくせに。それで忘れたの?」

それで、ドニーズでコーヒー飲みまくって粘った挙げ句に胃を悪くして倒れたんだよな。

「だ、だって……あたしも渡したかったんだけど、まさかあんなことになるなんて思ってなくて……っ」

琴子はそこまで言うと口をつぐんだ。下を向いて真っ赤になっている。
どうやら去年のことを思い出しているらしい。

1年前の今日、ここに来たことを。

……そうだな。俺だって、あんなことになるとは思っていなかった。

あの夜――去年の今日の日。
あのベッドで、二人で眠った日。
初めて、俺の胸の中にあの炎が灯った日。


「まあ、俺もあの時はどきどきしたよ」

黙ってしまった琴子に、俺はそう投げ掛けた。

「え……?」

琴子が顔を上げて俺を見た。驚いたような大きな瞳。

「ああ。眠れなかったしな」

「ほ、ほんとに?」

「お前にいつ蹴られるかって思ったらな。お前、寝相悪すぎ」

「もうっ!」

にやりと笑って言ってやる。からかわれたとわかった瞬間、琴子は怒った顔になった。

そう。こうして、俺は。
軽口や冗談の下に、隠すんだ。
本当の気持ちを。
俺の中に存在する炎を。
――欲望を。
あの時と同じように。

そうしなければ、今の俺は、自分を保てない。その時、そんな気がした。

だから、気づかなかった。俺のそんな態度が、琴子の心に火をつけたことを。


***


「ま、でもこれはうまくできたんじゃない」

「ホントに?」

まだ少し不貞腐れたような琴子に、チョコを指差してそう言ってやると、機嫌を直したのか、こちらを向いた。

「おばさんに勧められてこれを作ることにしたんだけど、よかったあ」

つまり、簡単に作れるものなんだろう。
ま、ココアまみれにされるのは勘弁してほしいけどな。

「しかしお前、ずいぶんたくさん作ったな。俺ひとりじゃ食いきれないぞ」

生チョコは、だいぶ多かった。市販の板チョコの大きさの倍はある。
すると、琴子はにこっと笑った。

「あたしもそう思ったんだけど、おばさんがね、二人で食べたらちょうどいいわよって。だから、作ったの全部持ってきちゃった」

だからこんなに大量なのか……

「でもよかったあ、入江くんに食べてもらえて。ふふっ、どれどれ~?」

琴子はフォークでチョコを刺すと、わくわくとした様子で自分の口に運んだ。

「……んー……うん、美味しいっ」

「お前……」

絶対そう思ってないだろ。眉間にシワ寄ってるし。

「ま、お前にはこれは無理だろ」

甘さはかなり控えてあるし、チョコの苦味が際立っている。何より洋酒がかなりキツい。
甘党の琴子には口に合わないだろう。

「え、そ、そんなことないよ」

「嘘つけ。苦いんだろ。ま、大人向けのチョコは、お前にはまだ早いってことだな」

「もう、そんなことないってば!」

琴子はそう言うと、もう一つチョコを刺して口に放り込んだ。が、やっぱりどう見ても美味いものを食べている顔ではない。

「ほら、やっぱりダメだろ。ま、お前はいつも食べてるお子様向きのチョコにしとけ」

「な、何よお子様って!」
「いーから。もうお前はこれ、食べるなよ」

俺はそう言うと、キッチンに行ってコップに水を汲んだ。
あいつは酒に弱いからな。そんなに食べてはいないけど、一応飲ませとくか。

「ほら、これ飲んどけ……」

言いながら、キッチンから戻ってみると。

「お前っ……何やってんだよ!」

箱に入っていたチョコのうち、半分近くがなくなっている。

「んー?だって、美味しいから。うん、大人の味っ」
……絶対無理をしている。
俺は手にしたコップをテーブルに置いた。チョコの入った箱を閉じると、冷蔵庫に入れる。

「ほら、これ飲めよ。そしたら送ってくから」

テーブルの上のコップを琴子へと押しやった。琴子はまた、俯いている。

「どうしたんだよ」

下を向いたまま動かない琴子に、俺は声をかけた。

「……らない」

琴子が呟くように何か言った。
何て言ったんだ?声が小さくて聞こえなかった。

「ほら、水飲んで早く支度しろよ」

俺はもう一度言った。もう結構遅い時間だ。

「……いや。帰らない」

今度は、はっきりと聞こえた。

え――?
今、何て言った?

「おい、お前…」

まさか、もう酔っぱらってるのか?
でも。

「あたし、今日は、帰らない……帰りたく、ない」

そう言って顔を上げた琴子は真っ直ぐ俺を見つめていて。
俺の心を射抜くかのようだった――。



☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

まずはチョコをww

しかしこの直樹は……。
書きながら、トーマが見ていたら絶対呆れてそう、と思ってました……

スポンサーサイト
Secret
(非公開コメント受付中)

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
No title
入江君!琴子ちゃん帰らないって?どうする、二人のバレンタインですね、いつになく>?大胆琴子ちゃん。
Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!

彼の理性は超人並かも・・・
そうはいっても、琴子ちゃんの頑張りというか攻撃というかで、もうそろそろ限界かとw

そうですね、確かに敵がいないと動かないのはあるかも。仕方のない人です。
Re: マロン様
コメントありがとうございます!
遅くなってしまっていてごめんなさい。

はい、もうめちゃくちゃショックでした・・・(T_T)

そして琴子はかなりいろいろ頑張っています。
直樹もさすがに理性の限界近いかも?ですね。^m^

Re: たまち様
コメントありがとうございます!
返信遅くなっていてごめんなさい。

もうほんと、フリーズしましたよ!
よりによって、こんな季節ものの時に消えなくってもいいのに・・・(T_T)


はい、もう琴子は頑張っています!いろいろと。
相当切実のようですね。
そして、無意識のうちに直樹を追い詰めていくのが琴子ですね。

今回は直樹いじめが多分に入っていますので(笑)、ジャブの連続攻撃、かましてみました♪
そして裏には紀子の影が・・・(笑)
いったいいつまで理性が持つのでしょう??
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

返信遅くなってごめんなさい。

禅寺の修行僧・・・(笑)。
でもそれ並みの理性ですね。

今回はちょっと頑張る琴子を書いてみたかったのですが、そうすると直樹が情けない状態になるんですね・・・
天才のイメージが(汗)。

まあ、琴子がこれだけ頑張っているので、直樹もそろそろ限界を迎えそうです(笑)。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

返信が遅くなっていてごめんなさい。

さあ、入江くんどうしましょう??
琴子ちゃん、かなり頑張っていますw
ゆうようらぶまま様
拍手コメントありがとうございます!

返信が遅くなっていてごめんなさい。

はい、そんないじらしい琴子ちゃんです。彼女にとっては切実なんですね。
しかし直樹はそんなことに気づかず・・・・・・

いろいろ思い出して下さったみたいで、書き手としては嬉しいです。うーん、青春時代ですね。私もすっかりそんな気持ち忘れておりました(笑)。
続きはいましばらくお待ちください~。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。