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あの日の夜をもう一度 1
奇跡の1日複数更新です。

実は今日で、このブログは公開1周年となります。
まさか1年続けられるとは思っていませんでした・・・・・・

いつも訪問して下さる方、コメントや拍手をしてくださる方のおかげで、1年間続けることができました。
本当にありがとうございます!

そんなわけで、「眠り姫」の後日談を早くも書いてみました。
季節ものなので、今日中に全部公開したかったのですが、続きものになってしまいました(泣)

でも、少しでも今日公開したかったので、1話のみ公開します。
お付き合いいただける方はどうぞ。
... Read more ▼
・・・・・・・・・・・・

「おい、起きろ!」

俺はローテーブルの上に突っ伏して眠りこける琴子の頭をはたいた。

「んー……なぁに……あれ……いりえくぅん……?」

とろんとした目をして、そろりと頭をわずかに持ち上げる琴子。
俺はそんな琴子からさっと目を逸らした。

「なあにじゃねーだろ。後期試験、もう絶望的だって言うからこうして勉強みてやってんじゃねーか。ったく、寝てんじゃねーよ!」

そう、今は1月半ば。後期試験直前である。
試験前になるとあわてて勉強を始めるのは相変わらずの琴子。今回もそのパターンで、早々に根を上げ、俺に泣きついてきたのだった。

こいつが事故に遭い、意識不明から目を覚ましてもう5ヶ月近くになる。
つまり、俺たちが付き合い始めてもうそれだけ経ったということで。

表面的には、俺たちの関係はあまり変わらない。
大学やバイト先のドニーズで、こいつが俺のところにやって来てはまとわりつく――いつもそんな感じだ。
一番変わったのは、こいつがこうして俺のマンションに出入りするようになったこと。
医学部に編入して前より忙しくなった俺をサポートしたい気満々で、掃除だの料理だのしようとする。
まあ、自分でやった方が時間もかからず、効率的ではあるんだけどな。
いずれにしても、俺たちは結構一緒にいる時間は多い。もちろん、同居している時ほどではないだろうが。
でも。
二人だけでいる時間は、同居していた時より格段に増えたと思う。
おまけに、一緒にいるのはこの狭いマンションの一室だ。
――だから。

俺は、自分では思いもよらなかった問題に直面している――


「ほら、起きろって。それから、これ片付けるぞ」

俺は、内心のざわつきを隠すように言うと、テーブルの隅に置かれた容器に手を伸ばす。小さなバケツのようなそれには、まだ少し中身が残っていた。

「あっ、ちょっと待って!まだ食べるから」

途端に身を起こし、俺を制止する琴子。

「お前……食べ物に釣られて起きてんじゃねーよ。つーか、いい加減それ、飽きねえの?」

琴子が手にしているのは、有名チェーンのフライドチキンの入った容器。白髭の老人の絵が描いてある。琴子が持ち込んだものだ。
以前はお袋に教わりながら作った料理をよく持ってきたものだが、最近は専らこれだった。試験が近いから、料理に時間をかけなくなったのはいいと思う。だが、毎日とはさすがにいかないものの、こうも頻繁だと食傷気味にもなる。

「え?あ、飽きないよ。あたしこれ好きだし。入江くん、まだ食べる?」

チキンを一つ取り出して、琴子が訊いてくる。

「……いや、いい」

「そう?じゃああたし食べよっと」

「お前、こんな夜にまだ食べるのかよ。そんなんばっか食べてると太るぞ」

さっきも散々食べていたくせに……俺は呆れて言った。
こう言えばやめるかと思ったのだが…琴子の返事は意外なものだった。

「いいんだもん、太って!」

「はあ?」

何だよそれ。俺はお前が太るのは正直嫌だぞ。そのままがいい。

「だって、まだあたし……」

そこまで口走った琴子は、急に口をつぐむと下を向いてしまった。

……何なんだ一体……

最近、琴子はよくこんな風になる。
何となく、俺に言いたいことがあるような、そんな様子を見せ………かと思うと、何も言わずに口を閉ざす。
俺にはよくわからない。

最近、いわゆるデートをしていないのが不満とか……?

でもそれは、試験が近い上にさっぱり何も覚えていないのでは仕方ないだろうし。自分でもわかっているだろう。
……他には……いや、思い付かない。

一体どうしたっていうんだよ。
こんな風になったのは、ごく最近の気がする。
付き合い始めた当初は、俺と一緒にいるだけで幸せいっぱいで、傍目にもそれがわかるほど浮かれていたというのに。

小さく息をついた俺は、ふと時計が目に入った。いつの間にこんな時間か。

俺は立ち上がると、コートに手を伸ばす。

「ほら、もうこんな時間だ。送ってくぞ」

俺は、琴子が部屋に来ると、あんまり遅くならないうちに帰すようにしている。今日はいつもより遅くなってるな。

二人でいると、あっというまに時間が過ぎる気がする。

「いや」

ぽつり、と琴子が言った。

――何?

俺は、思わず動きを止めてしまった。

今、嫌、って言ったのか?
俺は、耳を疑って琴子を見下ろす。
琴子は、俯いたままだった。顔は………よく見えない。

……が。

「……なんてね」

そう言って顔を上げた琴子は、いつもの琴子だった。ちょっと悪戯な顔。だが。
少しだけ、顔が赤い気がするのは、気のせいだろうか……?

「ったく。冗談言ってないで早く支度しろよ」

俺は、琴子のコートを放ってやると、自分のコートを着込む。
琴子の表情に、またしてもざわざわ騒ぎだした心を隠して。

「……うん。わかった。あ、これ、入江くん明日の朝にでも食べる?」

琴子は、テーブルの上のチキンを指差した。

「いや、俺はいい加減チキンは飽きたぞ。今度は他のにしようぜ」

そう。さっきも食べたし、お陰でちょっと胃が重くなっている。朝になんかとても食べられそうもない。

それに、本当は。
俺が、本当に食べたいのは。
俺が、本当に欲しいのは――……










「……入江くん?」

琴子の声に、俺ははっとして我に返った。
コートを着た琴子が、俺を不思議そうに見上げている。すでに帰り支度もできているようだ。

「いや。じゃ、行くぞ」

俺は頭を振り払い、玄関の方に向かう。琴子も後ろからついてきた。

「じゃあ、あたし、明日また来たら残ってるチキン食べていい?」

「お前、明日も食うのかよ。あんな脂っこいの、よく毎日食べれるな」

いつものように無邪気に話すあいつに、いつものように呆れて返事をする俺。


――俺は今、何を考えていた?
自分自身を叱咤する。

琴子を、送っていかなければならない。
親父さんだって、あんまり娘の帰りが遅ければ心配するだろう。それに、前に家までこいつを送っていった時のお袋の言葉。

『あーら、もう帰ってきたの?どうせなら泊まって来ちゃえばよかったのに』

あの時、琴子は真っ赤になり、俺は馬鹿なこと言うな、と怒鳴っていた。

ったく、お袋の奴……人の気も知らないで。
そんなこと言われて、次からその通りにできる奴がいるなら、お目にかかりたい。

お袋の考えてることなんかわかりすぎるくらいわかっている。
未だに、「大学卒業なんて待ってないで、もう結婚しちゃえばいいのに」なんて言ってくるくらいだ。
ったく、こうして人を振り回すのは相変わらずだな。
……いや。
一番俺を振り回しているのは。

「わあ、寒ーい」

マンションから外に出るとびゅうっと風が吹き付けてきた。
身体を縮こませていた琴子が、俺の腕にするりと自分の腕を絡ませてくる。ごく自然な動作で。
――柔らかい感触が、伝わってくる。

「お前、居眠りしてたけど、今日やったところは覚えてんのかよ」

心がひそかに波立つのを隠すように、俺は訊いた。

「えっ……うーんと、そ、そうね……」

「お前、人の時間を裂いといて、その返事か」

「う……ちょっと、範囲が広くって大変だから、ね」

無邪気に話す琴子。コートごしに伝わる、温かいぬくもり。

「ね、じゃねーよ、ったく」

言いながら、俺は、胸の奥底で密やかに灯っている火を消そうとする。
最近、琴子といると、不意に灯るこの炎。
ずっと前にも一度だけ、この胸に少しだけ灯ったことがあった。それは、もう1年近くも前になる、寒い夜。
あの日は、雪が降っていた――

そんなことを思い出しながら、俺は、琴子と共に歩を進めた。
片腕の重さに、甘い責苦を感じながら。


***

この炎に身を任せたら、一体俺はどうなるのだろう。
今、抑えつけても、じりじりと胸を焦がすような熱さを持って、俺の中に存在している。
そんな俺を、俺が知らない。
見慣れぬそんな自分の心に戸惑い、実のところ、持て余している。
身を任せてしまえば、どうなるかわからない。
ただ、そのことだけがわかっていた。

こんな俺を、琴子は知らない。
きっと、知らない。


***


試験が終わった。
琴子は、俺のかけてやったヤマが見事に当たったお陰で、ちゃんと単位が取れたらしい。これでまた春休みは目一杯遊べる~!と喜んでいる。全く……人を当てにしといて何を言ってるんだか。
俺の方も、遅れて編入した分、相当勉強したお陰で試験の結果は首席だった。
春休みは、これでバイト三昧だな。医者になるまで独力で生活する、と言ったからには、稼がねばならない。
俺はドニーズのバイトの他、家庭教師のバイトもまた始めることにした。

「絶対、女の子はダメだからね!男の子にしてね!」

琴子がうるさく言うので、教えるのは男子高校生だ。
そんなこんなで、忙しく過ごしているうちに、2月も半ばとなった。

「いいなあ、先生は。絶対モテるでしょ」

俺の生徒の啓介くんが、伸びをしながらそんなことを言う。高校1年生だ。

「そんなことないよ」

彼が解いた問題の採点をしながら俺は答える。

「いや、そんなはずないね!絶対モテるでしょ。はあ、いいよなあ」

「何だよ、そんなにモテたいわけ」

採点が終わった。彼はなかなか覚えがいい生徒だ。琴子に教えるより、よほどスムーズに進む。

「モテたいっていうか、彼女は欲しいなぁ」

「ふうん」

「先生にはさ、彼女いるんでしょ?」

「さあ」

「またまた~。絶対いるよ、美人でスタイルよくって頭もいいようなそんな彼女!」

「……どうかな」

まあ実際、その真逆だけどな。

……それでも。
俺には、大切な――かけがえのない存在で。
もしかしたら、あの夏の日から、ずっと会えなくなっていたかもしれない。失われていたかもしれない。
だからこそ、大切にしたい――そんな彼女。

「あ、それじゃあ、今日は早く帰った方がいいんじゃないの?先生」

啓介くんが、突然そんなことを言い出した。

「何で?」

「何でって……先生何言ってんの。今日、絶対彼女、先生を待ってるでしょ」

呆れたように啓介くんが言う。

「今日は、2月14日!何の日でしょう?」

――あ。
すっかり忘れていた。

あの日から、もう1年が経つのか……

あの大雪の降った日。
俺の中に、あの得体の知れない炎が灯った日。

今日は、バレンタインデーだった――。


☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

そんなわけで、続きます。
しかし、いつアップできるかどうか・・・できれば今日中に書きあげたかったのですが(泣)
自分の中に見え隠れする野獣の片鱗に戸惑う直樹さんをお楽しみいただければ幸いですww
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!

本当に中学生レベルですよね。というか、なんだか面倒なことを考えてしまっているみたいですこの直樹さん。
そしてイベントには疎いし。
さて、どんなバレンタインになるか…って、現実のバレンタインは終わってしまいましたね・・・(泣)
ごめんなさい!続きはもう少しお待ちください!

そしてお祝いのお言葉もありがとうございます。
あ、日付チェックしていたんですか!ありがとうございます。
甘いバレンタインのお話になるかどうか・・・
^m^
妄想の浮かぶまま、突き進もうと思います!

Re: たまち様
コメントありがとうございます!

レビューお疲れさまでした!またコメントしていただいて嬉しいです。

そして・・・十尺花火!\(^o^)/

ホントにこの1年、たまちさんのコメントに笑わされ、励まされてきました。
ありがとうございます!

直樹にしてみれば、遅い初恋ですから、こういう野獣の片鱗も、多分嫉妬心と同じくらい見慣れなくて得体の知れないものかな、と。
まあ、もう少し素直に生きれば楽なんでしょうけどね。なんだか面倒なことを考えてしまっているみたいです。
そうそう、だから自分の気持ちを抑えるのに精いっぱいなんですね。

はい、小悪魔琴子ちゃん登場♪
バレンタインデーでもきっと活躍してくれることでしょう。
続きはすみません!もう少しお待ちくださいね。
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

そうですね。原作の二人は本当に恋愛期間がなくて、特に琴子ちゃんはデートするだけで大騒ぎでしたね。
はい、琴子も実は一歩進みたいんです。でもそのことに直樹は気付いていない・・・
遅い初恋だからこそ、今回はちょっと不器用な直樹が書きたかったんです。
わあ、深い!大事にしすぎてダメになっちゃうってこと、ありますね。直樹がそれに気づけばいいのですが。
こんな恋がしたい!って思ってもらえるようなお話が書けたらいいんですけれども。頑張りますね。
Re: マロン様
コメントありがとうございます!

はい、なんだか妄想が浮かんで、新作始めちゃいました・・・

季節ものなのに、続きが更新できていなくてごめんなさい。もう少しお待ちくださいね。
Re: ジェニィ様
コメントありがとうございます!

感激って言っていただいて嬉しいです。もう何だか妄想が浮かんでしまって。
天才が悶々としているっていう図に、なんだか萌えてしまって書いてみました♪

どんなバレンタインになるのか・・・すみません、続きはもう少しお待ちくださいね!
Re: ののの様
コメント&お祝いのお言葉ありがとうございます!

なんだか妄想が浮かんで書いちゃいました。
5か月も手を出さない直樹さん・・・・・・どれだけ我慢強いのか(笑)。
そのくせ悶々として・・・いろいろ面倒なことを考えているみたいです。
ふふふ。バレンタインに・・・どうなるでしょう?
って、すみません!現実のバレンタインは過ぎているのですが、お話の続きはもう少しお待ちください!
ゆうようらぶまま様
拍手コメント&お祝いのお言葉ありがとうございます!

琴子は琴子で、直樹は直樹でいろんな思いがあって・・・お互いに気づいていないんですよね。
さて、どうなるのか・・・すみません、続きはもう少しお待ちください!

みい様
拍手コメントありがとうございます!

ツボすぎですか?嬉しいです。
続き、頑張って書きますね。すみません、もう少しお待ちください。
No title
入江君の、結婚を、許されて、恋人同士の、バージョンですね、それにしても?なんで琴子ちゃん、フライドチキンばっかり、食べてんでしょうね?v-343
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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