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眠り姫は待ちきれない ~エピローグ
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・・・・・・・・・・・・

長い大学の夏休みが終わり、今日からまた授業が再開する、という日。
まだ朝早い時間帯ではあるが、斗南大学にもちらほら学生の姿が戻ってきていた。
そんな中。
斗南大学の校門の前に、二人の人物の姿があった。
まだ残暑が厳しいにもかかわらず、二人とも長いコートを羽織っている。背が高く、ともすれば人目を引くであろうその二人に、振り返る者はいない。
しかもその二人、よく見ると地面に足がついていない。ふわふわと、わずかに宙に浮いている。

頭の上に、光輝くリング――
二人は天使だった。



「長かったな…」

「長かったですね…」

二人は、どちらからともなく呟いた。

「日数にしたら、5日かそこらだったんだけどな。何だか長かったよな」

二人の天使のうちの一人、黒いコートのトーマがそう呟く。

「そうですね」

もう一人、白いコートを着たモトコがそれに同意する。

「何しろ、初めからイレギュラーずくめだったからな」

「ですよね。生き霊になって、さらに天界の飴を食べちゃうなんて……ほんとありえないわ」

モトコが首をすくめた。

「挙げ句にポルターガイストを起こすなんて…まあこれは琴子ちゃんの愛ゆえのことだけど」

「ああ、あれね」

モトコはその場面を思い出し、溜め息をつく。

「あの子はほんとに、自分に自信がなかったから……まさか彼が自分に惹かれているなんて思いもしなかったのよね……」

「まあ、仕方ない。初めが『バカな女は嫌いだ』だったからな。あいつ、ホントに女の子の扱いひどかったよな」

「まあ、それはありますけど。それにしても、あの子は本当に鈍感だから。彼が好きすぎて、見えてないことばっかりだったし」

「まあ、それも仕方ないだろう。あんな厄介な奴を好きになってしまったんだからな」

大胆に肌を露出した女子大生が目の前を通り過ぎ、反射的に目で追うトーマ。モトコはごほん、と咳払いをした。

「まあ、厄介といえば厄介でしたね。自分の気持ちに彼が早く気づいていたら、もっと早く琴子は目を覚ましていたでしょうから」

「だよな。あいつがやっと琴子ちゃんの病室に来た時、さっさとキスしちゃえばこんなに苦労することはなかったのにな」

「そーですよねぇ」

「そのくせ、あの時、まあ見事にあの夏の記憶がこっちにまで流れてきたからな。よっぽど強い想いだったんだな」

天使の特技は、人の記憶を読み取ること。
あまりに鮮烈な記憶だと、読み取ろうとしなくても伝わってくることもある。

「あの清里の夏は、彼にとっても心に刻まれた思い出なんですね………」

「ま、奴としては一生、琴子ちゃんに言うつもりはないだろうけどな。寝てる時に誘惑に負けて、ついキスしちゃったなんて」

そこでぷっ、とトーマは吹き出した。

「ま、いかな天才といえども、わからないことはあるんだな。まあ、奴もまた、鈍感だってことか」

「まあ、確かにそうかも。あたしが一番はじめに彼を見た時、てっきり琴子は恋人なんだと思いましたよ」

モトコがその時のことを思い出しながら言う。

「そーいえば、君は琴子ちゃんの事故の現場に居合わせたんだったね」

「そうです。あの彼がもう何ていうか……ものすごい血相を変えてましたからね。倒れたあの子の顔を見つめて、『琴子っ琴子ーっ』って何回も必死に名前呼んで」

「へえ、あいつがねぇ」

想像がつかないな、とトーマが首を振った。

「あんな様子だったから、つい放っとけなくなっちゃったのよね……」

モトコがまたしても溜め息をつく。

「まあ、奴からしたら、元より琴子ちゃんは自分のもの、っていう執着があったようだがな。それが恋だとわからなかったとは……ふん、それで天才なんて言われていたって、お笑い草だな」

ふん、とトーマは鼻で笑った。


***


「琴子、断片的に魂だった頃の記憶が残っているみたいですね」

魂が元の身体に戻る時、天界にまつわる記憶の全てが消去される。それは、琴子も例外ではなかったはずだが。

「まあ、夢を見てたって思ってるみたいだな。僕のことは覚えていないようだけど……残念だな」

「せっかく、彼の本心を最後に伝えてあげたのに。それは忘れちゃうなんてねぇ」

「まあ、これからは、二人の関係を築いていくしかないよな。一応、婚約者ってことになるんだろ」

「そうなりますね」

「で、奴は独り暮らしを続けながら医学生か。あ、試験に受かればの話だけどな」

「彼なら間違いなく受かるでしょうけど」

「で、あのマンションで婚約者といちゃつくわけだ。かーっ、やだねぇむっつりは」

「ヘンな想像しないで下さいよ、全く……」

「ま、どちらにしても、賑やかな大学生活になることは間違いないな」

そう言うと、トーマはちょうど目の前を通り過ぎた人物を眺め、愉快そうに笑った。

「あら、あれは……」

モトコもまた、大学内に入っていくその人物を目で追っていた。

頭には大判のスカーフを巻き、目にはサングラス。本人は目立たないつもりのようだが、若い学生ばかりの中ではかなり異彩を放っている。そして目を引くのは、両腕に抱えた大量の紙。ビラのようである。大きなポスターのようなものも小脇に抱えている。

「ここの学生は、夏休み明け早々に大ニュースを耳にすることになるのね……」

ひらり、と風で1枚ビラが飛ばされた。そこに踊る“祝・婚約”の文字に、モトコは苦笑する。

「ま、退屈しないで何よりじゃないか。もう少ししたら、当事者二人も来るだろうから大騒ぎになるな」

「でしょうね」

「面白いことになりそうだな。こんなに賑やかなら、僕ももっと頻繁に下界に遊びに来ようかなあ」

「あなたは、もっとちゃんと仕事してくださいよ」

モトコの声は、ちょうど落ちたビラを拾った学生の叫び声に掻き消されたのだった。



(完)



☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

ようやく、完結しました。
後程、あとがきを書きたいと思います。

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Re: マロン様
コメントありがとうございます!

あのシーン、好きって言ってもらってよかったです!
いろいろ悩みながら書いたので。嬉しいです。

ふふふ、天使のお二人はまた出してしまいました。もともと、この二人(というかガッキーとモトちゃん)に結婚前のイリコトについて突っ込んでみたら面白いな、と思って出したので。

紀子ママさんは、きっと夏休みが終わるのを今か今かと待っていたんだと思います(笑)。相変わらずですね。

次回作も頑張ります!ありがとうございます。
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

めでたしめでたし、までやっとたどり着いて、私もホッとしています。
このお話では、結婚までだいぶ時間があるので、恋愛期間を楽しめますね。
ガッキーとモトちゃんは琴子のパワーに振り回されていた感はありますが、きっと彼らも琴子が戻って一安心していることでしょう。

時間はかかりましたが、直樹もようやく殻を破ったからには、琴子を大切に恋愛期間を送ってほしいですね。
Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!

オチが見事、とのこと、ありがとうございます。最後はやっぱりこれでしょう(笑)。

エピローグ、意外でしたか?そう言ってもらえると書き手としては嬉しいですね。


さてさて、後日談、ですね!
実はもう、妄想が浮かんではいます。
そして、ねーさん様はやっぱり目につけどころが・・・・・・!
まさにその点です。私の中では実はその答えが出てたりします。
^m^
No title
またまた!紀子ママの登場ですかね?噂流され放題ですね。そして、また❓意地悪なやつが出るんじゃない、二人頑張れ。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

はい、紀子ママ登場しちゃいました♪
あの二人のこととなれば、本当に凄いエネルギーを発揮します(笑)。休み明け早々、二人の周りは大騒ぎだったでしょうね。
^m^
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あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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