スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
眠り姫は待ちきれない 18
前回コメントいただいた方、ありがとうございます。
少しずつ返信していきますね。

お話はもう少し続きます。現在、スピードアップして書いております。

完全なる私の妄想話、お付き合いいただければ幸いです。

... Read more ▼

・・・・・・・・・・・・

「ほら、行くぞ」

病室で髪を直していたあたしに、入江くんが後ろから声をかけた。

「あ、うん。今行くね」

あたしは鏡から視線を外すと、後ろを振り返った。自然に笑顔が浮かんじゃう。

だって、そこに入江くんがいるから。
入江くんが、あたしの荷物を持って、待っててくれてるから。

「何にやけてんだよ。もう行くぞ」

「あ、待ってよ」

業を煮やしたように病室から出ていく入江くんに、あたしはあわてて後を追った。

「ねぇ、今日おばさんは?」

「お前が帰ってくるっていうんで、いろいろ忙しいんだと。今頃家中大騒ぎだぜ」

そうなんだ……
まあでも、あたしは入江くんと二人で帰れるなんて、すっごくすっごく幸せだけど。

そう。今日はあたしの退院日。
目が覚めても、さすがに5日間も意識不明だったから、すぐには退院できなくて今日になった。
今はすっかり元気で、どこにも異常はないけど、もしかしたらずっと意識が戻らないかもしれないと言われていたそうで。
もっと設備の整った病院に転院することも考え始めていた矢先、あたしは突然意識を回復した。

それも……入江くんのキスによって!
キスで目覚めるなんて、ほんと、あの童話の主人公みたい。
ああ、あの時のことを思い出すと、何だかうっとりしちゃう……

「いい加減にやけるのやめろ。気持ち悪い」

……まあ、入江くんは相変わらずこんな調子だったりするんだけど。
でも、こうしてあたしを迎えに来てくれるんだもん。今までからしたら、ホントに嘘みたいだよね。

『お兄ちゃんはねー、琴子ちゃんが心配で、再検査をお願いしたり、もっといい病院があるって探してきたりしたのよー』

おばさんがこっそり、そんなことを教えてくれた。

『ふふっ、やっぱり愛よね!琴子ちゃんがもう目を覚まさないかもしれないって言われて、いてもたってもいられなくなったのよ。まあ、やっと自分の気持ちに気づいたのね』

そ、そうなのかな……
事故に遭って、5日も意識が戻らなくて、目が覚めたら入江くんがキスしてくれたなんて。幸せなんだけど、どこか信じられない気持ちも最初は強かった。

だけど。
入江くんは、その後もずっとついていてくれて。
おばさんに冷やかされるように何か言われても、今までなら鬱陶しいとかうるさいとか言い返していたのに、そんなこともなくて。

これって……あたし達って、どういう関係になったんだろう。
キスをしてくれて、抱き締めてくれて。
だから、今までと同じ関係ってことはない、よね……
えっと……もしかして、か、か、彼女ってことに、なる……の、かな……
う、うわ~!何だかそれって全然信じられない!

「そういえばお前、何か思い出したか?」

病院の正面玄関を抜けて外に出たところで、入江くんがあたしを振り返って訊いた。

「えっ?……あ、夢の話?うん、何となく思い出してきたよ。あのね、入江くんの夢をたくさん見てた!」

ちょうどいろいろ考えてて顔が火照っていたあたしはあわてて答える。
5日間も意識不明だった間、あたしは夢を見ていたようだった。
目が覚めた時、あたしはふわふわ宙に浮いてる夢をみていたみたいで、起きてすぐの時なんて、まだその感覚が残っていたくらいで。それを入江くんに言ったら興味を持ったみたいで、他に思い出すことがあったら教えてって言われてたんだ。

「俺の夢?どんな?」

「あのね、ドニーズでバイトしてるとこ。後は、裕樹くんと話してるとこも見たし、図書館にいるとこも」

そう。思い出してみると、結構たくさん入江くんが夢に出てきたんだ。
あたし、意識が戻らない間もやっぱり入江くんに会いたかったんだね。

「全く……何を見てたやら」

「え?」

「いや、何でも」

入江くんは、そのまま歩いていってしまう。あたしは急いで後を追った。

病院の正門までもう少し、というところまで来た時だった。

「こ、琴子ぉ」

何だかくぐもった声が聞こえた。
あれ、この声って……

「金ちゃん!」

ちょうど門のところに、金ちゃんが立っていた。

「ほ、ほんまに目が覚めたんやな。ああ、よかったなあ」

金ちゃんが目を潤ませながら、こちらに駆け寄ってきた。

「意識が戻ったとは聞いたんやけど…検査があるとかで会わせてもらえんでなあ……ほんまによかったわ」
「そうだったの?ごめんね。それに、あたしが意識がない間、毎日病室に来てくれてたんだってね。お父さんから聞いたよ。ありがとう」

あたしは立ち止まってお礼を言った。

「何言うてんねん!そんなの当たり前やろが。琴子の一大事とあらば、わしは地の果てにだって駆けつけたるでぇ」

金ちゃんはぐしっと涙を拭うとそう言って笑った。

「そーいえば金ちゃん、あたしが目を覚ました時、何か病院で手当てを受けてたって聞いたけど、もう大丈夫なの?」

そう。お父さんとおばさんが先生と転院のことで相談していた時に、金ちゃんが病室にいてくれてたんだけど、戻ってきたらいなくて病院で介抱されてたって……

「え?あ、ああ……あれは大したことあらへん。って、何笑っとんのや!」

あたしの隣の入江くんが何故かぷっと吹き出して、金ちゃんが目を吊り上げた。

「…いや。吹き飛ばした張本人にそんな心配されてもな、って思って」

「はあ?」

「いや、こっちの話。琴子、行くぞ」

「えっ…あ、入江くん」

入江くんがさっさと歩き出してしまい、あたしはあわてて声をかける。

「ちょっと待てや、入江!」

金ちゃんが急に血相を変えて入江くんを呼び止めた。

「何」

入江くんが立ち止まって振り返る。ちょっと面倒くさそうな顔。

「お前何で今、琴子と一緒におんねん!それに、あの時、お前何したんや!」

「あの時って?」

「わしが気ぃ失った時や!お前、何かしたんやろ。常人には想像もつかんことをしたに決まっとる」

金ちゃんは入江くんを睨み付けて言った。
な、何……?
金ちゃん、気を失ってたの?その時に何かあったの……?

「俺は何もしていない」

入江くんは表情を変えずにそう言った。

「嘘言うな!他に誰もいなかったしな。お前しか考えられへん」

「本当に、俺は何もしていないぜ」

もう一度、入江くんは同じ台詞を繰り返した。今度はどこかおかしそうに。

「そんなわけないやろ!何もせんで、人一人気絶するかいな!」

「ま、あんな振られ方もないよな」

「は?何やて?」

「とにかく、これだけは言っとく」

入江くんは表情を変えると、いきなりあたしの肩を抱いた。そして、金ちゃんを見据える。

「こいつには、もう充分過ぎるくらい、想って…守ってもらったからな」

え――?
あたしは思わず入江くんの顔を見上げた。
真っ直ぐな……真剣な表情。

「これからは、俺がこいつを守る。だから、琴子は渡さない」

入江くん――?
あたしは信じられない気持ちで入江くんを見つめた。
入江くんが、そんなことを言うなんて――

「な、何を、そんないきなり……っ」

「お前は、何も好き好んで2回も振られることないだろ。いい加減、琴子のことはあきらめな」

「なっ……お前、何言って……」

「金ちゃん!」

あたしは何か言いかけた金ちゃんを遮って言った。

「ごめん。ごめんね。あたし、入江くんが、好きだから――これからもずっと、入江くんだけが好きだから、だから……」

「さ、行くぞ」

入江くんがあたしの手を取った。そのまま引っ張って歩き出す。
呆然と立ち尽くしてる金ちゃん。
その姿が、どんどん小さくなっていく。

「い、入江くん……入江くん!ちょっ……待って、速いよ」

金ちゃんが完全に見えなくなった頃、あたしはさすがに息が上がっていた。

「…あ、悪い」

入江くんがようやく立ち止まってくれる。

「あ、あの……さっきのって……」

あたしは息を整えながら、入江くんを見上げ……動けなくなった。
そこには、はっとするほど優しい瞳があって、あたしを見下ろしていたから。

「聞こえなかったか?」

息をつくように、あたしに告げる言葉。
あたしは急いで首を振った。

「だから、お前はもう二度と、フラフラどっか行ったりするなよ」

え……
フラフラって……

「お前はフラフラしてないで、ここにいろ」

「ここ……?」

ここって……?

訳がわからなくて入江くんを見上げたら。

「……そ。ほら」

入江くんが、あたしに手を差し出す。

入江くん――

あたしがおずおずと手を出すと、ぎゅっと握られた。

「さ、帰るぞ」

「うん……うん!」

その手の力強さが、温かさが嬉しくて。
あたしはその時、実感したのだった。
あたしの居場所が、ここに――入江くんの隣にあることを。


***


「琴子ちゃん、お帰りなさい!!」

玄関の扉が開くと、おばさんの明るい笑顔が目に飛び込んできた。後ろには裕樹くんとおじさんもいて、出迎えてくれている。

「疲れたでしょう?はい、中に入って」

おばさんが家の中に招き入れてくれる。

「…おじさんは?」

あたしの後ろに続いて入ってきた入江くんがおばさんに訊いた。

「今、キッチンにいらっしゃるわ。今日くらいはご自分が作るって仰って」

……そうなんだ。
お父さん、きっとあたしのためにお料理してくれてるんだ。あたしは真っ先にキッチンに向かった。

「お父さん、ただいま!」

キッチンを覗き、あたしはお父さんに呼び掛ける。

「おう、帰ったか。……お帰り」

お父さんも笑顔で答えてくれる。

「わあ、いい匂い~」

「今日くらいは、俺が作らしてもらったんだ。奥さんにも散々面倒をかけてしまったしなあ」

あたしとお父さんが話していると。

「……おじさん」

あたしの後ろに、入江くんが立っていた。

「ああ、直樹くん。今日は迎えに行ってもらってすまなかったね。ちょうどできたところで――」

「……いえ。あの、おじさんにお話があるんですが」

「話?俺にかい?」

「はい。今、いいですか?」

「あ、ああ」

ちょっと戸惑ったように答えるお父さん。
入江くん……どうしたんだろう。
お父さんに話って……
あたしは気になって、入江くんの後についてリビングに向かった。

「わ、すごーい」

リビングは、全体がリボンで飾られていた。壁には“祝・退院”と書かれた横断幕がかかっている。

「琴子ちゃんが退院したんですもの、このくらい当たり前よ!」

「全く、手伝わされて大変だったんだぞ!何で僕が馬鹿琴子のために……」

にこにこしているおばさんの後ろで、裕樹くんがぼやいてる。

「お待たせ。直樹くん、話って…」

キッチンからお父さんがやって来た。

「はい」

入江くんは、お父さんがソファに座るのを待って、口を開いた。

「――お嬢さんと…琴子さんと、結婚させてください」


――え。


入江くん、今、何て――?

あたしの思考回路は、完全に止まっていた――



☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

ラストスパート、頑張ります!
スポンサーサイト
Secret
(非公開コメント受付中)

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

はい、こちらのお話でも琴子ちゃんの了承を得ることはすっ飛ばしてます。(笑)
そうそう、ここまで来ると、入江くんはもう前進あるのみ!ですね。それは原作でもそうでしたよね。

殻を破った琴子ちゃんと、琴子ちゃんがエネルギー源の入江くん。
この二人のそういう関係が私は大好きで、結構二次創作のもとになっている気がします。

Re: たまち様
コメントありがとうございます!

そうですね。この直樹は、ちょっと普通の男の子に近いかもしれません。
後は、金ちゃんが琴子のそばに寄らないようにさりげなくガードしていたっていう裏事情もあったりしたのですが(笑)。

はい、琴子が魂だったころの記憶をなくしてしまったので、琴子が目覚めない間どういう状態だったのかを知るのは直樹だけになりました。確かに自分だけが知っている、という優越感みたいなのはあるでしょうね。

直樹が紀子似!
そうかも!
けむたく思っている親に実は似ているって、よくあるパターンかもしれません(笑)。

そして今回はお嬢の件はありませんでした。ここで彼女を出すと大変なことになりそう・・・
Re: マロン様
はじめまして。コメントありがとうございます!

私も他の素敵サイト様の作品を読ませていただいていて、初めてコメントした時はけっこう自分の中で思い切ったっていう記憶があります。書いていただいて、すごく嬉しいです。

はい、この直樹もなかなか自覚してくれなくて大変でした。
でもその分、琴子一筋になるのかなと思います。

Re: ゆうようらぶまま様
はじめまして。コメントありがとうございます!

ストレス解消や癒しになっているとのこと、とっても嬉しいです♪
このお話も、こんな荒唐無稽なお話を受け入れてもらえるかな…と当初は思っていたのですが、
そう言っていただけると凄くほっとしますし、励みになります!

「3回目」は、やっぱりここで使わなきゃ!と使ってみました。大好きって言っていただいてよかったです。

温かいお言葉ありがとうございました。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
普通は、お母さんだけど?琴子ちゃんはお父さんだよね、真っ先に、お父さんのいる、キッチンに飛び込んで、ただ今のあいさつしていましたね、それだけ❓乙津さんとの信頼関係があるんですね?入江君の、プロポーズともいえる発言、金ちゃんに、琴子は、渡さないて、行ってくれましたね、琴子にも、もう❓ふらふらしないでそばにいろって、そして、帰ったら、入江君は、琴子ちゃんの、お父さんに結婚の申し込みましたね?どうなるかな?大丈夫と、思いますが?どうなるかな?
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

琴子と重雄さんの絆はずっと二人、父一人娘一人で生きてきた分とても強いと思います。
そして、直樹さんには、琴子には少しくらいちゃんとした言葉で気持ちを伝えてほしいということもあって、こんな言葉を言わせてみました。
そのうえで、出た、結婚のふた文字!やっぱり直樹さんは琴子に対して相当の所有欲を持っていると思います。(笑)
No title
琴子ちゃんの、思いつたわりましたね?ないかていうか?本当は、入江君琴子ちゃんのことが、最初からすきだったんじゃないかと?私独断ですが、入江君素直じゃないし、ね。色付きの文字打ち消しの文
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

このお話の琴子ちゃんはまだ知りませんが、清里で直樹は琴子にキスしていますよね。
本人は自分の気持ちをよくわかっていないながらも、少なくともその頃から琴子に深く囚われていたんだと思います。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。