スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
眠り姫は待ちきれない 17
... Read more ▼
う、嘘でしょう……?

入江くんが、あたしを見てるなんて。
今まで、ずっとそんなことなかったのに。
まさか、あたしが見えてるなんて――。
いや、ホントに見えてるのかな……
あたしの後ろの金ちゃんを見てるとか……
そんな考えが浮かんで、あたしは後ろを振り返ってみる。

「どうしたんだよ」

途端に声がした。あたしはあわてて前に向き直る。
さっきは見開かれていた入江くんの形のいい瞳が、笑みを作っていた。
それは、いつになく柔らかい笑みで……。

――ああ。
確かに入江くんの瞳は、あたしを真っ直ぐに見つめている。
あたしはただその瞳を見つめ返すしかできなかった。
「お前……」

入江くんが笑みを浮かべたまま、口を開いた。

「何でそんなとこに浮いてるんだよ」

え……
な、何で、って言われても。
いや、そうじゃなくて。

「あ、あの……入江くん、あ、あたしが、見える、の……?」

あたしは恐る恐るそう声を投げかける。
だってだって、嘘みたいで。
信じられなくて。
ゆ、夢じゃないかしら、これ……
あ、でも、魂になっちゃっても、夢って見るのかな……
あれ、魂って寝ないんだよね……じゃあ夢なんて見るはずないじゃない!
ああもう、頭が混乱して……
とにかく、もう、信じられない。

だけど。
そんなあたしを余所に、入江くんは笑ったまま言った。

「ああ。見えてる。でかい目を開いて、こっち見てる間抜けな顔が」

「ま、間抜けって……」

もう、そんな風に言わなくたっていいじゃない!
こっちはびっくりしちゃって……ホントに、もう、何が何だか……

「で、いつまでそこに浮いてんだよ」

入江くんが、あたしを見上げて言った。

「ほら、こっち来てみろよ」

入江くんが病室のドアを開け、あたしを手招きしている。

「あ……、で、でも、金ちゃんが」

こんな廊下で倒れたままになってる。

「気を失ってるだけだろ。ここは病院だし、そのうち誰かが見つけて何とかしてくれるよ」

「え…でも……」

あたしが気絶させちゃったのに放っとくなんて。
あたしが躊躇っていると、入江くんはちょっとイラッとした目であたしを見た。

「ほら、いいから来い!」

「はっ、はいっ」

あたしはその言葉に吸い寄せられるように、ふらふらと入江くんに近づき、そのまま入江くんの後について病室の中に入った。

――ガチャ。

入江くんはドアが閉めると、病室の中央に置かれたベッドに歩み寄った。
そこには、あたしの〈身体〉が横たわっている。

「…ったく……」

溜め息混じりの声とともに、入江くんがあたしを振り返った。

「お前には、散々驚かされてきたけど……今回のは最悪だな」

う…最悪……最悪って……

「いきなり目の前で事故に遭って。何日も意識は戻らないし」

う……そ、そうよね。
そう言われると、言葉もアリマセン…

「ったく……お前、オバケ関係はダメだって言ってなかったか?自分がそんなんなってどーすんだよ」

え……
あ、ああ、そうよね。
そうなんだけど。

「う、うん……入江くん、あの……怖く、ないの……?」

あたしは今さらだけど、入江くんに訊いてみる。
だって、確かにあたし今、端から見たらオバケみたいなもんだもんね。宙に浮いてるし。
でも、入江くんは笑みを深くして言った。

「ばーか。お前が怖いわけないだろ」

そ、そうなんだ……
まあ、入江くんに怖がられたらショックだもんね。とりあえずよかったのかも。

「で、どういう訳でこんなことになってるんだよ」

入江くんは一度ベッドの方を向いてあたしの〈身体〉を見ると、次にあたしの方を見た。

「あ、あの……信じてもらえないかもしれないけど、その」

「信じるも何も。今、こうやって目の前に動いてるけどオバケなお前と、さっぱり目を覚まさないお前がいるんだから。不本意ながら、それを受け入れるしかないだろう」

「う、うん……」

「あの事故が原因でそうなったんだろ?」

「そ、そう。あたし……魂のあたしが、死んだわけでもないのに身体を飛び出しちゃって」

えっと…その後はどういう風に説明すればいいやら……
話を整理しようと頭を働かせてるあたしに、入江くんが言った。

「でも、これで納得した」
「え?」

「お前さ、今までも俺のこと呼んでただろ」

「えっ。って、き、聞こえてたの!?」

もしかしてそうかもって、感じたことはあったけど。でもでも、そんなわけないって思ってた。

「聞こえてたよ」

入江くんがまた溜め息混じりに言った。

「もしかして、あれもお前の仕業か?ドニーズの店内で起こった風」

「え…う、うん。そう……みたい……」

自分ではそんなつもりなかったんだけど……

「ったく……店内荒らしやがって」

「う……ご、ごめんなさい…」

あたしは思わず小さくなって俯いてしまう。

でも、まさかあの時のことがあたしのせいだってわかったなんて。
今日はあたし、入江くんにびっくりさせられてばっかりいる。

「あの時も、聞こえたからな。お前の声」

え。
そうなの?
あたしは顔を上げて入江くんを見上げた。

「初めは、気のせいだと思った。そして、そのうち、俺が聞きたいだけなのかって思った」

え……?
入江くんが、聞きたいって……あたしの声を?
そんな風に思ってたの?

何だか頭がうまく働かない。

すると、入江くんがベッドのそばから歩き出した。
一歩。一歩。
入江くんがゆっくりこっちに歩いてくる。近づいてくる。
あたしはドキドキしながら、それを見ていた。

「ったく……お前は」

苦笑する入江くん。
その顔は、もしかしたらあたしが一番好きな顔かも知れない。
あたしはそんな入江くんから、見入られたように目が離せなかった。

「俺の人生変えるばかりか、こんな、常識引っくり返すようなことしやがって」
その表情のまま、そんなことを言う入江くん。

え――……?

何言ってるの?
人生変えるって……あたしが?

「……だから、責任取れよな」

「え……あの……」

どういうこと?
聞き返そうとしたあたしは、でも言葉を続けられなかった。
目の前に入江くんの顔が近づいてくる。
そして、その顔が傾けられて――
目が閉じられた入江くんの顔を、あたしは超至近距離で見ていた。

こ、これって。

入江くんが、あたしに、キスしてる――!

そう気づいた瞬間。

「…………!」

あたしの身体が、光におおわれた。
その眩しさに思わず目を閉じる。
何?何?何なの?
でも、眩しくて目が開けられない。

そして、…………あれ………?

急に、何だか頭がぼうっとしてきた。
だんだんと、気が遠くなってくる。
どうしたんだろ……


――そんな中。

「ったく……お前は……」
そんな声が聞こえてきた。

「散々心配かけて……もう二度と目を覚まさないかもしれないなんて……」

低い、でもよく通る声。

「俺は、そんなの許さない」

その声が、そう告げた。
きっぱりとした口調で。

「お前が俺から離れるなんて、そんなことは許さない」

言い切るその言葉に、その言葉の強さに、あたしは動けなくなってしまう。思考すらも、囚われたように。

「……俺は今、すごくお前に触れたい」

え…
触れたいって……

「やっと、本物のお前に会えたから。……だから、早く戻れよ」

この声は。

「……だから、戻ってこい。――琴子」

入江くん――!



「全く、しょーがないわねぇ」

今度は耳元で、そんな声が聞こえた。

「ホントに、最初から最後までイレギュラーなんだから……こっちは振り回されっぱなしだったわ」

え……?
あれ、これって……誰の声だっけ……?
聞き覚えはあるのに、思い出せない。

「まあ、でも」

また別の声が聞こえた。今度は男の人の声。

「奴に姿が見えるようになるほど……そして奴に本当の気持ちを気づかせるほど、君の想いは強いんだな。その強さに免じて、そのまま元に戻してあげるよ」

え……
何?それ……
どーゆーこと……?

「眠り姫は、王子のキスで目を覚ますものだからね。病院のベッドの上よりも、王子の腕の中の方がいいだろう?」

「だ・か・ら!もう、当分の間はこっちに来ちゃダメよ!わかったわね?」

何だろう…この人たち……

「ほら、聞こえたでしょう?彼の声」

「最後に、奴の本心を伝えたよ。こうでもしないと、あいつはホント、素直じゃないから」

「さあ、もう戻りなさい。戻れるはずよ。元の身体に」

戻る……?
身体に……?

「彼が呼んでるわ。ほら、早く」

彼……?
彼…って、入江くん……?
あ。
そうだ。
入江くんが、呼んでる……あたしを。
早く、行かなきゃ。

行かなきゃ。

はやる気持ちが、あたしの中で膨らんでくる。

会いたい。会いたい。
入江くんに。


早く――!!

そんな想いが膨らんで、押さえきれない。

そして――


さらに意識が遠くなる。

――……ああ……

もう、何も考えられない……

そして、あたしは、何もわからなくなった――


***


あれ……?
何だろう。

あたし、どうしたのかな…
ああ、身体が動かない。
手も足も、何だかすごく重い。おまけにまぶたも重い。
おかしいなあ。
さっきまで、あたし、空を飛んでたのに。ふわふわ宙を浮いて、すっごく身軽だったのに。

あれ、でも…
空なんて飛べるわけないよね……
何言ってんだろ、あたし、
ああ。そうか。
夢を見てたんだ、あたし。
入江くんにすっごくキスしてほしくって……
そうしたら、本当に入江くんはあたしにキスをしてくれて……
ああ。幸せな夢だったなあ……

何だか起きたくなくなっちゃうくらい、幸せな夢で……

あれ、でも。
この感触は何?
あたしは今、目を閉じていて。
身体が、何だか温かいものに包まれているみたい。
温かくて、がっしりしていて、何だかすごく安心する。

それから……唇に、柔らかい感触。
これは、何……?
ああ。でも、前にもこんな感触を味わったような気がする。
あれは、いつだったっけ……?

あたしはそっと、目を開けてみる。

え……?
誰かの顔が見える。
何か、すごく近い……
目を閉じた、この顔、は……

えっ!?

嘘。
この顔、って。
入江くん――!?
この近さって、何!?
それに、唇に感じるこの感触。
ま、まさか。

入江くんが、あたしに、キ、キスしてるってこと!?

な…な…

何でーっ!?

何がどーしてこんなことに!?
目が覚めたら、入江くんがあたしにキスしてたなんて。

嘘ーっ!!



あたしが硬直していると。目の前にある、入江くんの目がほんの少しだけ開いた。
そして、視線がぶつかった。と思ったら。

「琴子……!」

入江くんの唇が離れ、あたしを呼び。
あたしは次の瞬間、入江くんの腕の中にいた。

ぎゅうっと腕に力が込められ、あたしは身動きできないほど、入江くんに抱き締められていた。

え、ええーっ!?

「い、い、入江くん!?」

「お前、戻ったんだな」

耳元で入江くんの声がする。
ほっとしたような、そんな声が。

え、でも、戻った…って、何……?

あたしは訳がわからないまま、入江くんの腕に包まれていた。
よくわからないけど、こうしていると何だかすごく安心する。
――あ。

「2回目……」

「何?」

あたしの漏らした呟きに、入江くんが聞き返した。

「……キスしたの」

そう。ぼうっとした頭の中で浮かんだのは、そんなことだった。
入江くんが、そんなあたしの顔を覗き込んでくる。
わ……ち、近い。あたしは入江くんの視線に顔が火照るのを感じる。

「3回目だろ」

「え……でも」

あの卒業式の日と、今ので2回目じゃ……
だけど。

「まあでも」

入江くんはくすっと笑って言った。

「今回はちゃんと目を覚ましたけどな」

「え……」

「もう数えなくていいよ」

そう言うと、入江くんはまたあたしにキスをした。



☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

そんなわけで、うちの琴子ちゃんは目を覚ましました!

(*^_^*)
スポンサーサイト
Secret
(非公開コメント受付中)

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
No title
わー!ロマンチック❓幸勇のを!ファンタススッティクていうのかな?入江君琴子ちゃんが戻れて、よかったね、琴子ちゃん、入江君のところに、戻れて、よっかたね。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: ねーさん様
ありがとうございます!!

やっとここまで来ましたよ。
そう、眠っていたのは琴子ちゃんだけじゃなくて、入江くんの心だったんですね。
「3回目」は、やっぱり使いたかったので入れちゃいました。

さてさて、これからどうなるか・・・(笑)。
二次創作の「IF」を楽しんで今書いています!
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

書き手冥利につきるお言葉、嬉しいです!
一途な琴子ちゃんの気持ちが入江くんに届いたようです。

確かに!入江くんにはもっと早く何とかしろ!って感じでしたね。
こうなると、入江くんはもう迷わないタイプなのかな、と思います。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

ロマンティックって言っていただいて凄く嬉しかったです。
長くかかった分、琴子ちゃんには素敵な目覚めになってほしかったので。
入江くんもようやく琴子ちゃんに会えました。考えてみたら、このお話で初めて、この二人の会話を書きましたよ。
Re: ののの様
コメントありがとうございます!

はい、こちらは目覚めました!
わぁ、タイミングつながってますね。すごい!

このお話では、ここまで来たからにはかっこいい入江くんでいてほしいな、と思っています。
ロマンティックな目覚めって言っていただいて嬉しかったです♪

やっぱり機能的にはスマホですよね・・・確かに壊れやすそうに見えますね。
私、よく携帯落とすので(おい)、すぐ壊してしまいそう・・・

わーーー。お話の好みも同じとは!私も語らしたら止まらないですよ(笑)。
だから、似た設定のお話を思いついたのかもしれませんね。

(*^_^*)
鈍感ですね?
本当に、鈍感?話の流れで?入江君が、琴子に対して、どゆう気持ちを持っていたか?わかるはずでしょ?確かに、入江君は、愛情表現が、わかりにくいけど、本当は、琴子ちゃんに対して入江君が同、思っているか、多摩市だけになって、見ているはずなのに、わからないんだから、どれだけ鈍いのて感じですよね?天然すぎま。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

返信が遅くなってしまってごめんなさい。
琴子ちゃん、本当に直樹さんの気持ちはわからないようです・・・
そこは、やっぱり天然ということもあるけれど、あんな完璧な人が自分をまさか思っているなんて思えないんだと思います。
最初の出会いはラブレター要らない、でしたしね。
その印象が強烈だった分、その鈍さはもう治らないんではないでしょうか。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。