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眠り姫は待ちきれない 11
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・・・・・・・・・・


「あら、お兄ちゃん。出掛けるの?」

朝。
玄関で靴を履いている入江くんの背中に、おばさんが声をかけた。

「こんなに早くどこへ行くの?朝ごはんは?」

「…いい」

「あ、ちょっとお兄ちゃん!今日は琴子ちゃんの病院に行けって言ったでしょ!あたしも後で行くし…って、もうっ、聞いてるの!?」

入江くんはおばさんに答えることなく、さっさと玄関のドアを開けて家を出た。

「どこに行くのかしらね?彼」

するりと玄関のドアを通り抜け、モトコさんが言う。

「……わからない」

あたしも入江くんの後ろ姿を目で追いながら首を傾げた。

「んー?また図書館とかじゃないのかー?でも、まだ時間早いよな」

トーマさんが頭をかきながら言った。
そう、まだ図書館も開いてない時間だ。
バイトに行くにはそれこそまだだいぶ早い時間だし。

「とにかく追ってみましょ」

あたし達も入江家を飛び出し、入江くんを追いかける。
かなり足早に歩いてく入江くん。向かっているのは駅の方向。通勤中の人達をどんどん追い越していく。
そんなに急いでどこへ行くんだろう…


昨日の夜。
夢から覚めた入江くんは、落ち着いた後も身を起こしたまましばらく何か考えているみたいだった。
それからまたベッドに横になったけど、何度も寝返りをして、結局眠れないようで。

入江くんが眠らなければ、夢に入ることはできない。あたし達はあれから結局何もできずに朝を迎えたのだった。

なかなかうまくいかないって、モトコさんは焦っているみたいだったけど、あたしは何だか嬉しかった。

『琴子!!』

――夢の中であたしの名前を叫んだ入江くんの声がまだ耳に残ってる。
入江くん、あたしを助けてくれようとしたよね?
夢の中のことだってわかっているけど、あたし、嬉しかったよ。ありがとう。
入江くんの背中をみつめながら、そう念じる。
こんな気持ちだけでも、伝えたい。伝えられたらいいのに。
でも、入江くんはあたしの視線に気づくことなく、歩を進めていく。

やがて辿り着いた駅。改札を抜け、入江くんはちょうど来ていた電車に飛び乗った。
あたし達も慌てて閉まったドアを通り抜けて乗り込む。
入江くんは、空いている席にも座らず、電車のドアに体を寄せて外を眺めていた。
そして、いくつかの駅が過ぎて、入江くんが降りたのは。

「ちょっと、琴子」

駅を出た入江くんが歩き出した方向を見て、モトコさんがあたしの背中を叩く。
入江くんが向かう先にある建物。
それは、あたしが入院している病院――。

「琴子!彼、来てくれたわよ」

「う…うん」

病院の正面の入口から中に入っていく入江くんを、あたしは信じられない気持ちで見ていた。

え…えっと。
入江くん、あたしのとこに来たんだよね?どっか具合が悪くてこの病院に来たんじゃないよね?

「そんなわけないじゃない!ほら、行きましょ!」

モトコさんがあたしを引っ張って病院の方に連れていく。

入江くんはエレベーターで上に上がり、3階で降りていた。迷いのない足取りで廊下を歩いていく。
そうして、立ち止まったのは、やっぱりあたしのいる病室の前だった。

「………」

入江くんは、ドアを見つめて少しの間、立ち尽くしていた。
それから。

――コンコン。

入江くんは静かにドアをノックした。
返事はない。
誰もいないのかな?おばさんは家に帰ってるし。お父さんは…昨日仕事だったのかもしれないし。
入江くんはもう一度ノックしたけど、やっぱり返事はない。少しの間待っていた入江くんは、静かにドアを開けた。
中に入った入江くんの後を追って、あたしも閉じられたドアを通り抜ける。
個室用なんだろう、小さな病室の中には、寝ているあたしの他は誰もいなかった。
あたし――あたしの身体は、あの時と変わらずにベッドの上に横たわっている。
何だか変な感じ。自分が寝てるのを上から眺めてるのって。
何だか、あれが自分だっていうことが信じられないっていうか、自分だって思えないっていうか。
入江くんはあたしの〈身体〉にそっと歩み寄っていく。そして、あたしの枕元すぐそばまで来た。
あたしは急いでベッドの反対側へと移動する。

「お前…」

入江くんの低い声が聞こえた。

「いつまで寝てんだよ。いい加減、目ぇ覚ませ」


え…
あたしは思わず息を飲んだ。
入江くんが腕を伸ばして、あたしの〈身体〉の顔にそっと触れたから。
頬を撫でるように、手を滑らせて。
入江くんは、少し体を折り曲げ、寝ているあたしの顔をじっとみつめている。
あたしはその様子から目が離せなかった。

息が詰まる――







ガチャッ。

突然音がして、入江くんはさっとあたしの〈身体〉から手を離した。

「直樹くん!?どうしたんだい、こんな早くに」

ドアのところに立っていたのはお父さんだった。驚いた顔をして入江くんをみつめている。

「いえ…ちょっと気になって。琴子、まだ目を覚まさないんですね」

そう言った入江くんはいつもの入江くんだった。落ちついた声も表情も。

「ああ…1日で目を覚ますって言われていたんだけどな」

お父さんは溜め息混じりに言ってドアを閉め、あたしの〈身体〉のそばまで来た。

「ほら、琴子。直樹くんが来てくれたぞ」

あたしの〈身体〉に話しかけてるお父さん。
お父さん…ちょっとやつれた?すごく、疲れた顔をしてる。
お父さんを見るのは、事故のあった日以来。
ものすごく、心配してくれてるんだ…それがわかって、心が痛んだ。

「意識がなくても、こうして話しかければ本人に聞こえるんだってなあ」

「そうですね。そう言われてます」

「看護婦さんに聞いてな…ずっと話しかけてるんだが。俺の声じゃ、目を覚まさないようでな」

お父さんは溜め息をついてる。
う…ごめんなさい、お父さん。
あたしが目を覚ますには、確かにお父さんの声じゃダメなの。

「おじさん…大丈夫ですか?仕事は…」

「いや、仕事は昨日から店の皆に任せてる。夏場だし、そう忙しい時期でもないし。しかし…もう3日になるんだよな…事故に遭ってから」

お父さんはあたしの〈身体〉の顔をじっとみつめている。

「全く…こいつは確かに朝は苦手だがなぁ。こうも起きないとは」

「…おじさん。そのことなんですが」

力なく笑うお父さんに、入江くんが口を開いた。

その時。

――コンコン。
ノックの音が響いた。

「相原さん。様子はどうですか?」

ドアが開いて、入ってきたのは看護婦さんだった。その後ろに白衣を着た男性が続く。

「あ…先生。いや、特に変わりはないです」

「そうですか…」

あたしの担当の先生なのかな。白衣の男性はあたしの〈身体〉のそばに来ると脈を見たりしている。

「あの」

入江くんがその先生に声をかけた。

「担当の方ですね?」

「はい。そうですが」

「事故に遭って最初に診てもらった時、頭部CTで特に異常はないということでしたが」

「ええ、そうでした」

「ここまで意識が戻らないとなると…何か異常があるのでは?」

入江くんは、真っ直ぐに先生を見据えている。

「もう一度、頭部の詳しい検査をしてみて下さい。お願いします」

そう言った入江くんの顔は、今まで見たことがないくらい、真剣なものだった。



☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

少し短いですが、今日はここまでで。
^_^;
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はじめまして~♪
突然のコメント、新人です(^-^;

年末にこのサイトにお邪魔させて頂いて...
眠り姫は待ちきれないの10までを一日で全部読みました!
ブックマーク登録して(笑)まだかなあって待ちわびてました!!!
待ちわびてた甲斐がありました...

お父さんの切なさや入江くんの隠している琴子への気持ち、琴子の伝わらないもどかしさ......切ない(T-T)

またの更新を日々の楽しみにしてます☆
良かったら私のブログにも遊びに来てくださいね♪
はじめまして。七瀬と申します。

昨日このサイトを見つけまして、このお話の続きを楽しみに今日もまた読み返そうと覗かせていただいたところ、なんと続きが更新されてる!と、嬉しくてニヨニヨしてしまいました(о´∀`о)

これからも楽しみにしています。
No title
入江君!そうだよね?医学部だもんね?入江君の、気持ちて、本当に、わかりずらい?琴子ちゃんへの、、愛情は、並大抵ではないくらい、会ったんだよね、このころから、入江君、琴子ちゃんを、助けてね。
Re: たまち様
コメントありがとうございます!

ついに動きましたよ!11話も経って、やっと(笑)。
まあこれも、魂琴子が動かしたようなものですが。

ふふ、そうですね。言葉は足りなくてもボディータッチをするのは直樹らしいかも。
そして、タイミング逃しましたね(笑)。

そうそう、そうなんです。
あの琴子が受け身にならざるを得ないのって、本当に辛いでしょうね。
特に当サイトの琴子というか私の脳内の琴子はホントに自主行動!なので、書いてる方もツライ(笑)。話がなかなか進まないし。
そんな琴子は、いつもと違う景色が見えてることにも、今はまだ気づいていないかもしれないです・・・
Re: しおり様
初めまして。コメントありがとうございます!

1日で全部ですか・・・!ありがとうございます!
途中で飽きたりとかしなかったんですね。書いてる方としては特に連載はもう飽きられてるかも・・・とか思ったりもするので。特に当サイトは更新ペースが遅くって…特にこのお話はわけあって遅いのですが、そういうコメントをいただくと本当にほっとします。

まだまだこのお話は続きそうですが、なるべくペースを上げて書きすすめていきたいと思っています。
これからもよろしくお願いします!
Re: 七瀬様
はじめまして。コメントありがとうございます!

昨日見つけていただいたんですね。ようこそおいで下さいました。またイタキス好きな方と出会えて嬉しいです♪
更新ペースが遅いサイトですが、このお話についてはなるべく早く続きを書きすすめていきたいと思っています。
これからもよろしくお願いします!
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

そうなんです。入江くんの気持ちって本当に分かりにくい・・・自分に自信のない琴子からしたら、まだまだ見えてこないと思います。
しかもこのお話は琴子目線なので、読者の方々にも見えにくいですよね・・・
入江くんはこれからどう動くのか・・・続きも頑張って書きますね。
No title
入江君、琴子ちゃんが、心配でたまらないて感じですね、なんだかんだていてるけど?本当は、このころから、琴子ちゃんだけが、大好きなんですよね、入江君には、琴子ちゃんが大事で、でも、入江君は、素直じゃないから?素直に、琴子ちゃんの、様に、好きと、素直に、いえないし、表現できないだけです、本当は、だれより、琴子ちゃんが大事か。v-24
Re:なおちゃん様
コメントありがとうございます!

ようやく、直樹が動き出したところですね。
本人は、自分が抱く気持ちがなんなのか、まだよくわかっていないんですが、それでも気になって仕方がないといったところです。
そんな感情を抱くのも初めてですから、どう対処したらいいのか分からない部分もあるかもしれませんね。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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