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受話器の向こうのサンタクロース
クリスマスのお話は書けないなあって思っていたのですが、突然妄想が降ってきまして。
私にしては珍しく、早く作品にできました。奇跡の連日更新。(自分で驚き)

本当は昨日公開するべきお話なのですが、まあまだクリスマスだし!とアップしちゃいます。
短いですが、よろしければどうぞ。
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・・・・・・・・・・・

ふうー…

誰もいない病棟の喫煙所。
直樹は深々と煙を吐き出し、窓の外を見下ろした。
空はすっかり暗くなり、街には灯りが灯っている。まだそんなに遅い時間ではないが、いつの間にか、外はすっかり夜になっていた。

(そーいえば、今日は)

冬の凛とした空気の中、一際明るく見える、キラキラとした点滅。この神戸医大病院でも、ささやかではあるが、正面玄関の前の木立にイルミネーションを設置していた。

赤と緑――今日の夜にふさわしい色彩。

『クリスマスはね、お義母さんが皆呼んでパーティーしましょって。大勢の方が楽しいから、看護科の皆にも声かけてって』

数日前、電話で話した琴子の声が蘇る。

来年は国家試験が控えているというのに、そんなことしてる場合か。

呆れて直樹が言うと。

『だって、息抜きも必要でしょ?勉強ばっかじゃ息が詰まっちゃうし。いい気分転換になるじゃない』

前にも聞いたような台詞が返ってきた。

――今頃。
あの入江家のリビングでは、大勢集まって騒ぎが繰り広げられているのだろう。

(看護科の皆…ってことは、あいつもいるのか…)

少し――あくまでもほんの少しだけ、気になったりして。

はあ、と直樹が溜め息をついた、その時。


「メリークリスマス!」

ぱあんと間近に破裂音が聞こえ、直樹は思わず手にした煙草を落としそうになった。

「入江先生、こんなとこにおったんかー。今、休憩中やろ。ちゃんと飯食べなあかんで」

クラッカーを手にしてそんなことを言うのは、同じ診療科の先輩医師。

「…川島先生こそ、そんな格好してどうしたんですか」

「見りゃわかるやろ~。トナカイやで。さっきまでな、ボランティアの人たちがサンタになって入院してる子らんとこ回ってたんや。で、ちょびっとだけお手伝いしてん」

そう言う川島は、頭にトナカイの被り物をかぶっている。

「入院している子は、クリスマスやからって何にも楽しみないよってな。食事かて制限されている子もいる。せめて雰囲気だけでも味わってもらおうと、な」

「…そうですね」

長く入院している子をこの数ヶ月見てきた直樹もまた、頷いた。

「ま、ささやかなもんやけどな。今日くらい、病院かてこんな雰囲気になってもええやろ」

クラッカーの残骸を片付けながら、川島が言う。

「ま、入江先生かて、将来子供できたらサンタの真似事するよーになるんやで」
「…赤い服も被り物も遠慮したいですがね」
「いや、琴子ちゃん、イベントとかそーゆーの好きそうやんか。そのうちサンタにされるかもしれへんで」
言いながら自分でぷっと笑っている。

「ま、今はあれやな。夫婦二人なんやし。ちゃんと琴子ちゃんのサンタをやらなあかんで。プレゼントくらい送らな」
「…トナカイのそりで駆けつけるわけにもいきませんから」
「…え?」
「いえ、何でも」

直樹は軽く首を振ると、短くなった煙草を吸い殻入れに押し付け、消した。

「…そろそろ戻ります」




あいつがクリスマスに欲しいもの。
そんなのは決まってる。
どんなサンタにだって、叶わない。

そして直樹の欲しいもの。それも、ただひとつだけ。



***


――ガチャっ

鍵を開け、中に入る。
ようやく帰ってきたワンルームの部屋は、冷たく冷えきっていた。
何とか日付が変わる前には帰ってきたが。

(…温まるのに時間かかりそうだな)

エアコンのスイッチを押しながら、ぶるっと小さく震えが走った。
と、その時。


RRR…

部屋の電話が鳴り出した。
「―――」

もしかしなくても、これは。
確かな予感とともに受話器を取る。

「…もしもし」

――あ、入江くん…!よかった、帰ってたんだ

聞こえてきたのはやはり、琴子の声だった。

――あのね、今日中に言えたらいいなって思ってかけちゃった。…メリークリスマス

「ああ」

途端に、直樹の胸に灯りが灯るように温かくなるのを感じた。

しかし、ちょうど直樹が帰ったタイミングで電話をかけるとは。
普段、電話ですらあれだけすれ違っているのに。

(…クリスマスの小さな奇跡か)

はたまた、直樹の想いが通じたのか。

(――会いたい)

今は声だけだけれど。
こんなにも、心が温まる。

「で、今日はどうだったんだ」

――あ、うん、パーティーね、皆盛り上がってたよ。

「お前は?」


――あたしは…だって、入江くんいないから…

「勉強の合間の気分転換なんだろ」

――そうだけど、つい入江くんいないなあ…って思っちゃって


いつもは長電話はしたくない、と言って憚らない直樹だが。


(せめて今日くらいは)

電話の向こうの彼女の声を、もっともっと聞いていたいと思う。


そう、彼女こそが、彼のサンタクロース。
彼の唯一、欲しいもの。


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Re: ジェニィ 様
コメントありがとうございます!

すっごく嬉しいです!ツボですか?そんな風に言っていただけて感激してます。
私も何故か、入江くん目線の方がどーも書きやすいんですよね。実は誕生日が同じなんですが、そのせいかな?(笑)


Re: たまち様
コメントありがとうございます!

静かな夜に降ってきた妄想が、神戸でさみしい直樹のクリスマスでした。
ほんと、特にクリスマスなんて、特に意識していなくったって街はそれ一色になるし、それ見るにつけ、琴子を思い出したでしょうね。
街がにぎやかな分、せつなさは半端なかったかも。

野生の勘!笑。
琴子は無意識のうち、直樹の心の声が聞こえるんですね。だからこそ、いつも直樹は琴子にかなわないんですよね。

プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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