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この、特別な日に(前)
9月28日は琴子ちゃんのバースディ!ということで。
このブログを開設してから初のバースディということもあり、前後編を書きました。
とりあえず、イブの今日は前編をアップします。
後編は当日アップしたいと思います。

連載の方は、ちょっと中断中・・・
あのお話の続きを待っていらっしゃる方がどれほどいるか、自信がないところなのですけれども。

... Read more ▼
・・・・・・・・・・

「お兄ちゃん。28日は当然、開けてあるわよね」

ことの発端はお袋の一言だった。
ちょうど琴子が風呂に入っているタイミングで、お袋は俺に話しかけてきた。俺は風呂あがりでキッチンに水を飲みに来たところ。
ったく、唐突だな。いつものことだが。
今は9月の頭。もう少ししたら夏休みが終わる、という時期だ。開けてるかと言われても。

「まだ大学始まってないんだし。そんな先のことわかんねーよ」

俺がそう言うと、お袋は途端に怒りの表情を浮かべた。

「んまあぁ、こんな大事な日、何があろうと開けとくのが当然でしょう!?愛しい妻の、しかも結婚して初めての誕生日なのよ!?」

…ああ。そういうことか。

「とにかく、何が何でもその日は開けとくのよ。何しろ去年はパパが入院したりして、琴子ちゃんの誕生日ちゃんとお祝いしてあげられなかったんだから」

…確かにそうだったな。
去年の今頃は…俺にとってもあまり思い出したくない時期だ。
自分の心に嘘をついて。
あいつを無駄に苦しめた時期。
あれから1年。
俺と琴子は結婚し、俺は大学に戻った。――医学生として。
あの頃に比べたら、本当に俺のいる環境は激変した。
まあ、確かにこの状態で琴子の誕生日が来るとなれば、お袋は俄然張り切るに違いないよな。

「で?その日開けといたとして、何をするんだよ」

俺が話を振ってやると、お袋はよくぞ聞いてくれたとばかりににんまりと笑った。

「今年はねぇ、サプライズパーティーよ。琴子ちゃんには内緒で、たくさんお友達呼んで盛大にやるの」

…はあ。いかにもお袋の考えそうなことだな。

「あ、そう。じゃ、まあ準備とか頑張って」

俺が軽く聞き流すように言って退散しようとすると。

「ちょっとお兄ちゃん!頑張ってじゃないでしょ。妻の誕生日、夫が何もしないわけないじゃないっ」
「ないじゃないって言われても。俺別に何かするつもりないし」
「何言ってるのよっ!ホントにもう、冷たい男ね!いい?今回は二十歳の誕生日と同じように理美さんとじんこさんにその彼氏二人、それに金ちゃんも呼んでるのよ。裕樹には好美ちゃんを呼ぶように言ってあるし。その皆さんがみんな、プレゼント持ってお祝いに来るのよ、夫が何もしないで済むわけないでしょう!」
「………」

あーうるさい。
自分の思い通りにしようとするとこ、ホント相変わらずだよな。
こと、琴子に関することになると特にそうだ。

「とにかく!今回はサプライズパーティーだから。琴子ちゃんには当日まで内緒にしてて、琴子ちゃんが帰ってきたら、皆で一斉にクラッカー鳴らして驚かすの。きっと琴子ちゃん、感激で涙ぐむわね。そこへ愛する夫が大きな花束を渡して、『誕生日おめでとう。愛してるよ、琴子』って祝福のKissを……」

……それだけのギャラリーが見てる中で、俺にそんなくさいことをしろと?
――冗談じゃない。

俺は返事をせず、さっさと部屋を出た。お袋がまだ何か言っているようだが、無視をする。
お袋の言うなりにはならない。
何が花束だ。
あいつは俺がいればいいだろう。
そして、俺に真にあいつを想う心があればいいんじゃないのか?
俺はため息をつきつつ、寝室のドアを閉めた。


***


とはいえ。
さすがにパーティーに出ないという選択肢はないわけで。
金之助も来るって言うしな。あいつは最近、留学生のクリスに一目惚れされて追いかけ回されてるけど、あいつにとって琴子はまだ特別な存在のはずだ。

大学が始まってしばらく経った。
表向きは、特に何も変わらない日常。水面下では、お袋が密かに、かつ着々とパーティーの準備を進めている。俺には、当日花束だけは何が何でも用意しろ、と言ってきた。

琴子はというと。
特に何も変わらないが、時折、ふと何かを思い出してはため息をついたりしている。
今も、ベッドに半分潜り込んではいるがカレンダーを見てはまたため息をつき、隣の俺を見る。
何か言いたげな視線。
でも俺は知らない振り。開いた本のページに視線を落とす。

「…入江くん」

しびれを切らしたのか、琴子が話しかけてきた。

「何」

本を読んだままの俺。

「あ、あのね…あのね」

自分から話しかけた癖に言いよどむ琴子。

「あのねはもういいよ。何」
「うん、あのね…、も、もうすぐ9月も終わりよね」
「そうだな」
「だからね、その…」

言葉が続かない。
目線だけ向けてみたら、言葉に詰まって俯いている。
ぷっ。顔、真っ赤じゃねーか。

「何だよ」
「え、だから…あの、あたしのね、その…」

せっかく俺が促してやってるのに、まだ言えないこいつ。
俺は知らない振りで、言ってやる。

「ああ。そうか。わかった」
「えっ!な、なにが」

弾かれたようにこっちを見上げる琴子。

「前期試験の勉強、見てほしいんだろ?わかったよ」「え…いやあの、そうじゃなくて…あ、それもあるんだけど、あの」

――うん。わかってる。
そんなことなら、お前はこんなに言いよどんだりしないよな。
琴子は、困ったように眉を寄せて、上目遣いで俺を見上げた。
少し潤んだ瞳が、俺を捉える。

「……そうか」

俺はぱたんと本を閉じた。

「こういうこと?」
「え……」

ベッドに押し倒されて目を白黒させている琴子。それから、ぼっ!と真っ赤になった。
くくく。ワンテンポずれてるし。それにお前、どこまで赤くなるんだよ。

「あの、入江くん?あたしそんな…」

言いかけた言葉はとりあえず唇で塞いでやる。
しょーがないよな。お袋には、誕生日のこと、琴子に気取られないようにしろって厳命されてるし。
あんな目で見上げてきた琴子が悪い。
俺は琴子が何も考えられなくなるように、性急な動作で琴子を翻弄し…そして共に夜に溺れていった。


***


28日――誕生日当日。
講義が終わり、俺が教室でクラスメイトと話をしていると、

「入江くーん」

ドアの方から声がした。

「何だよ」

話を中断し、俺は廊下に出る。

「うん、一緒に帰ろうと思って。今日はお義母さんに買い物頼まれてるから、二人で行こうかなって」

にっこり笑って琴子が言う。

「今、試験のことで話をしてるんだ。まだかかりそうだから、お前先に帰ってろよ」

俺はいつもと変わらない調子で言った。
琴子の表情が途端に曇っていく。

「そっか…じゃ、しょーがないね。先に帰ってるね」

無理に笑顔を作ってそう言う琴子。一瞬、まだ何か言いたげに口を開きかけたが、そのままくるりと踵を返し歩き出した。
誕生日だからと言って、特に何も変わらない俺に何か言いたかったんだな。
お袋は琴子に何か買い物を頼んでいるらしい。それに一緒に行くことで、デート気分を味わいたかったんだろう。
今日はお袋に、琴子より先に帰るように言われている。
ま、もう少ししたら出ればいいか。俺は教室に戻り、荷物を手早くまとめていく。
そこに。

「入江、佐藤教授が研究室に来てくれって」

クラスメイトの一人が告げた。
教授が…仕方ない。まあ試験前だし、そうそう長くはならないだろう。
俺は鞄を持ち、研究室へと急いだ。


***


――誤算だ。
まさかこんなに時間がかかるとは。あの教授、話長いんだよな。
俺はつり革につかまり、電車に揺られながらため息をついた。
琴子は、もう、家の最寄り駅に着いているだろうな。もしかしたら、帰るタイミングが同じになるかもしれない。
お袋は文句をつけるかもしれないが、別にパーティーには何の支障もないだろう。
花束か…買う暇はないな。まあ、それもいいだろう。
あいつは俺がいればいいんだから。

そんなことを思った、その時。
ガタン、ガタン……
電車が不自然にスピードを落とし始めた。
やがて歩くスピードと変わらなくなり……ついには止まってしまう。

――なんだ?

ややあって。

「お客様にご連絡いたします」

車内アナウンスが流れた。

「ご乗車の電車の前を走る電車が、車両トラブルを起こし、現在全線で運転を見合わせております。お急ぎのところ、誠に申し訳ございませんが、復旧まで今しばらくお待ちください」


電車が止まった――
車内にざわめきが広がっていく。
車両トラブルって……すぐに復旧するとは考えにくい。
これは完全に遅刻だな…。
また、お袋がうるさいな。まあ、不可抗力だ。俺にしてみれば、どうしようもない。
俺は薄暗くなってきた窓の外を眺めた。


***


すっかり暗くなった住宅街。
腕時計を見ると、もう9時を回っている。
まさか2時間近くも電車に閉じ込められるとは思わなかった。ようやく電車が動いたと思ったら、徐行運転でさっぱり進まないし。いい加減疲れた。
やっと辿り着いた家を見上げる。
もうパーティーは佳境ってとこだよな…
中からかすかに人の声がする。どんだけ騒いでんだよ。
俺は玄関を開け、家の中に入った。
ばたばたっ。
すごい勢いで飛んできたのは――お袋。

「お兄ちゃん!いったい今までどこに行ってたのよっ。あれほど早く帰ってくるように言ったのに…こんな大事な日に!」

完全に怒り狂っている。

「…琴子は?」

とりあえずお袋の言うことはスルーして訊いた。

「琴子ちゃんはねぇ、夫に誕生日もお祝いしてもらえず、傷ついて…、可哀想にねぇ。こうなったのも、お兄ちゃんが悪いんですからね!」

…ダメだ。お袋に聞いても埒が開かない。俺は足早にリビングに向かった。
やっぱり騒がしい。これはカラオケか?歌ってる声が聞こえる。
俺はリビングのドアを開けた。

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Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます。
そして、返信が大変遅くなってしまってごめんなさい。

連載の続き、待っていると言っていただいて嬉しいです!
ちょっと最近、なかなか書くことができずに自信をなくしてしまっていたりしたものですから。

はい、そして今回のお話は俺様な直樹を書きたかったので、私としてはむかつくくらいな傲慢直樹がうまく書けていたのかなー、とコメントを拝見して嬉しく思っていたります(笑)。
そうですね、この入江くん開き直ってますよね。不可抗力だし俺のせいじゃねーよ、ってな感じで。
琴子の気持ちをわかっているつもりなんでしょうけど、全然実は分かってないことに気付いてない。確かにダメ男だなあ・・・・・・

新婚時代の琴子ちゃんは、ホントに言葉足らずな入江くんにさんざん泣かされていますよね。
Re: そら様
はじめまして。コメントありがとうございます。

そして、せっかくコメントを下さったのに、返信が大変遅くなってしまって、申し訳ないです・・・・・・

に、に、日参ですか・・・!
こんなへっぽこサイトに、来ていただいて、ありがとうございます。

バースデー意識したの初めてですか?
そんなきっかけになったことも、とても嬉しく思います。


更新が滞っておりまして、それも心苦しいです。
できるだけ早く続きも書きたいと思っておりますので、こちらこそどうぞよろしくお願いします。

Re: たまち様
コメントありがとうございます!

そして、返信が大変遅くなってしまって申し訳ないです・・・・・・

この頃の直樹はホントにまだまだな感じですね。
傲慢な直樹が書きたかったので、それが伝わったようで私としては嬉しいんですけども。

そうそう、所有欲!
その大きさたるや、子供なみかもしれません(笑)。

見えない何か・・・・・・
それは私(笑)。

琴子ちゃん、ごめんね。
Re: 水玉様
コメントありがとうございます!
そして、せっかくコメントいただいておきながら、返信がこんなに遅くなってしまって申し訳ないです・・・

前編は琴子ちゃんがひたすらかわいそうな展開に・・・

直樹もツキがなかったですけど、たしかに罰が当たったんですね。
後編ではもっと強烈な罰を当ててしまいました(笑)。

そして、連載の続きも楽しみにしていると言っていただいてありがとうございます!
励みになります!
できるだけ早く書きたいと思います・・・
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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