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眠り姫は待ちきれない 4
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・・・・・・・・・・

「き、き、キスぅっ!?」

ようやく、何を言われたか理解できたあたしは、思わず大声を上げていた。

「一番愛する男性…って…」

それはもちろん、入江くんしかいない、けど。
入江くんにキスしてもらわなきゃ、あたし元の身体に戻れないってゆーの!?

「そういうことなのよ」

モトコさんはもう一度盛大にため息をついて言った。
「そういうことって…そんな…お伽話じゃないんだから。キスしたら戻れるなんて…冗談でしょう!?」
「天界全書を調べて、ボスにも確認したから間違いないわ」
「む、無理だよそんな…絶対無理!」

あたしは叫んだ。

「入江くんが、あのあたしの身体にキスをするなんて、そんなのあるわけないじゃない!」
「そうは言っても、それしか方法はないのよ」
「そんな……」

まさか、そんな方法だなんて。

「だいたい、アンタが落ちてる飴なんか舐めたりしたからこんなことになったんでしょうが」
「なっ…しょーがないじゃないそれはっ!お腹空いてたんだもんっ」
「何で魂のくせにお腹が空くのよっ!」
「だって空いちゃったんだもんっ」
「アンタのせいでこちとら減俸よっ!どーしてくれんのよっ」
「そんなこと知らないもんっ」
「…まあまあ」

ぎゃーぎゃー言い合うあたし達の間に、トーマさんが割って入った。

「二人とも落ち着いて。こうしてたって、状況は変わらないわけだし」
「そ、それはそうですけど」
「でも…」

あたしは俯いた。

「どうやって、キスなんかしてもらうっていうの…?こっちからは、話しかけたって聞こえないんでしょう?」

そう。
さっきだって、いくら大声張り上げたって入江くんにもお父さんにも全然聞こえてなかった。
そりゃ、1回だけ入江くんにキスをされたことはあるけど、あれは意地悪の延長っていうか、あたしをからかうためにしたようなもんだもんね。本気なんかじゃなかったし。
ただでさえあたし達、そんな大それた関係でもないのに、入江くんにキスをしてもらうなんて、絶対に無理だと思う。

「それなんだけど」
「え?」
「とにかく、こうなった以上、あたしもアンタを元に戻すまでは天使の仕事に戻るなって言われたし…全面的に協力するわ」

モトコさんがため息をつきながら言った。

「だから、アンタとその彼のこれまでのことを知りたいんだけど」
「え?あたしと入江くんのこと?」

えーと、それって二人のこれまでのことを話せばいいってことかな。

「あの、あたしと入江くんは、高校の同級生で…」
「あ、いいわ。アンタの説明じゃ要領得ない気がするし」
「えっ…でも」

反論しようとしたあたしを軽く押さえると、モトコさんはあたしの額に手を当てた。

「だから、アンタの記憶を読み取らせてもらうわね」
そう言うと、モトコさんは集中するように目を閉じた。
見ると、トーマさんも、あたしの頭の上に手を置いて、同じようにしている。
えーと…記憶を読み取るって…どーゆーことなんだろ…
――しばらくして。

「ふうん…」

モトコさんが目を開けた。
「いろいろあったのね。アンタとあの彼」
「え…」

「地震で家が崩れちゃって、好きな人と同居することになるなんて、ラッキーじゃない」

え?
な、何でそれを?

「何よ、アンタ達キスしたことあるんじゃない。しかも何よ、『ザマーミロ』なんて言われて」

えええっ!?

「一晩女の子と同じベッドにいて何もしないとは…」
トーマさんが眉間にシワを寄せてそんなことを言い出した。

「そいつ、ホントに男?どっかおかしいんじゃないの?」
「え?え?」

な、何でそんなことまでっ。

「だから、言ったでしょ。アンタの記憶を読み取ったの。私達天使の特殊能力」

モトコさんがにっと笑って言った。

「僕達天使は、人が死んで体を離れた魂をあの世まで連れていく案内人だっていうのは聞いたと思うけど」
トーマさんがぽん、とあたしの肩に手を置いた。

「中には、この世に未練があって、すぐにあの世に行けない…つまり成仏できない奴もいるんだ。そんな奴のこの世への未練を解消して、成仏させるのも僕達の仕事ってわけ」
「そういう時のために、こういう能力があるんだけど、まさか生き霊のために使うことになるとはね…」

ひたすら目を見開いてる私の前で、モトコさんはまたため息をつくと、顔を上げた。

「さて、二人の現状もわかったことだし。そろそろ行きましょうか」
「そうだね。もう、下界は朝になったようだし。とりあえず、そのどこかおかしい男のところへ行ってみようじゃないか」
「え…」

見に行くって…入江くんを?


「え、えっと…あたし、確かに一度だけ入江くんが独り暮らししてるマンションには行ったことある、けど…」

でも、ここからどうやって行くんだろう。
ここは霊界。何もない真っ白な空間。
戸惑うあたしの真正面に、モトコさんが立った。あたしを見下ろし、じっと目をみつめる。

「さあ、目を閉じて。そして、思い浮かべて。彼のことを」
「彼…入江くんを…?」
「そう。頭に彼を思い浮かべるのよ」

あたしは言われるままに目を閉じ、入江くんを思い浮かべた。
入江くん…
あたしの大好きな人。
もう一度、ちゃんと会いたい。会って迷惑かけたことを謝って。
それから、大好きって、また、伝えたい。

「はい、目を開けていいわよ」

モトコさんの声がした。

あれ……?
さっきと何か違う…?
肌に触れる空気が、変わった気がする。
あたしはそっと目を開けた。

「え…」

あたしは眩しさに目を細めた。
これは、太陽の光――?
そういえば、もう朝になったって言ってたっけ。
周りは…白くない。
というか、ちゃんと風景がある。
あたしの眼下には、街並みが広がっていた。夏の朝日に照らされた街の風景。
え、ってあたし、街を見下ろしてる?

「えええーっ!?」

あたしは、宙に浮いていた――。
一瞬びっくりしたけど、あたしは落ちることなく、ふわふわと浮かんでいる。
そろそろと体を動かすと、ちゃんと移動できた。
えっと、ここは…?
ぎこちなく体を動かすと、あたしは少しずつ下降することができた。
あれ、このマンション、何か見覚えが……。
って!

「入江くんのマンションだ…」
「アンタが一晩泊まったマンションね」

その声に振り返ると、モトコさんが腕組みしてやはり宙に浮いていた。後ろにはトーマさんもいる。

うわぁ…
何だか、ホント、驚きの連続なんだけど。目を開けたら、こんな風に移動してるなんて。
○こでもドアみたーい!

「で、何号室だったかな?」

ちょっと唖然としてるあたしに、トーマさんが訊いた。

「あ、302号室…」

そう、忘れもしないバレンタインデーの夜。
ドニーズで胃痛で倒れた上に大雪で帰れなくなったあたしを、入江くんが連れていってくれた、あの部屋。

「302号室、と」

モトコさんが、そう言うなりすっと飛んでいこうとした。

「え、ち、ちょっと待って!」
「何よ」

咄嗟に呼び止めたあたしに、モトコさんが振り返る。
「あ、あの…ホントにこれから会いに行くの…?入江くんに」
「そーよ。何戸惑ってんのよ。早く行きましょ」
「で、でも…」

ここ、入江くんのマンションだし。
なんか、いきなり押し掛けるみたいなのは……緊張しちゃう。

「あのね」

尻込みするあたしに、モトコさんがぐいと顔を近づけた。

「アンタは今、魂なわけ。だから、生きてる人間には見えないわ」

あ、そっか。
あたし、つまり今は幽霊みたいなもんなのね。

「幽霊っていうか、身体はまだ生きてるんだから生き霊みたいなもんだけどね。あ、あとそれから」

モトコさんはそこでちょっと口調を変えた。

「アンタは今、他の誰にも見えることはないし、実体がないからこの世界のものには何にも触れることはできない。ただ、ごくまれにそう言う生き霊状態の人でも見える人がいるわ」
「生き霊でも見える人…?」
「そう。いわゆる霊感が強いって人ね。あとは子供。子供の純粋な心と目は、アンタみたいな魂だけの存在でも感じ取れたりするから…まあ、どちらにしても、ごくまれに、だけど」
「そーなんだ…」

じゃあ、入江くんが霊感が強い人だったら、あたし、話ができるってことよね。

「だったらいいけどね。まあ、行ってみましょうよ」
「あ、待って」

モトコさんが、すーっと降りていく。あたしは慌てて後を追った。後ろから、トーマさんもついてくる。

「302…ここね」

マンションの廊下に入っていき、部屋番号を辿っていたモトコさんが、一つのドアの前で止まった。
うわ、確かに表札に入江って書いてある。
そうだ。バレンタインの日、あたしが泊まった部屋、だ……。
あの時以来、来るのは2回目。
まさか、こんな魂だけの姿になって来ることになるなんて…

「さ、入るわよ」

モトコさんはそう言うと、あたしの腕をつかんだ。そのままぐいっと引っ張ると、ドアに向かって飛んだ。ひえっ!
思わず目を瞑ったけど、あたしはぶつかることもなく、すうっとドアを通り抜けた。
宙に浮かんだままあたしは部屋の中に引っ張られていく。
うわ。
入江くんの部屋だ……
あのバレンタインの日から、何も変わってない。相変わらず綺麗に片付いてる。そうだ…あの夜。
同じ部屋の中で、しかも同じベッドの中で一晩一緒に過ごしたというのに、結局なぁんにもなかったんだよね……
入江くんは、「お袋の思うツボにはなりたくないから」って言ってたけど。
あの頃からまた半年くらい経ったけど、あたし達の関係は全く変化がない。
こんなんで、あたし、キスなんてしてもらえるのかなあ……

「わっ」

思わず声をあげてしまい、慌てて口を押さえる。

い、入江くんがいるよぉ……

洗面所から出てきた入江くん。顔を洗ったところなのか、タオルを首からかけてる。前髪が少しだけ濡れていた。そして、前が少しはだけたパジャマ姿。
きゃああっ、朝からなんてセクシーなのぉっ!
思わず見とれてしまう。
いや、同居してた頃にもこーゆー姿は見たことがはあったけど…入江くんが独り暮らしを始めちゃってから、見るのは久しぶりで。
何だかドキドキしちゃう……

「やっぱり…」
「え?」

モトコさんが、あたしの腕を離して腕組みをした。

「彼、全く気づいてないわね。あたし達に」

確かに、さっきあたしが声をあげた時も、全く聞こえていなかったみたいだけど。
よ、よおしっ、こーなったら。
あたしはすう、と深呼吸した。

「おはよう、入江くん!」
思い切り元気よく言ってみる。…だけど。
特に反応なし。入江くんが前髪を掻き上げながら、小さく欠伸をした。
う…ちょっとカワイイ。
と、そうじゃなくて。

「わっ!」

あたしは思いきって、入江くんの目の前に飛び出してみる。
…でも。
やっぱり、入江くんの目には映っていないみたい……。
あたしは、目の前の入江くんをじっと見つめた。


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Re: たまち様
コメントありがとうございます!
返信が遅くなってごめんなさい。

琴子には、確かに可能性はゼロに等しいですよね。
でも、してくれたらいいな・・・と前向きに、かつ夢見がちに思っています(笑)。

直樹の部屋、来てしまいました。琴子的には、また来れるとは思っていなかったでしょうね。
ドキドキわくわく状態です(笑)。

モトコさんは・・・書くといつも不憫な役回りになってしまいますね。気の毒に。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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