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眠り姫は待ちきれない 3
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・・・・・・・・・・

「うん!元に戻る!って…」

あたしはモトコさんに返した…けど。

「でも、どーやって…?」
あたしは今、魂だけの存在。あたしの本体、というか身体は病院のベッドの上にある。

「まあ、問題はそれなのよね」

モトコさんが首を竦めて言った。

「死んだわけでもないのに魂だけ飛び出してきちゃったなんて、通常なら考えられないことなのよ。すっごくレアなケースなわけ」
「え、あ、はい」

わかる?というように人差し指をびしっと突きつけられて、あたしはそう答えるしかない。

「でも、戻れるんでしょ…?」

あたしは恐る恐るそう尋ねる。まさか、戻れないなんてことは…

「あたしじゃ無理なのよね」

モトコさんの答えは、予想しないものだった。

「アンタを戻してあげるには、あたしじゃ力が足りないの。悔しいけど」
「え…えーと…そうなの…?」
「だから、もっと力の強い天使を呼んでおいたんだけど」

そう言って、モトコさんは辺りを見回した。

「そろそろ来るはずなんだけど…」

モトコさんはそう言ったけど、辺りには全く何も見当たらない。相変わらず、何もない白い空間が広がるばかりだった。

「全く、あの人は…」

モトコさんはため息をついた。

「また、美人の魂でも見つけて鼻の下を伸ばしてるに違いないわ!」
「え…」
「しょうがないわね」

呆気に取られるあたしをさておき、モトコさんは。

「!」

モトコさんの頭の上の輪が輝きを増した。そして。
ふわり、とモトコさんの身体が宙に浮いた。

「ちょっと探して連れてくるから、アンタはそこで待ってなさい」

あたしを見下ろしながら、モトコさんが言った。

「え、あ、あのっ」
「そこから動いちゃダメよ!」

そう言って、モトコさんはすーっと飛んでいってしまった。
そ、そっか…天使って空を飛べるんだ…
よく絵で見るような翼はないけど。
あたしはびっくりしながら、モトコさんの姿が見えなくなるまで見送っていた。
はあ、でもよかった。
簡単ではないみたいだけど、あたし、ちゃんと元に戻れるみたいだし。
あー、ほっとしたら、何だかお腹空いちゃったなあ。考えたら、もう長いこと何も食べてない。
ホントは、バイト終わって帰ってから、夕飯を食べるはずだったから。
でも、ここに食べるものなんて…あたしは辺りを見回した。
けれど、やっぱり辺りは白い空間が広がるだけ。あたしの他は何も存在すらしていないみたい…
ううっ…モトコさんに何か食べるものないか聞いとくんだった…
あたしはがっくりと俯いてしまった。
と。
「ん?」
何か、落ちてる。
な、紙で包まれてるこれは…飴!?
それを拾い上げ、包みを開くと、出てきたのはやっぱり飴玉だった。
ラッキー、腹の足し!
小さいけど、この際仕方ないわ。何もないよりマシだもの。
あたしは嬉々として飴を口に放り込んだ。
あ、これってもしかしてのど飴かも。ちょっとミントが効いてる。でも、甘くてなかなか美味しい。
あたしは貴重な飴玉をゆっくり味わいながら、手に残った包み紙に何気無く視線を落とした。
何だろ、これ。
大きな字で、「天」って書いてある。メーカーのロゴか何かかなあ。
そして。
その飴がすっかり無くなった頃。

「あ、モトコさん!」

モトコさんが飛んで戻って来た。後ろにはもう一人。やっぱり飛んでる。そして、やっぱり頭の上には輪っかが光輝いていた。あ、男の人だ。

「よかった、ちゃんとここで待ってたわね」

モトコさんはすたっとあたしのそばに着地して言った。そのまた隣に、後から来た男の人も降り立った。

「へぇ、これが迷える仔猫ちゃんね」

開口一番、その男の人が言った言葉がそれだった。

「ふうん、なかなか可愛いし、若いねぇ。高校生くらい?」

男の人は、あたしの頭からそれこそ爪先までじっと見下ろした。
な、何だろこの視線。ちょっと居心地が悪くなる。

「いえ、一応大学生なんですけど」
「へぇーっ、女子大生!いいねぇ。いやあ、この僕が女性の年齢を言い当てられなかったなんて、初めてだよ」
「………」
「いや失礼。僕は天使のトーマ。天界の王子、なんて言われてしまっているがね、よろしく」

そう言って、強引にあたしの手を取った。
な、なんなのこの人…なんかすごく軽い…
確かに、眼鏡が似合う理知的な顔してるし、一般的にはイケメンの部類に入るんだろうけど。
でもでもっ、入江くんの方が絶対にカッコいい!

「で、君の名前は?」
「あ、相原琴子です…」
「琴子ちゃんか!可愛い名前だね。明るい感じが、君にぴったりだ」
「それはどうも…」

何だか調子が狂う…
トーマと名乗ったその天使さんは、あたしのそんな思いに気づかないみたいで、あたしの手をまだ握っている。

「モトコくんに聞いたけど、事故に遭ったんだって?それはさぞ怖かっただろうね」
「い、いえ…あまりに急なことで。気がついたらここにいたような感じで怖いとかは別に」
「いやいや、強がらなくていいんだよ。可哀想に、気がついたらこんなところに独りぼっちでいたなんて」「いえ、モトコさんがいてくれたので」

この人、天使なんだよねえ…?
それも、モトコさんよりも力が強いっていう…
大丈夫かな。あたしホントに元の身体に戻れるのかしら…
そう思っていたら、モトコさんがそこで咳払いをした。

「…そろそろ本題に入りたいんですけど」
「ああ、モトコくん。わかっているよ。でもね、こういう時こそ、親睦を深めることが大事なんだよ。まずは信頼関係を築かないとね」
「はいはい。ではもうそれは築いていただいたと思いますので、早いとここの子を元の身体に戻してあげてください」
「あ、あのっ」

あたしはそこで口を挟んだ。

「あたしを、早く身体に戻してください!皆にすごく心配かけて…迷惑かけちゃってるんです。早く皆に会って、ちゃんと謝りたくて…お願いします!」

そう言って、頭を下げた。
そう。もう戻れるなら何だっていい。とにかく早く、お父さんに、おばさんに…そして入江くんに、謝りたい。

「ふうん。なるほど」

トーマさんは、ようやくそこであたしの手を離した。
「会いたい人が…離れたくない人がいるんだね」
「えっ」
「いや、わかるよ。恋する乙女の瞳を見ればね」

そう言って、トーマさんはイタズラっぽく笑った。

「いや、気になるな。君の心を奪った男がどんなやつなのか」
「それはもう、カッコいい人ですっ!」

あたしはつい叫んでいた。
「カッコいいし、頭もいいし、スポーツだって万能だし、でもクールでそれがまたカッコいいし、でもホントは優しくて…」

入江くんのことなら、あたしはいくらでも話せちゃう。思わず勢い込んで力説した。

「へぇ。そんなにいい男なの」
「それはもうっ!」
「確かに、いい男だったわね…」

あたしに続いて、モトコさんもそう呟いた。

「何、君も見たのかい?その男を」
「ええ。誰かと違って、硬派な感じが素敵でしたよ」
そう言ったモトコさんが、ごほん、と咳をした。

「あれ、風邪?そういえば、声も何だかいつもと違うけど」
「ちょっと喉が痛くて。まあ大したことはないんで、のど飴を舐めてるんですけど。もう最後の1個になったから、また天界で買ってこないと」

モトコさんはそういうとコートのポケットをまさぐり始めた。

「あれ、ないわね…」

左右両方のポケットの中に手を入れながら、モトコさんが言う。ごほん、とまた咳が出た。

「あの、のど飴って」
「え?」
「もしかして、これに入ってたやつ?」

あたしがさっき舐めた飴の入っていた包み紙を見せると、モトコさんが目を見開いた。

「あ、アンタ…これをどこで」
「え?さっきその辺に落ちてたから拾って、お腹空いてたから舐めちゃったんだけど」
「舐めた!?」

途端にモトコさんの顔が真っ青になった。

「舐めたって…この中身を舐めたって言うの!?この、天界の飴を…」
「え、うん。あの、ごめんなさい」

まあ、確かに人のものを勝手に食べちゃったのは悪かったけど。
それにしても、このモトコさんの反応って…
何だろ…何かまずいことがあるのかな…

「うーん、それはまずいね」

トーマさんが頭を掻きながら言った。

「僕の力でも、君を帰してあげられなくなったよ」
「…え?」

何?どーゆーこと?
帰せないって……

あたし、元の身体に戻れないの!?


***


「つまりね」

まだ茫然としているあたしに、トーマさんが話し出した。

「君は天界のものを食べてしまった。そのことにより、君は天界の力に縛られることになってしまったんだ。このままでは君は元の身体に戻ることはできない」「そんな……」

あんな小さな飴を食べただけなのに。

「大きさは関係ないんだ。天界のものはそれだけ力を秘めているんだよ」

トーマさんはため息を吐いている。
あの後、トーマさんは実際にあたしを元の身体に戻そうとしてくれたみたいなんだけど、やっぱりできなかった。それは、今トーマさんが言ったように、あたしがあの飴を食べてしまったかららしいんだけど……
あたしが元に戻れないってわかってから、モトコさんは血相を変えてどこかに飛んでいってしまった。
それから、あたしはこうして座り込み、トーマさんの説明をよくわからないながらに聞いている。

「まあ、今は待つしかないね。モトコくんが今、天界に行ってる。どうしたら君を元の身体に戻せるのか、調べに行ってるんだ」
「………」

まさか、こんなことになるなんて……
こんなことなら、あんな飴を舐めなければよかった…
「まあまあ、そんなに落ち込まないで」

トーマさんが明るい口調で言う。

「きっと元に戻る方法は見つかるよ。もし、帰れなかったとしても、僕がいるからね。寂しいことはないよ」
「結構です」

あたしは、肩に回されようとしていた手をぴしゃりと叩いて振り払う。
ああ…
あたし、どうなるんだろう……

あたしはそろりと立ち上がると、重い足取りで歩き出した。
少し離れた所に穴がある。さっきも覗き込んでいた穴だ。
あたしは穴の淵まで辿り着くと、膝をついてまたそこを覗き込んだ。

病院の病室。
もう夜なのかな。部屋の電気は消えてる。
そして、お父さんはさっきと変わらず、ベッドに横たわるあたしの身体のそばにいた。
よく見ると、お父さんの目は開いていた。
眠れないんだ、お父さん。
あたしをじっと見つめている。
ごめんなさい、お父さん。
こんなことになって……
でも、絶対に帰るからね。待っててね。

あたしは強く、心の中で念じる。
目を閉じたままのあたしの顔を見つめ続けるお父さんを、あたしもまた、上から見つめていた。

そして――
どれくらい時間が経ったんだろう。
ぽん、とあたしの肩に手が置かれた。
いつのまにかトーマさんがあたしの側に来ている。
あたしが振り向くと、トーマさんはある方向を指差した。
その方向に目を向けると、何か宙に浮いてるもの。――モトコさんだ。こちらに飛んでくる。

「ど、どうだった!?あたし、どうしたら帰れるの!?」
モトコさんが降り立つや否や、あたしは勢い込んで訊いた。
だけど、モトコさんの表情は冴えない。

「え、あの…」

まさか、帰れないなんてことは…
あたしが青くなりかけていると。

「戻る方法はあるにはあるわ」

モトコさんは静かに口を開いた。

「本当!?何、どーやったらあたし…」
「……眠り姫よ」

…え?
よくわからずに目を見開くあたしに、モトコさんは言った。

「アンタが元の身体に戻る方法は一つ。アンタの身体に、アンタの一番愛する男性に名前を呼んでもらい、そして」

モトコさんはそこで一度言葉を切り、大きく息をついた。
そして、告げられた言葉は。

「その男性に、アンタの身体にキスをしてもらうこと」

――………

あたしは思わず全ての動きを止めた――


☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

すみません、こんな展開で…
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続き楽しみです
いつもお話楽しく読ませて貰っています。
眠り姫琴子ちゃん、どうなることやら?続き楽しみにしてます(^o^)/
Re: 紀子ママ様
初めまして。
そしてコメントありがとうございます!

また、イタキス大好きな方と出会えて嬉しいです。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!


お、お父さんって・・・!!!→コメント読んで爆笑しました。
でもお父さんだって、琴子を思う気持ちは確かに負けてないけど、あまりにも……(笑)

うちの琴子ちゃんは妄想もドジ度もかなり行っちゃってる感があるかもしれないです・・・
そして、あえてこの頃のお話にしました。
今はまだ入江くんあんまり出てきていませんが、彼はどうするのか・・・・・・

続きも頑張りますね。









> 飴を舐めたばかりに可哀相すぎますが琴子ちゃんらしいですね。
> しかし この頃の入江くんのキスはハードル高いですね。
> どうなるのか楽しみにしております。
> それと3話では?
Re: こっこ(*^^*) 様
コメントありがとうございます!

記事にも書きましたが、申し訳ありません。
私のミスで、3話なのに4となっておりました。

4話もできるだけ早く書きますね。
Re: たまち様
コメントありがとうございます!


> 中々面倒なシステムなんですね。

そうなんです。
というか、実はあの残念な人を出しちゃえ、となったためにこんなことになりました。
はい、二次の世界で有名なあの方です(笑)。
実は書くの初めてです。やっぱり残念な役回りになるのかは・・・私にも実は分かりません(笑)

幽体なのにお腹がすいたのは琴子の思い込みです(笑)。
モトコさん、まだ知りあって間もないので琴子のトラブルメーカーぶりを知らないのですね。
知っていたら、絶対一人で放置してはいかなかったでしょうに。
やっぱりモトちゃんって、どんな話に出しても苦労する役回りになってしまいます。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

このお話書き始めた時、こんな話、楽しんでもらえるかなぁ・・と思っていたので、
そう言っていただけて嬉しいです。
書くのが遅く、お待たせして申し訳ないです。なるべく早く続きをあげますね。
Re: ことりん様
コメントありがとうございます!

かなり荒唐無稽なこのお話、そう言っていただけるとほっとします・・・
ホントお話をかく励みになります。
続きも頑張って書きますね。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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