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琴子の愛妻特急便(中)
大変間が開いてしまい、申し訳ないです…
やっと更新できました。しかも前後編の予定が、長くなってしまい、結局後編を2つに分けて前中後編に…(汗)

あと、今さらですが、関西弁は適当です!おかしなところがあってもスルーでお願いします。
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・・・・・・・・・・・・

俺な、自転車通勤なんやけど。
今朝、遅刻しそうやったからめっちゃ急いで飛ばしてたんや。そしたら、道路の向こう側に入江先生歩いてんの見えてな。いや、あれは間違いない、入江先生やったで。イケメンは目立つさかいな。
そしたら隣に髪の長い女の人がいたんや。
入江先生の陰になってよく見えんかったけど、一緒に歩いとったで。
今日から休みなのに、朝早うからどないしたんやろって思ったけどな――


***


「どこ行ったんやろな~入江先生」
「………」
「俺も休みの日はどないしてるって突っ込んどきゃよかった」
「………」
「いや、神戸もなかなか広いよってにな。探すっちゅーてもなあ」
「………」
「琴子ちゃん!」

いきなり大声で呼ばれて、あたしは我に返った。
見ると、テーブルの向こうから入江くんの職場の先輩があたしの顔をのぞきこんでる。

「あ、中原先生。すみません、ぼーっとして」

「…川島な。まあ、せっかく来たのに旦那さん出掛けてたら、そりゃがっかりするやろーけどな」

中原…じゃなかった、川島先生はそう言うとアイスコーヒーをぐびっと飲んだ。

「まあ、喉乾いてるやろ。ほら、飲みやー」

あたしの前に置かれたオレンジジュースを指して勧めてくれる。
ここは病院近くの喫茶店。カフェ、というよりは何だか昭和って雰囲気の漂う昔ながらの喫茶店だ。
入江くんに会えず、途方に暮れていたあたしを、夜勤明けだという川島先生はここに連れてきてくれた。
あ、そう言えば、夜勤明けなんて、疲れてるんじゃないのかな…

「あの、川島先生」
「ん?」
「夜勤明けなんですよね?疲れてるのに、こんなところに連れてきてもらって、あたし…」
「えーって。どーせ俺、夜勤明けん時はいつもどっかで飯食ってから帰るんや。気にせんといて」

そう言いながら、朝食替わりだと注文したカレーライスを口に運んでる。

「いやー、夜勤明けって腹減ってなあ。この仕事も体力勝負やから、しっかりた食べんとな」

川島先生がニッと笑って言った。
特にすごくカッコいいってわけじゃないけど、何だか人好きのする顔してるな、この人。
少しだけ心が和んだような気がして、あたしはオレンジジュースをストローで一口飲んだ。グラスの中の氷がからん、と音を立てる。
でも……、入江くん、ホントにどこ行っちゃったんだろう。
しかも、女の人と一緒だなんて。
朝早くに、女の人と二人で街を歩いてた……って。
まさかまさか、その…いわゆる朝帰りってやつとか!?
・・・・・・・

「琴子。離婚したい」
「えっ。今なんて」
「だから、俺はお前と離婚したいんだ。お前みたいな出来の悪い奴と結婚したなんて、俺はどうかしていた」
「そ、そんな…入江くん!」
「俺にはもっと相応しい相手がいる。彼女のように」「って、誰この人!?」
「同じ病院のナースだ。お前と違って頭もいいし、優秀だ。おまけに美人だし」
「………」
「お前と別れたら、俺は彼女と結婚する」
「…はい。入江先生」
「ち、ちょっと待ってよ入江くん!そんな…嘘でしょう!?」

そんな、そんな、離婚だなんて……

「琴子ちゃん?」
「へ…?」

気がついたら、また川島先生があたしの顔を覗き込んでいた。

「何青い顔してるん?まさか、佐野先生の話、気にしとるんか?」
「え……」
「そんなん気にすることあらへんで。道でも聞かれて案内してたとかかもしれんし」

言いながら川島先生はまたカレーを口に運んだ。

「まああの入江先生やから、いろいろ気になることはあるかもしれへんけどな。確かに病院内でもごっつモテるねんけど、いっつも相手にしとらんし」

やっぱりモテるんだ入江くん…

「で、でも神戸ってオシャレで素敵な人が多いイメージあるし。例えばそーゆー看護婦さんが言い寄ったりとかしたら…」
「ないない。入江先生がそんなんあるわけない。俺が保証したるわ」

川島先生はカレーを食べる手を止めて、真面目な顔をして言った。

「大丈夫やって!入江先生、そんなてきとーな人やないやろ。それは琴子ちゃんかてよくわかってるんと違う?」

今度はにかっと笑って、そんなことを言う。

「それに、最近の入江先生、ごっつ忙しいよって、浮気なんかしてる暇あらへんで」
「それは…そうかもしれないけど」

確かに入江くん、最近は輪をかけて忙しいみたいで、前にも増して電話しても留守電クンが応答してた気がする、けど。
でも、現に今、入江くんがどこにいるかは全くわからないわけで。
あーっ、もうっ!何かもやもやしてどうしようもない気分!
でも、どこに行ったか、全然見当もつかないし……

「それにな、…今、ちょっと病院内でゴタゴタしとってな。いろいろ大変なんや」

大きい声じゃ言えへんけど、と不意に川島先生が声を潜めた。

「今な、誰が教授になるならないとかで上の方が揉めとってな」

ため息混じりに川島先生は言う。

「俺ら下の方もなんやかんやで巻き込まれたりしてなあ」
「…それって、研修医もですか?」
「ああ、勿論」

川島先生が頷く。

「研修医になった頃っちゅうのは、だいたいの奴が夢が叶って、希望や使命感や…そんなもんに燃えてるもんや」

それはそうだと思う。
入江くんだって、前にあたしが神戸に来た時、すごく充実した表情をしていたもの。

「それが…4月に研修医としてスタートして3ヶ月以上経って。まあまあ仕事もキツいけど、慣れてきた頃や。そうなると、なんちゅーか…いろいろと現実が見えてきてなあ」

川島先生は、空になったグラスの中をストローでかき混ぜながら、どこか遠くを見てるみたいにみえた。

「大学病院ってのはいろいろ…面倒なことが多くてな。人間関係とか、いろんなしがらみとか、派閥とか。そして、今回の教授に関するゴタゴタや」
「……」
「そういうのって、見てしまうと結構しんどくてな。自分の中の理想が大きければ余計に」

それは、あたしには考えもつかない世界だった。
あたしが毎日のように、入江くんの声が聞きたくて電話してる間にも、入江くんはそんな状況にあったなんて。

「ま、そやから、多分、入江先生かて琴子ちゃんに会いとーてしょーがないと思うで」
「そう…かなぁ…」

そんな自信なんてない。
でも、ホントにそうなら…。

「入江先生が今日から休みって、いつ聞いたん?」

川島先生がお冷やを飲みながら訊いてきた。

「あ、昨日の朝です」

すると、川島先生がふっと笑った。

「入江先生の休みな、ホントに突然決まったんや……昨日の朝にな」
「え…」
「入江先生も、よっぽど早く琴子ちゃんに会いたかったんやろうな」

…珍しい、入江くんからの電話。しかもあんな朝の時間に。
あれは、あたしに会いたいから、だったの?

もし入江くんが悩んでいるなら、あたしは少しでも力になりたい。大したことはできないかもしれない。だけど、それでも。
あたし、入江くんを助けたい。

「そういえば、琴子ちゃんがこうして平日にこっちに来てるってことは、もう大学は夏休みに入ったんか?」
「あ、はい。先週から。なかなか課題が終わらなくて、すぐには来れなかったんですけど」
「ほーか。夏休みかー。こーゆー仕事しとると、そういう季節感が薄れてなあ…って」

川島先生は急に言葉を切り、何か考え込んでいる。
どうしたんだろ。
と、

「思い出した」
「え?」
「どーもさっきからW駅の近くで見たっちゅーんが引っ掛かってたんや」

そういうと、川島先生はガタッと立ち上がった。

「え?それって」

どういうこと?と訊こうとしたあたしを遮り、川島先生は自分の鞄からお財布を取り出している。

「ほら、行くで。入江先生のいるとこや」


***


「ここに、入江くんが…?」

電車と地下鉄を乗り継いだ末に、あたしはその場所を見上げていた。
そこは、大きなコンクリート製の建物――スタジアムに見えるんだけど。
あたしをここまで連れてきてくれた川島先生は、今、入口らしきところに立っている係員の人に何やら聞きに行っている。
係員の人がいるってことは…中で何かが行われてるってことだよね。

「琴子ちゃん、もうすぐ終わるみたいや。出入口は今日はここしか開放してないっちゅうから、ここで待ってればいずれ出てくるはずやで」

川島先生が戻ってきてそう言った。

「じゃ、そーゆーことで。入江先生によろしく」
「えっ!?」

あたしはびっくりして川島先生を見上げた。

「帰っちゃうんですか?」
「ああ。これから夫婦の再会の場面を邪魔するほど野暮やないんやで」
「でっでも」
「ほな、またな~」

あ、ホントに行っちゃった…
ど、どうしよう。
でも入江くんがここにいるって言ってたし…
あ、でもでもっ、女の人と一緒かもしれないわけで…。
と、とにかく待ってみよう。あたしは、言われた通りに一つだけ開放されているという出入口に向かった。

しばらくして。
川島先生が言ってた通り、出入口で待っていると、中からざわざわと人が出てきた。
あれ…?何だか子供が多い…?
小学生位の子供ばっかりだ。皆、いろんな色のユニフォームを着ている。これって多分、サッカーのユニフォーム…?
あ、でもちらほらと大人の姿も見えてきた。きっと保護者なんだろう。
入江くん…ホントにここにいるのかな。入江くんとサッカーって…テニスならともかく、全然繋がらないよ。
で、でも、どうしよう…
入江くんが女の人と出てきたら。
あたしは自分の格好を見下ろした。
今あたしが着てるのは、白いふんわりしたミニワンピース。
入江くんに会いたくて落ち込んでるあたしを見かねたお義母さんが、休日にあたしを買い物に連れ出してくれて、その時に一目惚れして買ったものだ。
今度入江くんに会う時はこれを来ていこう!って思って今日着てきたんだけど…。
でもでも、一緒にいるという女の人は、もっとキレイなのかな……
あ、あたし今、すっかり化粧とか取れちゃってるよ!この暑い中、急いでここまで来て汗かいたし…
化粧直ししたいな…でもここ離れたら入江くんと行き違いになるかもしれないし。
せめてグロスくらい塗り直そうかな…あたしはバックの中をごそごそと探し始めた。
あれ?みつからない。どこいっちゃったんだろ…

「あ」

い、いた…
ホントにいた。入江くんだ。こっちに歩いてくる。
誰かと話してるみたい…?隣を歩く誰かに視線を向けてる。あ、今朝一緒に歩いてたっていう女の人、とか…?ずきんと胸が痛む。
隣の人は、人波の中、陰になって見えない。
と。
入江くんがこっちを見た。あたしを視線に捉え目を見張っている。

「…琴子?」
「あ…」

そして、入江くんが走りだした。
人波を掻き分けながら、あたしに向かって。

「琴子、なんでここに…」
「入江くーん!」

あたしは駆け寄ってきた入江くんに、思わず抱きついていた。
会えた。
やっと会えたよぉ。
あたしは入江くんがあたしを見て走ってきてくれて…、それだけで何だか安心していた。
ぎゅうっ、と入江くんの首にしがみつく。

「マンションにも病院にもいないんだもん…もう、会いたくてしょーがなかったんだからねっ!」
「って、ちょっ…琴子っ」
入江くんが、何とかあたしを振り払おうとするけど、あたしはますます強く抱きついてやる。
と、そこに。

「…入江先生」

…え?
下の方から、声がした。
入江くんから体を離して見てみたら、小学3、4年生くらいの男の子があたしたちを見つめている。

「ああ悪い、陽太くん」

入江くんが苦笑しながらその子に言った。

「ええけど。この人誰?」
陽太くんと呼ばれたその子が、あたしを見て訊いた。
「あ、これは…」

入江くんが言いかけた時。
「陽太っ。もう、そんなにずんずん行かんといて。はぐれるやないのっ」

後ろから女の人の声がした。
この人…
髪が長い女の人だ。
もしかして、この人が今朝入江くんと一緒に歩いてた人…?

「あ、母ちゃん」

陽太くんが振り返って言った。

え…
これは――一体……
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プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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