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黄金週間 4
続きものなのに、間があいてしまいました・・・・・・
子供が熱を出したりして、更新ができませんでした。
無駄に長くなっているこのお話ですが、よろしければどうぞ。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3日目 7:12a.m.
ガッシャーン!

大音響に、俺は一発で目が覚めた。
見ると、ベッドに横になる俺の隣はすでにもぬけの殻。
俺は嘆息すると起き上がり、ベッドを下りた。

「あ、入江くん…起こしちゃった…?」

狭いキッチンから、琴子が顔を覗かせた。見るからにしょんぼりしている。

「いや、気にしなくていい。今の音は?怪我してないか?」

「う、うん…ごめんなさい。ちょっとお鍋を落としちゃっただけ」

琴子が笑って答える。すでに昨日どこかで調達したらしい服に着替えていた。
寝ていた時のあの格好ではなかったことに安堵したような…ちょっと残念なような…複雑な気分だ。
あれから、寝ている琴子をベッドに運び、俺もその隣に横になった。その格好を意識しないように、琴子に背を向けて。でも結局、俺が眠りについたのはだいぶ時間が経ってからだと思う。自然に大きな欠伸が出た。

「それならいいけど。お前、朝っぱらから何やってんだ?」

俺はキッチンを覗いた。

「あのね、入江くん忙しくてちゃんとご飯とか食べてないと思ったから、朝ごはん作ってるの!」

琴子は元気よく答えた。
そしてふふっと笑う。

「今は二人っきりだし、そしたらやっぱり妻が朝食くらい用意しなきゃねっ」

そして、くるっとキッチンの方へ向き…料理の続きかと思いきや。

ホントは朝ごはんできてから、おはようのキッスで入江くんを起こそうと思ってたんだけどな…きゃっ、新婚さんみたーい…

耳をすませていたら、そんな呟きが聞こえてきた。
また、思ってることを口に出してるな。

…だけど。

「おい」

「え?」

「あっちの鍋、吹いてるぞ」

「えっ…きゃああっ」

「あと、なんか焦げ臭くないか?」

「あーっ、嘘っ火がまだついてるーっ」

――かくして。
朝ごはんができたわけだが。

「…しょっぱい」

味噌を入れすぎた上に煮詰まった味噌汁を啜りながら俺がぼやく。

「ご、ごめんなさい」

「あと、お前の作る卵焼きって必ずカラが入ってるよな」

「嘘っ今日は大丈夫だと思ったのにっ」

…そのわりには、ずいぶんでかいカラだが。俺が口に入れると、ジャリッと卵焼きらしからぬ音がした。しかも焦げているので苦い。
しかし、久しぶりだな。こいつの手料理。
新婚当初、まだ俺がパンダイで働いていた時、この卵焼きが弁当に入ってたっけ。
言わば、俺たちの新婚の味、なわけか。

「ごめんね…ほんとはもっと完璧な朝食を用意するはずだったんだけど」

琴子はすっかりしゅんとなっている。

「…いいよ。期待してなかったし」

俺は淡々と箸を動かす。
…そう。俺は別に、そんなものをお前に求めてるわけじゃない。

「あ、ほら、ここで料理するの今日が初めてだし。慣れないキッチンだから、ちょっと失敗しちゃって」

俺の言葉に反応して顔を上げた琴子は、言い訳を並べ立てる。

「でも、もう大丈夫!今日で慣れたし!だから、明日はもっと完璧な朝ごはんを…」

ひたすら前向きな、琴子らしい台詞は、しかし最後まで続くことはなかった。

「…ごちそうさま」

ローテーブルの上に身を乗り出していた俺は、何事もなかったかのように元に戻り、両手を合わせる。
そして、にやりと笑い、言ってやる。

「おはようのキス、するんだろ」

「え…な、なんで知ってるのーっ」

真っ赤な顔で、俺の触れた唇を押さえる琴子。

くくっ。
まったく、お前ってどこまでも俺を飽きさせない奴だな。
ああ。――腹いっぱいだ。



3日目 10:25a.m.

「陽太くん。気分はどう?」

俺は、ベッドに横になる担当患者の陽太くんに声をかけた。
今日は向こうこそ向いてはいないが、やっぱり返事はない。

陽太くんは交通事故で足に複雑骨折を負い、入院している。
あらためて見ると、陽太くんはかなり色が黒かった。これは、何か外でスポーツをしていたのかもしれないな。
ベッドのポールには、折り紙で作ったサッカーボールのついた千羽鶴が飾られていた。
…ああ、おれ、本当に余裕がなかったのかもしれない。今頃こんなことに気づくんだから。
ベッドの脇にあるサイドテーブルの上には、写真立てがいくつか並んでいた。サッカーのユニフォームを着ている陽太くんの写真や、お父さんだろうか?男性と一緒にサッカーボールを手に持った陽太くんの写真。
その中に、一つだけ異質な写真があった。雑誌の切り抜きのようだ。やはりユニフォームを着てサッカーボールを蹴ろうとしている外国人選手。下に名前が印字されている。あれは――

「サッカー、好きなんだな」

俺は、新たに言葉をかけた。
やっぱり、返事はない。
しかし、サッカー、という言葉に、陽太くんの目が一瞬揺らいだ。

「外でボールを蹴りたいんだね」

俺はその目をしっかり見て言葉を続ける。陽太くんの口がへの字になった。泣きそうに見える。

「大丈夫、君みたいな子供の回復は早いんだ。今こうしている間も、君の体の中では君の骨が一生懸命元に戻ろうとしてる。だから、またサッカーができるようになるよ」

安心させるように、ゆっくりと言い聞かせるように話す。

「でも…」

か細い声がした。俺が初めて聞く、陽太くんの声だ。
しかし、言葉が続かない。
「ん?何?」

俺は陽太くんの顔を覗き込み、優しく訊いてみる。
…が、陽太くんは口をつぐみ、俯いてしまった。
それきり陽太くんは口を開くことはなかった。



3日目 14:47p.m.

「あ、入江くん!」

廊下を歩いていたら、後ろから弾んだ声が聞こえた。琴子が嬉しそうに駆け寄ってくる。

「どうした。奈美ちゃんとこに行ってたんだろ。説得できたのか?」

「う…」

…やっぱり。あの子は口が達者だから、琴子なんてやりこめられてしまうのがオチだろう。

「だ、大丈夫よ!ちゃんと説得してみせるから!…で、入江くんは今日もやっぱり帰りは遅いの?」

「ああ。まあ、何時になるかわからないな」

ため息混じりに俺がそう応えた時だった。

「入江先生!」

俺を呼ぶ声。
声がした方に振り向くと、川島先生がこちらに歩いてくるところだった。

「あーっ、もしかして」

琴子の存在に気づいたらしい。急ぎ足で近づいてくる。

「その人が入江先生の奥さん?」

川島先生はすぐ隣まで来ると足を止め、琴子に視線を向けながらそう言った。

「ええ」

「へー。今日病院来たらごっつー噂になっててなあ。絶対会ってみたいと思ってたんやー。あ、俺一応入江先生の先輩になります川島っていいますー以後よろしゅう」

川島先生が、琴子に向かって自己紹介をした。

「あ、入江くんのつ、妻の琴子です。えっと…し、主人がいつもお世話になっておりますっ…なんて。きゃっ、言っちゃった」

琴子も赤くなりながら挨拶をする。
…ったく。何照れてるんだか。
そんな様子を見て、川島先生は相好を崩した。

「可愛え人やな~。ごっつー可愛えーわー。えーなあ入江先生。こんな可愛え奥さんいてはるなんて」

「可愛いだなんて…」

琴子は完全に舞い上がっている。

「いやー、ほんまほんま。独りもんの身としては羨ましい限りやわ。あれ、もしかして…一昨日から来てるんと違う?」

「えっと、はい。こっちに来たのは一昨日です」

「はー。それでなー。入江先生の顔が変わるわけや。え、でも旦那さんを入江くんって呼んでるんか?」

「あ、つい癖でそう呼んじゃうんです」

「えっ、ってことは、二人同級生とか?」

「はい、高校の」

「へー、高校からの付き合いかー」

ぽんぽんと会話が続いていく。
琴子は俺の仕事関係の人と話すのが嬉しいらしく、川島先生のノリもあって何だか楽しそうだ。
…ったく。何浮かれてるんだか。
何だか面白くない気分で、おれは川島先生の方を向いた。

「あれ、川島先生は昨日夜勤でしたよね」

「そーなんや。やっと一段落ついて帰れるわ。あ、そーや」

川島先生は何か思い付いたような声をあげると、視線をまた琴子に向けた。

「えーと、琴子ちゃん、やったっけ。俺明日は非番なんやけど、よかったら神戸の街を案内しよか」

「「え!?」」

俺と琴子は揃って声をあげる。

川島先生はそんな俺らを余所に、のほほんとした笑顔を浮かべた。

「いや、俺どーせ独りもんで暇やし。入江先生は明日も明後日も出勤やろ。その間、奥さんやることないやん。かわいそーや」

「え、え、でも」

目を白黒させている琴子。

「神戸来るんは初めて?」

「あ、はい。来るのは初めてですけど…」

「じゃあ、なおさらやー。異人館とかハーバーランドとか。あ、中華街もあるし、結構見所あるんやで」

「いや、でもあの…」

川島先生の勢いに押され気味の琴子。俺の方をちらちら見ている。
…ったく……。
行きたいって言うのかよ。

「川島先生」

俺はそこで口をはさんだ。

「せっかくですがお断りします」

「えー。別に遠慮せんでも…」

「いえ、こいつ、実は今看護師になるために勉強中なんですが、大学で大量の課題を出されていて。とても、そんな観光なんかしてる暇はないんです」

「え?看護師目指してんのか。おー、それはそれは」

川島先生は目を丸くし・・・・・・そして笑顔になった。

「もしかしてそれは、入江先生が医者になったから看護師目指してる、とか?」

川島先生が琴子に尋ねる。

「はい!そうなんです」

琴子が笑って答えた。

「あたし、いっつもできが悪くって、失敗ばっかりなんですけど。でも、入江くんを助けるために、立派な看護師になりたいんです」

「ほーか・・・・・・ま、それならまあ、残念やけどしょーがないな」

川島先生はそう言って俺を見た。そしてニッっと笑い、また琴子に視線を戻した。

「んじゃ、またの機会に。勉強、頑張ってや。ほんじゃ」

琴子にそう言って、川島先生はひらひらと手を振りながら踵を返し、医局の方へ歩いて行った。

「あ、ありがとうございます!今後とも入江くんをよろしくお願いします!」

琴子が、その背中に向かって頭を下げた。

「おい、ここ病院だぞ」

「え、でもちゃんと挨拶しないと。ほら、奥さんとしては、ね」

頭を上げた琴子はそう言ってニッコリと笑った。

「観光、行きたかったか?」

「ううん」

俺の問いに、琴子はあっさりと首を横に振った。

「あたし、大学さぼっちゃってる状態だし。それに、出来が悪いからもっと頑張んないと1年で看護師になんかなれないし、それに」

「それに?」

「入江くんとじゃないと、観光しても楽しくないもん」

俺の顔を見つめ、笑顔でそんなことを言う琴子。
俺はふっと笑って、そんな琴子の髪をくしゃっと撫でた。

「ま、観光はそのうちな」

「え、ホント!?連れてってくれるの?じゃ、夏休みに・・・」

「ばーか。国家試験受かってからだ」

「えーっ、そんなの先すぎる~!!」


3日目 16:50p.m.

「入江先生!」

医局に向かっていた俺は、呼び止められ、立ち止まった。
振り返ると、妙齢の女性が立っている。

「いつもお世話になって・・・陽太の母親です」

女性はそう言って頭を下げた。

「すみません、下の子もいるので、なかなかここに来てあげられなくて。陽太、どうなんでしょうか」

お母さんは心配そうな顔をして俺を見ている。
そうか、陽太くんはお兄ちゃんなのか。

「順調に回復していますよ。ただ、かなり塞ぎこんでいるようで、食事を食べない時もあるそうですが」

「そうですか・・・・・・」

お母さんは俯き、考え込んでいる。

「お母さん、少し、お話をお伺いしていいでしょうか?」

俺はそんなお母さんに、そう言った。





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

はい、ここで続きます。
愛は盲目…じゃなくて味盲なんです。
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テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Re: たまち様
コメントありがとうございます!

いつもたまち様のコメントには楽しませていただいているのですが、今回はほんとに笑いました!
カラ入り玉子焼き、実体験済みとは・・・!
確かに、ちょっとだけでもカラが入ると、結構ジャリってなって、気になりますもんね。
それでも、直樹にとっては琴子が作ったのだからそれだけで食べれてしまう♪
愛ですね~(笑)

オリキャラのことまで考察していただいてありがとうございます!
原作には全く直樹サイドのことは書かれていなかったのですが、絶対壁にぶち当たってるよなーと思っていたので、こういうキャラを出してみました。
壁があるとすれば、患者、しかも子供の心をつかむことかな、と。
たまち様の言うとおり、まだまだその心に沿うことができなくて格闘中なんですね。

しかし私、入院経験が出産時以外ないもんですから、なかなか難しかったりするのですが・・・・・・
続き、頑張って書きますね。



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Re: りおみーな様
コメントありがとうございます!

初めてこうした長いお話を書いているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです!
そうなんですよね。原作では直樹がどんなふうに神戸で過ごしていたのか、まったく書かれていなくて。
でも天才だって、実際医療現場に出たら絶対に壁にぶつかるだろう、と思いまして。
で、無謀にも妄想が浮かぶままに書いてみた感じなのです。
きっと直樹は琴子がいなくて寂しかったんだろうな~、とか、実際琴子が来てもすれ違い生活でツライこともあっただろうな…とか。考えていると結構楽しかったです(笑)。

夏休みのお話ですか!
神戸についてはあまり詳しくないのですが、でもその内書いてみたいですね。
絶対琴子は神戸に押し掛けているでしょうから(笑)。

プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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