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ドニーズへようこそ 1
春だからなのか、こんな話が浮かびました…
デザートは小悪魔とともに(前)』 『デザートは小悪魔とともに(後)』の続きです。
暇で暇で仕方ない、という方のみどうぞ。


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・・・・・・・・・・・・


「えっと、粉砂糖かけて、ナッツをかけて、キャラメルソースをかけて…」

琴子はぶつぶつ呟きながら、キャラメルソースの入った容器の側面を押した。
容器の口から勢いよくソースが飛び出て、皿の端に落ちていく。

「おいっ、もうちょっと綺麗にやれよ」

「え、だって、間違えないようにするだけでいっぱいいっぱいで」

「ったく」

直樹は清潔なナプキンで皿の端についたキャラメルソースを拭き取った。

「それで、バニラアイスよねっ」

琴子が水に浸かるアイスクリームディッシャーのうち、一つを取り出した。

「あ、お前、すくうディッシャーはそれじゃねーだろ。一番でかいやつだ」

「あ、そっか」

「ほら、早くしろよ。パンケーキが冷めないうちにやらないと、うまい具合にアイスが溶けないだろ」

「………」

「なんだよ」

「確かに、パンケーキの上のアイスは程よく溶けてた方が美味しそーだけど…入江くんがそんなこと言うなんて。入江くん、まさかのパンケーキ好き…」

「なわけねーだろ!」

ファミレスチェーン、ドニーズ。
今日もバイトの二人の言い合う声が聞こえてくる。
今、二人はファウンテン(デザートメニュー)を作るブースにいた。
先日、話の流れで琴子に「時間のある時にデザートの作り方を教えてやる」と言ってしまった直樹。
(※『デザートは小悪魔とともに』参照)

今日、客もまばらになり、琴子にその話を持ち出された。直樹が渋っていると

「じゃあ店長に教わるからいいもん」

と言われ、

「忙しい店長の手を煩わせるんじゃない」

と言い返し、こうして教える羽目になっている。
そして、やっぱり琴子は覚えが悪く、直樹は先ほどからイライラしっぱなしだ。
何故自分はその時、あんなことを言い返してしまったのか。こうなることは目に見えているのに。
ただ、琴子が店長に頼ろうとしたことに、さらなる苛立ちを覚えたのだ。
そして、そのこと自体が自分でも不可解で仕方なかった。
そんな直樹の心中など気づくわけもなく、琴子は相変わらずマイペースでデザートを作っている。

「で、生クリームっと」

「綺麗に絞れよ。失敗したら、また厨房でパンケーキ焼いてもらわなきゃいけないからな」

「わ、わかってるもんっ。……ほら、できたぁ」

珍しく、まともに生クリームが飾られた。これなら客に出せそうである。

「できた、じゃねーだろまだ。ほら、あとはどうすんだよ」

「え、えっと、……ミントの葉っぱを飾る!」

「…それもそうだけど。肝心なものを忘れてるだろーが」

「えっ…何?」

考え込む琴子。直樹はふーっとため息を吐いた。

「お前なあ…今作ってるの、なんて名前だよ」

「キャラパン」

「正式名は?」

「えっ、キャラメル…ハニーパンケーキ」

「ほら、ハニーを忘れてるだろーが、ハニー」

「は、ハニー?」

琴子が目を丸くして直樹を見た。

「まさかハニーって何って言うんじゃないだろうな。ほら、これかけるんだろ」

直樹は台の上から蜂蜜の入った容器を取り上げ、蓋を取った。

「何ぼーっとしてるんだよ」

いつまでも蜂蜜を受け取ろうとしない琴子に、直樹は怪訝な顔をする。

「ハニー……入江くんの口から、ハニー……」

「はあ?」

「だってハニーって……おはようダーリン、今日も可愛いよハニーっていう、あの……」

「バカかお前!」

あまりの馬鹿らしさに怒鳴る直樹。

「ねっ、もう一回言って!ハニーって」

「言わねーよ!」

「じゃあ、キャラメル“ハニー”パンケーキ、って」
「何そこ強調してんだよ…」

「ねー、言ってみてよ~」
「いやだ」

「いーじゃないそれくらいっ」

言い合いになる二人に、

「あの…そろそろできる?」

と声がかかった。
振り返ると、バイトの同僚の高橋がお盆を持って困惑している。

「あ、悪い。今仕上げるから。…もーいいっ、俺がやるからなっ」

直樹は素早い手つきで仕上げにかかる。
一方の琴子は

「ハニー……入江くんのハニー……」

またぶつぶつ呟きながら、陶酔していた……





「入江くん、おはよう」

「…二人っきりの時はダーリンって呼べって言っただろ」

「うん…おはようダーリン」

「おはよう、ハニー」

そして甘いkiss――



「きゃああーっ、入江くんがハニーだなんてハニーだなんてーっ」

「相原さん?どうしたの」
「え?」

妄想の世界に飛んでいた琴子は、その声にようやく現実世界に戻ってきた。
見ると、高橋が心配そうに見ている。

「あ、ううん何でもないの」

琴子はあわてて両手を振った。

「でも、面白いよね、相原さんって」

高橋がくすくす笑いながら言う。

「え…そ、そう?」

「うん。だって、あの入江くんにあんなこと言ってるんだもん。絶対入江くん、言わなそうなのに」

「言わなそうだから、言ってくれた時にはきゅーんてなるの!」

「……でも言わないよね…」

「うん…やっぱりあの後も言ってくれなかった」

あの後、琴子はしつこくあのパンケーキの名前でいいから、と言ってくれるように頼んだのだが、直樹は言ってくれず、終いにはブースを追い出されてしまった。

「あーあ、もー一回聞きたかったなー。入江くんのハニー」

「ハニーだけじゃ聞けないだろうけど、キャラパンの正式名なら入江くんも結構言ってるよね?」

高橋が言った。

「えっほんと?」

「うん。だって…」

高橋の言葉に、琴子の顔が輝いた。





それからしばらく経ったある日。

「お先に失礼しまーす」

厨房の側で料理を運ぼうとしていた直樹のそばを、琴子が通り過ぎた。そのまま、バックヤードの扉の向こうに消えていく。

「相原さん、今日はもうあがりなの?珍しい」

今日はシフトに入っていた松本裕子が、直樹に話しかける。
そう、確かに珍しい。琴子はだいたいいつも直樹と全く同じシフトにしているから、スタートの時間も終わる時間も同じのことがほとんどなのだ。

「ま、その方が仕事がはかどるから助かるわよね」

「………」

ふふ、と機嫌よくフロアに戻っていく裕子の声は、直樹の耳に入っていなかった。



それから少し経って。
ディナータイムに差し掛かり、だいぶ店内が混んできた時だった。
忙しくフロアを動き回る直樹に声がかかった。

「注文お願いしまーす」

「はい、ただいま…」

声のした方に振り返り、直樹は絶句した。

「注文いいですかー」

席に座ってメニューを広げ、にこにこと直樹を見上げるのは、帰ったはずの琴子。

「な…お前何座ってるんだよ」

「んー、お腹空いたから何か食べていこうと思って。あ、あたしこれにしまーす」

そう言うと、開いたページに載っているあるメニューを指差した。

「…………」

無言で冷たい視線を向ける直樹。

「あっちょっと、注文の確認するんでしょ。いっつも入江くん、あたしにしっかり確認しろって言うじゃない」

珍しく、正論を言う琴子。
「ほーら、あたしは今、お客様なのよー」

勝ち誇ったように言う琴子に思わずため息を吐いた。

「……キャラメルハニーパンケーキをおひとつ、ですね」

さらりと早口で言う。

「え?早くてよく聞こえなかった」

(こいつ……)

「キャラメル、ハニー、パンケーキですねっ」

半ば自棄で言ってやると、琴子の顔がぱあぁ…と明るくなった。

「きゃーん、入江くんのハニー…ハニーが聞けたぁっ」

「……少々お待ち下さいっ」

一人できゅんきゅんしている琴子を余所に、直樹は素早く注文を入力すると足早に立ち去った。全く馬鹿らしくてやっていられない。
程なく、厨房から焼きたてのパンケーキが出されてきた。
と、そこに。

「なんか混んできたね。あ、キャラパンなら作ろうか」

店長に声をかけられた。

「…………いえ。いいです俺がやるんで」

直樹はパンケーキの載った皿を持つと、さっさとファウンテンブースに向かっていく。
有無を言わせないその様子に、店長は呆気に取られてその背中を見送った。


――しばらくして。

「――ほら」

琴子のいるテーブルに、直樹が皿を置いた。
その上には、見るからに甘そうなパンケーキ。

「あ、ほらじゃないでしょ。あたしお客様なのよー」
…明らかに調子に乗っている琴子。

「お待たせしました……」
「はーい、何を?」

…どうやら、まだ言ってほしいらしい。
直樹のこめかみがぴくぴく震えた。

「キャラメル…ハニーパンケーキ、です」

低い声でもう一度言った。
途端に、締まりのなくなる顔。うふふ…と笑っている。直樹はさっさと踵を返し、戻っていく。

「あ、入江くーん、これって入江くんが作ってくれたんだよね?」

後ろからそんな声が聞こえてきたが、直樹は聞かなかったことにする。
琴子は幸せそうにパンケーキを切り分け、口に運んだ。
「んー、美味しーい」

直樹が作ったのならなお一層。
琴子はとびきり甘いデザートを堪能した――





「わー懐かしい!ほら、キャラパンだよ入江くん」

メニューを見ながら琴子が騒いでいる。

「キャラパンってなーに?」

直樹の隣の子供用椅子に座っている琴美が不思議そうに琴子を見上げた。

「すごーく甘くって美味しいデザートよー。ねぇ入江くん、食後にこれ、食べていい?」

「みーちゃんも食べる!」
「うん!一緒に食べようね!」

二人は楽しそうだ。

「でも、まだメニューにあったんだね。これ作ってたのってだいぶ前だったのに…。これがきっかけで入江くんがハニーって言ってくれて…」

「言ってねーよ」

何を間違った記憶を…と、直樹は呆れた。

「パパ、ハニーってなーに?」

琴美が、今度は直樹の方に向かって訊いてきた。

「ハニーっていうのはねー、大好きな女の子に向かって男の子が呼ぶ呼び方よ」
「おい、何教えてんだ」

「じゃあ、パパのハニーは、みーちゃん?」

琴美が無邪気にそんなことを言う。

「あっ、違うわよみーちゃん。パパのハニーはマ・マ!」

「えーっ違うもんみーちゃんだもんっ」

「ダーメ!ママなのっ」

今度は親子で言い合いをしている。直樹はため息を吐くと、琴美に向き直った。

「そーだな。パパのハニーは、みーちゃんだ」

「パパ!」

「あーっ、入江くんひどいっ」

途端に琴美は顔を輝かせ、琴子は憤慨する。

「しかも今、みーちゃんをハニーって呼んだし!ずるい!」

「だって、みーちゃんがパパのハニーだもーん」

大人気なく琴美に食って掛かる琴子に、

「琴子」

直樹が呼んだ。そして手招きすると、向かいに座る琴子の方へ身を乗り出した。拗ねながらも、琴子は手招きに誘われ、直樹の方に吸い寄せられる。
その耳許に、直樹が何か囁いた。

「―――!」

途端に真っ赤になる琴子。
「どうしたのママ?」

琴美が琴子を見つめる。

「う、うん…何でもないよー。さっ、注文しよーか。すみませーん」

誤魔化すように店員を呼んでいる琴子に、直樹はくくっと笑っている。

「みーちゃんキャラパン食べるー」

「じゃ、キャラメルハニーパンケーキを食後に一つ」
店員が来て、注文し始めてもまだ琴子の顔は赤いままだった。

(もう…入江くん、あんなこと言って)

直樹曰く――

「昨日の夜のお前の方がパンケーキよりずっと甘かった」





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ



そんなわけで、カテゴリー作っちゃいました。このシリーズは、私がバイト時代を懐かしんで書いているので、需要はないと思いますが不定期に続きます。
f(^^;

この話は…最初は小ネタのはずだったのに、こんな長い話になってしまうとは。お目汚し、失礼しました…
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Re: たまち様
コメントありがとうございます!

このシリーズは、琴子の当社比1.5倍の妄想癖と、無自覚琴子ラブな直樹のお話になりそうです(笑)。
直樹がそんなつもりなくても、ハニーなんて発音したら、もう妄想爆裂!
自分が言われてる気分になってしまうんです(笑)。

バイトしてる時は気にならなかったのですが、今回私も思いました!キャラパンって・・・パンツっぽい!(爆)
直樹には「キャラパン」とは言わせられませんでした・・・それこそ言わなそう・・・

最後の一コマは、直樹、お父さんになったのね、なシーンにしてみました♪
子持ちになっても、やっぱり直樹は琴子が一番なんですけども(笑)。


Re: ジェニィ様
コメントありがとうございます!

このカテゴリー続けちゃっていいですか?
よかったあ。
このシリーズは私が肩の力抜いてお話書きたくなった時に更新されると思います。

ハッピーになっていただけて良かったです!

Re:ちょこましゅまろ様
コメントありがとうございます!

バイトしていたのは相当昔の話なので、記憶を呼び起こしながら書いておりました・・・
楽しんでいただけて嬉しいです!

直樹は絶対ハニーなんて言わなそうですよね。
だから、こちらの琴子は直樹がそう発音しただけで妄想爆裂しちゃったようです(笑)。

最後、ハニーを超えた(笑)存在になった琴子ということでこんなシーンを入れてみました。
子供が生まれてもラブラブぶりは健在みたいです。
喜んでいただけて良かったです!
おいしいね🎂
キャラメルハニーパンケーキ、私も、大好きです、ドニーズ?Denny'sかな!ファミレスいくと、ついつい!甘い、デザートたのんじゃうよね。😄
Re: なっちゃん様
コメントありがとうございます!

キャラメルハニーパンケーキ、前にお店に行ったらまだメニューにありました。人気があったみたいですね。
でも、直樹にとっては、琴子の方がもっと甘ーいデザートだったみたいです・・・

(^v^)
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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