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覚めない夢
琴子ちゃん目線のお話です。



・・・・・・・・・・・・

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――夢を見た。
幸せな、幸せな夢。

「お前はオレが好きなんだよ!オレ以外好きになれないんだよ」

降り続ける雨の中。

入江くんはそう言った。
そして。

あたしにキスをしてくれて。
気がついたら、あたしは入江くんの腕に抱かれていた。

「オレ以外の男、好きなんて言うな」

入江くんの腕の中は温かくて――雨に濡れてるのに温かくて。
入江くんの鼓動が、少し早くなってるのが伝わってきて。
あたしは、夢ならこのまま一生覚めなくていいって思った。

でも。
夢はそこで終わらなかった。
入江くんに手を引かれて家に帰って来て。
入江くんが皆の前で、お父さんに言った。

「琴子さんと…お嬢さんと結婚させて下さい」

驚いてる皆に、入江くんはさらに言った。

「これからずっと一緒にいるのは、こいつ以外考えられなくなったんだ」

頭がぼーっとして、何も考えられなかった。

入江くんがあたしと結婚するなんて。

目の前で起こっていることが、信じられなくて。
嘘みたいで。

だけど、だけど……

「大好きだよ」

入江くんがあたしを好きなのは知らなかったわ。

そう言ったあたしに。

入江くんは微笑って、そう言ってくれた。
あたしを抱き締めて。
温かいぬくもりを再び感じて、あたしはやっと、安心できた。

ああ。
ホントにホントなんだ。
夢みたいだけど、夢じゃないんだ。
入江くんの腕に包まれて。

幸せな夢。
ずっとずっと見ていたい夢。
夢――



夢?





気がついた時、あたしは自分の部屋のベッドの中だった。

あれ……?
あたし………

今、夢を…………?


「………!」


あたしはがば、と起き上がり、そのまま急いで部屋を出た。
廊下を半ば走り、その勢いのまま駆け降りる。

早く…早く。
早く会って確かめなくっちゃ。

――入江くんに。

あたし……、夢を見てたんじゃない、よね?


「きゃっ」

もう少しで1階、というところで、足がもつれた。

ドターン


「………いったあ…」

あたしは、階段の下にもんどり打って倒れていた。
うう…鼻を打ったわ。痛い……手で触ってみる。
あ、鼻血は出てない。よかったあ。

「琴子っ」

バタバタッって音とともに、焦ったような声が聞こえた。
這いつくばっているあたしのそばにしゃがみこむ気配。
この声は……

あたしは、そろそろと首だけ動かし、上を見上げる。
「…大丈夫か?怪我してないか?」

心配そうな瞳と視線がぶつかった。

「入江くん……」

入江くんが、すぐそばであたしを見つめている。
あ、入江くんワイシャツ着てる。スーツ姿も似合うのよね。
あたしは、頭の片隅でそんなことを考えていた。

「入江くん……入江くん……」

でも、口からは入江くんの名前しか出てこない
だって、入江くんの顔を見たら、何だか……頭が真っ白。
な、何を言ったらいいんだろう……
入江くんに聞きたいことはたくさんあるのに。きっとあるのに。
だからこうして、急いで降りてきたのに。
ちっとも、言葉が出てこない。

「どこか打ったりしたか?」

いよいよ心配そうに、入江くんが訊いてくる。
ああ、これも夢?
だって、こんなに入江くんが優しい。
意地悪言わないし。
やっぱり、夢の続きなのかな……
幸せな幸せな、夢の……

「お前なぁ…」

ため息混じりの低い声がした。
と同時に、おでこを指で弾かれる。

「いたっ」

「痛いだろ?」

入江くんは、あたしの顔を覗き込んで言った。

「だから、夢じゃないんだよ」

あたしに言い聞かせるように、優しい声。

夢、じゃない……
こんなに優しい声もあたしを見る、瞳も。
目の前にちゃんとある。
ちゃんと…おでこも鼻も痛いし。

「ほら」

入江くんが這いつくばったあたしの手を取った。
ぐいっ、と引っ張られる。そしてあたしは入江くんの胸に飛び込んでいた。
ぎゅっと抱き締められる。

「昨日お前に言ったことは、夢でもなければ嘘でもない。お前お得意の妄想でもない」

耳許に聞こえる、低い声。それはどこか、甘く聞こえた。

「忘れた訳じゃないだろ?」

「忘れるわけないじゃない!あたし、あたし……」

忘れるわけない。
きっと、一生忘れないよ。
ああ。

ホントにホントなんだ。
入江くんの温もりが伝わってくる。
あたしを抱き締める腕の力強さも。これが夢じゃないって教えてくれる。
これが現実だって教えてくれるから。
鼻の痛いのもおでこの痛いのすら、愛しい、よ。あたし……

「で、ホントに怪我はないんだな?」

入江くんが少し体を離して、あたしの顔を覗き込んだ。

「う、うん。大丈夫」

「ったく…気を付けろよ」

呆れたようにあたしを見て苦笑してる。

「…うん、…ごめんなさい」

「じゃ、さ」

ふっと笑って入江くんがあたしの頭にぽんと手を置いた。

「コーヒー淹れて。琴子」

「うん!」

あたしは、やっと笑うことができた。
入江くんに向かって。





パシャパシャッ

ダイニングに入った途端、いきなりフラッシュが瞬いた。

「琴子ちゃ~ん。おはよう~」

カメラを構えたおば様が、満面の笑みで出迎えてくれる。

「朝のさわやか~なツーショット写真、いただきねっ」

な、なんか、朝からすごいテンション。

「ほらな。どっぷり現実だろ」

あたしの後ろから入ってきた入江くんがため息をついている。

「あ、入江くん、コーヒーよねっ」

あたしはキッチンに向かい、入江くんのカップを取り出した。

わ、なんか久しぶり。こうして、入江くんにコーヒー淹れるの。
考えたら、あたしずっと入江くんに会わないように避けてたんだもんね。
何だかすごく、新鮮な感じ。
あたしは丁寧に丁寧に、カップにコーヒーを注ぎ入れた。
ダイニングのテーブルについている入江くんのところにゆっくり運んでいく。
と、そこでまたフラッシュが迸った。

「お袋っ。いい加減にしろよっ」

「あーらいいじゃなーい。フィアンセに朝のコーヒーを運ぶ図なんて。素敵っ」

「フ、フィアンセ?」

あたしは思わずおばさんに聞き返す。

「だってそうでしょ。昨日、お兄ちゃんは琴子ちゃんと結婚するって言って、お父様にお許しをもらったんだから。間違いなくフィアンセ、婚約者よっ」

「フィアンセ……婚約者……」

あたしと、入江くん、が………?


「おいっ琴子、またそこでのぼせるなっ」


ああ……
あたし、もうキャパオーバー、かも。





「今日も、帰りは遅いの?」

入江くんは、今日は出勤。ハイヤーが迎えにくる時間になって、入江くんとあたしは玄関にいた。

「ああ。まあ会社は相変わらずな状態だしな」

入江くんは淡々と言いながら靴を履いている。

相変わらず……

ってことは、やっぱり大変な状態ってことだよね……

しかも、入江くんはあたしと結婚するって言った。
沙穂子さんにも納得してもらわなきゃならないって。
だったら、大泉会長からの資金援助もなくなる、ってことだよね……
ただでさえ入江くんは大変な責任を負っているのに、あたしを選んだことで、もっとずっと苦しい立場になっちゃうんじゃないのかな……

「なーに暗い顔してんだよ」

その声に俯いてた顔を上げたら、入江くんが振り返って、あたしを見ていた。

「あの、入江くん……ホントに、大丈夫なの…?」

あたしは思わず、そう聞いていた。
あたしは多分、すごく不安そうな顔をしていたと思う。
だけど。

「ああ。大丈夫」

入江くんはあっさりと言った。
微笑すら浮かべて。
それは、こんな時なのについ見とれちゃうくらい素敵な…清々しいくらいの笑顔だった。

「だからお前は、何も心配することないから」

入江くんはそう言って、あたしの頭をくしゃくしゃっと撫でた。

「あ、あの…あたしに、何かできることない?」

あたしは思いきって、そう訊いてみる。

「お前にできること?…あるよ」

「ほんと!?」

「ああ。お前にしかできないこと」

「何!?あたし何したらいいの?」

あたしにできること……しかも、あたしに「しか」できないって……
何だろう?全然想像がつかない。

「わからない?」

くすっと笑って、入江くんがあたしの顔を覗き込んだ。

「だったら、…教えてやるよ」





「あら、琴子ちゃん。どうしたの?そんなところで」

玄関に佇むあたしの背中に、おば様が声をかけた。

「なにぼーっとしてるんだよ。お前だって今日は大学だろ」

そう言ってくるのは裕樹くん。

「僕はもう学校行くからな。遅刻しても知らないぞ」

「えっ、もうそんな時間っ?」

あたしはあわてて振り返る。

「琴子ちゃん、大丈夫?何だか顔が赤いけど」

おば様が心配そうにあたしの顔を覗いた。

「あ、昨日雨に濡れたから風邪引いちゃった!?」

「だ、大丈夫です!あの、風邪は引いてないですから。あたし、支度してきますっ」

あたしはそそくさと自分の部屋に向かった。

「でも、琴子ちゃん…」

「バカは風邪引かないって言うんだから。あいつが風邪ひくわけないよ」

おば様と裕樹くんが話してるのが聞こえる。

でもあたしは振り返ることなく階段を昇り、自分の部屋に入る。
ぱたん、とドアを閉めて。あたしはその場に座り込んだ。
そっと、唇に触れてみる。
まだ、熱を持っているような気がした。

入江くんの触れた、唇に。
そして、入江くんの囁きが蘇る。


『夢じゃない、証拠』





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ



あの雨の日の次の日のお話です。
入江くんの「大好きだよ」の次の場面、琴子ちゃんは幸せ全開だったけど、そうなるにはもう一場面、甘ーいことがないと夢だったんじゃ…ってなりそうな気がして、書いてみました♪
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Re: たまち様
コメントありがとうございます!
ぱそ子ちゃん来たんですね~♪
こちらこそ、これからもよろしくお願いします!

そうそう、男作れ発言はひどかったですよね。あそこからいきなり結婚って・・・
と、思ってできたのが今回のお話です。

原作で、直樹が独り暮らしやめて入江家に戻ってきた時も、琴子は夢じゃないかって
朝起きて1階にダッシュしてましたけど、今回はその時の比じゃないだろうなと。

そんなけなげな琴子に、力技!(笑)
直樹って、けっこういつもそうなんですよね。


そして、確かに何も知らない人が聞いたら、直樹はひどい男ってなりますね・・・・・・
1日でさっさと鞍替えって!?みたいな。
でも本人はそんな噂が立ったとしても、気にしないのかな。

Re: ちょこましゅまろ様
コメントありがとうございます!

素敵って言っていただけて良かったあ。嬉しいです。
あの雨の日から結婚式まで、けっこう書かれてないところが多くて、妄想しちゃうところなんですが、
次の朝は特に直樹が優しくないと琴子は本当に信じられないだろうな、と思いまして。
何しろ、他に男作れとまで言われてましたからね・・・・・・
今まで振り回されていた分、琴子には優しくしてあげてほしいなーと私の願望からこんなお話になりました。
お話読んで幸せ感じていただけたなら、こちらも嬉しいです♪
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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