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デザートは小悪魔とともに(後)
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「あなたが作ったデザート、とっても美味しかったわ」

妙齢の女性が直樹に流し目を送り、言う。

「お誉めいただき光栄です。奥さん」

直樹もまた、微笑みながら応じる。

「今度はプライベートで会えないかしら?これ」

そう言って、小さな紙を直樹のドニーズの制服の胸ポケットに押し込んだ。

「連絡、待ってるわ」

「ええ」

直樹と女性の目が合い、親密な雰囲気が漂う―――


「だ、ダメーっ!ダメよっ、お客さんとそんなことっ!」

「あ、相原さん?」

その声に、琴子ははっと我に返った。

「あの、オーダー入ったんだけど。ココパフェ、一つ」

声をかけたのはバイトの同僚。戸惑いながら琴子を見ている。

「あ、ああ、はいっ」

琴子はファウンテンブースにいた。
夕方の、混み合う前の時間帯。手の空いた琴子は、実際にデザートを作るべく、自作のメモを見つつシュミレーションをしていたのだが…どうやら、妄想に浸ってしまっていたらしい。

「ココパフェね!大丈夫!あたし作るから!」

気持ちを切り替え、琴子は元気に返事をした。
あんな妄想が現実にならないように頑張らなければ。

(さあっ、やるわよっ)

ココパフェ――ナタデココ入りのヘルシーなデザートである。
琴子は、冷蔵庫の中からパフェ用のグラスを取り出した。

「あ、相原さん。このグラスじゃなくて、こっち」

同僚――高橋という――が、琴子が出したものより小さなグラスを取り出した。

「あ、そうか」

本当に大丈夫だろうか…高橋は不安の色を濃くしている。しかし本人は、

(ビデオだって何回も見たし、作るのは大丈夫っ)

どこまでも前向きである。
いざ!とばかりにアイスクリームを掬うディッシャーを手にした。勢いよくバニラアイスに突き立てる。

「あ、相原さん、オーダー、ココパフェだから」

何となく不安で、まだそばで琴子を見守っていた高橋がまた声をかけた。

「え?」

「だから。ココパフェはヨーグルト入れるからアイス入れないし」

「あっ、そっか。やあね~あたしったら」

やっぱり自分が作った方が…と高橋が思った時。

「おいっ、2番テーブル、オーダー取りに行って」

直樹の声がした。

急に続けて客が入り、少し立て込んでいる。何組か、オーダー待ちがいるようだった。
直樹がそのうちの一つのテーブルにオーダーを取りに行っている。

「あ、あたしこれ作っておくよ。大丈夫」

琴子が言った。

「え…」

高橋は少し迷った。が、

「ちょっと~注文したいんですけど」

2番テーブルの方から少し苛立ったような声がした。
「…あ、ただいま伺います」

…まあ、ココパフェは一番簡単なメニューだし、あとは大丈夫よね。
そう思うことにして、高橋はオーダーを取りに向かった。
残された琴子は。

「えっと、ヨーグルトって言ってたわよね」

グラスに冷蔵庫から出したヨーグルトを入れる。

「で、フルーツよね」

カットボードにイチゴを載せ、縦半分にカットする。ブルーベリーと合わせてヨーグルトの上に載せ、最後にミントの葉を載せて。

「できた!」

なかなかいい出来、ではなかろうか。彩りもいい。
そこに、オーダーを取りに行った高橋が戻って来た。

「あ、できたんだ。じゃああたし、持っていくね。ありがとう」

琴子が作ったパフェを一瞥し、急いで盆に載せて運んでいく。

(よかった、ちゃんと合ってたみたい)

琴子がほっとしていると、
「おい」

直樹もまたオーダーを取り終え、戻って来た。

「お前まさか、あれ作ったのか?」

「うん!」

「大丈夫だろうな。入れるもん間違えてないか」

「大丈夫よ!高橋さんだって、ちゃんと見てから持って行ったもん」

「……ふうん」

そうは言ったものの、直樹はまだ疑いの目で琴子を見ている。そこへ、

「すみません」

ホールの方から声がした。女性客が呼んでいる。琴子の作ったパフェを食べた客だ。
直樹は一瞬顔をしかめ、すぐにその席に向かった。
一言二言、女性客が話をし……直樹が頭を下げている
(?入江くん?)

琴子がその様子を見ていると、直樹が急ぎ足で戻って来た。手には琴子が作ったパフェを持っている。

「お前なあ」

その声には怒気が混じっている。

「ココパフェなのに、ナタデココ入れ忘れただろ」

「!あっ!!」

琴子が青ざめる。

「もういいから。俺、作り直して持ってく」

「待って!ごめんなさいっ、あたし作り直すよ。で、謝ってくるっ」

「いいって」

「でも、あたしが間違えたんだしっ」

そうこう言っていると、

「いや、本部との電話が長引いちゃったよ。どうだい、相原さん」

店長がバックヤードから出てきて琴子に声をかけた。。

「店長、やっぱりこいつにファウンテンはやめさせましょう。早速間違えて出しましたよ」

「すみません店長!今度は気を付けるんで、やらせて下さい!」

また店長に進言する直樹に、琴子はあわてて店長にすがりつく。

「ああ、まあ最初だし。俺が見てなかったのが悪かったね。じゃ、見てるから作り直して」

小寺店長は特に怒ることもなく、そう言った。

「はいっ。じゃ、お願いします!」

「………」

ったく、と直樹はため息をついた。しかし店長がそう言うのでは直樹はそれ以上何も言えない。

かくして、琴子は店長にみてもらいながら、デザートを作ることになったのである。



夕食時になり、店内も次第に混雑してきた。直樹は席への案内やオーダー取り、料理を運んだり…と、そこそこ忙しくホールを動き回っている。
ふと手が空き、調理場に面したカウンターへと移動する。残りのオーダーの料理がそろそろできる頃だ。

調理場では、大学生のバイトが二人、料理を作っていた。

「そういえば、聞いたか?○○店の社員の話」

「え、何ですか、それ」

もうすぐ手が空きそうになっているからか、二人は手を動かしながら噂話をしていた。

「いや、その社員、バイトの女子高生に手を出したらしくて、…出来ちゃったらしいぜ」

一人が、言いながら自分のお腹を叩いている。

「えーっ。マジっすか?子供?」

「マジマジ。俺の高校ん時の友達がそこでバイトしてるんだけどさ、何か大変な騒ぎだったらしいぜ」

「そりゃそーだろうな~。その社員の人、どーなったんですか?」

「女の子は高3なんだけど、結局その子の卒業を待って結婚することになったってさ」

「うわーっ。」

「やっぱ、若い子見るとつい手を出したくなるのかねー」

「うんうん。俺だって女子高生、いいと思うもん。社員とかからすりゃ、女子大生だっていいだろうし」

「言えてる。うちの店長あたり、結構そう思ってたりして」

二人はカウンターの向こうに直樹がいるのを気づいていない。

「30代独身だろ?」

「そうそう。なんか女の子に優しいし」

「そーいえば、さっき俺が店に来た時、相原さんにつきっきりでデザート作るの教えてたな」

「へぇ。相原さん、結構可愛いもんなあ。ひょっとして、狙ってる?」

ハハハ…と顔を見合わせて笑っていたバイト二人だったが、ふと笑いが止まった。直樹がこっちを見ているのに気づいたのだ。

「あ、あの…も、もうすぐ、出るんで」

何故か吃りながら、バイトの一人が直樹に言った。

「……」直樹は何も答えない。

(あれ、なんか寒気が…)
空調を変えた訳でもないのに、何故か室温が下がった気がした二人は、無言で料理の仕上げをしたのだった。



「えっと、ここに生クリームを絞って」

琴子が持つ搾り袋から、ぶしゅうと音がして大量のクリームが飛び出した。若干、グラスからはみ出している。

「で、チョコソースかけるんですよねっ」

「あ…、うん、そうだね」
店長は顔をひきつらせながら相槌を打った。
ちょうど、新メニューのDEVIL'Sチョコレートパフェのオーダーが入っていた。店長は「いい機会」と琴子に作らせているのだ、が…
(なんか、大変なことになってる…)

ただでさえボリュームたっぷりのパフェが、琴子の豪快な作り方により1.2倍に膨れ上がっている。しかも、お世辞にも見栄えがいいとは言えない。

「で、ブラウニーをクリームの所に刺すんですよね」

「そう。しっかり刺さないと、テーブルに置いた時に落ちたりするから」

「はいっ」

琴子は三角形に切ったブラウニーを、一番鋭い鋭角を下にして生クリームに近づけていく。その顔は真剣そのもの。

(ちょっと不器用だけど、頑張り屋だなあ)

店長がそんなことを思っていると。

「この辺でいいですか、店長」

「あっ」

思わず店長は声を上げた。刺す位置を見極めるため、パフェに至近距離まで顔を近づけていた琴子。その状態で後ろを振り返ったため、グラスからはみ出していた生クリームが頬についてしまったのだ。

「あれ?」

頬についた冷たい感触に琴子も気がついた。何かと手で触っている。

「あーっ、クリームがっ」
手についたものを見て、琴子は悲鳴を上げた。
パフェの方も、クリームが不自然に削られたようになってしまっている。

「やだーっ、せっかくここまで作ったのに~。店長、ごめんなさいっ」

クリームをつけたまま、琴子は店長を見上げる。

「いや、あの…まあ、それは作り直せばいいから…」
琴子に上目遣いでみつめられ、店長はドキドキしながらそう言った。

(なんか…可愛いかも…)
思わずぽーっと見惚れていると。

「店長!」

そこに割り込む声がした。

「入江くん」

ぱっと琴子の顔が輝く。

「ちょっと立て込んできたんで、こいつ返してもらいますよ。ほら、来い」

「えーっ、でもっ、あたし今DEVIL'チョコパフェの作り方教わってたのに」

「バッシング(テーブルの片付け)の手が足りないんだよ。お前得意だろ。そーいうわけなんで、店長すみません」

「あ、ああ…うん」

有無を言わさぬ直樹の口調に、店長は頷いた。

「あ、そうなの?店長すみません。こんな状態で」

「いや、いいよ。俺、急いで作り直すから」

「ありがとうございますっ」

「お前、何だよその顔。それでよくファウンテンのエキスパートとか言えたな」

「わあっそーだっ、取らなきゃ」

あたふたと、琴子は拭くものを探している。

「やっぱお前、ファウンテン向いてねーな」

「えーっ、せっかく教えてもらってたのに」

直樹と琴子は言い合いながらホールにつながる扉へと向かう。

「ったく。時間があったら後で教えてやるよ」

「えっ。ホント!?」

「時間があったらな」





「やっぱりドニーズのパフェは美味しーい」

大きなパフェを一口食べ、琴子は歓声を上げている。
「ま、お前が作ったんじゃないからな」

向かいに座る直樹がコーヒーを飲みながら応じた。

「しかしお前、普通に飯食ってまだそれ食うのかよ」
「だって、看護師の仕事ってお腹空くんだもん」

琴子は幸せそうにスプーンを口に運んでいる。
お互いに夜勤明けの今日。お腹が空きすぎたと騒ぐ琴子に根負けし、二人でドニーズに来たのだった。

「やっぱりメニューも変わったね。これ、“天使のフルーツパフェ”って言うんだって」

「お前には似合わねーな」
「何よそれっ。ぴったりじゃなーい。なにせ白衣の天使だし」

「…って、お前、またついてるぞ」

「え?」

琴子は上目遣いで直樹を見た。首を傾げている、その仕草が…

「…ったく」

直樹はカップを置くと、腕を伸ばした。
長い指が、琴子の頬についた生クリームをすくう。そのまま、直樹は自分の口に運んだ。

「…甘過ぎ」

「……/////」

琴子はスプーンを持ったまま固まっている。その様子に、直樹はふっと笑った。

(無意識にあんな顔するからタチ悪いよな…)

あの上目遣いの瞳。見るものを捉えて離さない。

(天使っつーより小悪魔だな)

おっちょこちょいの、でも魅惑的な小悪魔。
その小悪魔に囚われているとを自覚しつつ、直樹はまたパフェをパクつく琴子に苦笑した――

☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


遅くなってしまいましたが、後編、upしました。
ナタデココを入れ忘れたのは、10ン年前の私です
(^^;
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ねーさん様
拍手コメントありがとうございます!
そうなんです。あのファミレスでバイトしてました。今回のお話では、ナタデココ入れ忘れの他、社員が女子高生を~とか、実話だったりします。
ファミレスのネタはまだあるので、またそれを元にお話を書くかもです☆

可愛いお話なんて・・・嬉しいお言葉ありがとうございます!!

これの続きですか・・・・・・!
うーん…私に書けるかどうか・・・・・・(汗)、頑張ってみましょうか・・・・・・??
Re: たまち様
ナタデココ=イカ刺し!笑!!
確かに歯触りは近いですよね。
そうなんです、私も入れ忘れました・・・・・・
今となってはいい思い出(おい)。

店長の心はきっと丸わかりだったでしょうね、直樹。
自分と同じように琴子に惹かれる男性には当時から敏感だったんですから
ww

次世代節約エアコン!に爆笑!
エコですね~
夏はいいけど、真冬は迷惑この上ない。
そういえば、今回初めて結婚前の直樹をまともに書いたのですが、わかーい直樹を書くのもなかなか楽しかったです♪
無自覚直樹、また書いてみたくなりました!
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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