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俺だけの…(後)
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後夜祭もいよいよ佳境を迎えている。
模擬店No.1は金之助のおでん屋であった。

「さて、いよいよ斗南祭96メインイベント、ミス・ミスター斗南の発表です!今年は選ばれた二人の強制kissつきですよぉ」

司会者が言うと、観客席は一斉に盛り上がった。

直樹は、医学部のメンバーと一緒にステージの様子を見ていた。

(ま、一応あいつが頑張った末の結果を見てやるか)

そんなことを思っていると、

「'96ミスター斗南は――おお、なんと197票を獲得された、ダントツ1位、入江直樹!」

(―――!)

気がつくと運営委員達に囲まれている。逃げようとしたが、数人に腕を掴まれ、ステージに引っ張っていかれた。

壇上で、ミスター斗南として冠を被せられる。
むすっとしている直樹を尻目に、司会者は煽るように声を張り上げた。

「この入江直樹くんの隣に行けるのは誰かっ!?キスできるのは誰か!?」

いやが上にも盛り上がる会場。そして。

「発表します――食堂のクリスさんです」

司会者の声が響き渡る。
一瞬の沈黙。
そして、ドッ!と歓声が沸き起こった。
スポットライトが当たったクリスはきょとんとしている。

「く…クリスが…」

金之助は呆然とし、琴子は卒倒していた。

「なお、惜しくも次点は入江コトリン琴子さんでした。…まあ、どのみちミセスですしね」

司会者がついでのように口にする。

(へぇ…2位ねぇ。ミセスだってのに)

斗南の学生以外の来場者も多い。琴子が結婚していることを知らない連中も多いのだろう。いずれにせよ、それだけ根強い人気があるという事実に、それはそれで面白くない気がする直樹である。

そんな一方で、クリスは戸惑いながら壇上に上がっていた。直樹とおなじ冠を被せられ、赤いガウンを羽織らされている。

「さあ、いよいよ」

司会者が待ちに待ったという感で告げる。

「お二人のkissを見せてもらいましょう」

ここでまた、ひときわ歓声が高くなった。

「ナニイウテンネン。入江ハ琴子ノダンナヤネンデ。ソンナンデキルワケナイヤロガ」

当然のように言うクリス。しかし司会者も負けてはいない。

「そんなことは誰でも知ってるんですけどね、これがルールなんです」

「ナントカイイナハレ入江モ」

先ほどから何も言わない直樹に、クリスが矛先を向けてきた。

直樹は、ステージの奥にいる金之助を見ていた。
ことの成りゆきを、ハラハラして見ている。
そして、同じようにこの様子を見ている琴子が思い浮かんだ。

(ま、オタクどもに愛想振り撒いてた罰、な)

そう、心の中で宣告する。

「…俺は、別にいいけど」

「入江頭大丈夫デッカ!?琴子ガ見テマッセ」

「おーっ、これは意外にも積極的だぞ入江くん!天才入江もただの男だったかーっ」

予想外の直樹の言葉に、クリスが叫び、司会者は色めき立った。

「きまりなんだから」

直樹は平然と言い、クリスに手を伸ばした。

「めったにない機会だからいーじゃん」

(さあ、金之助、それに琴子、どうする?)

直樹がクリスに顔を近づける――

「てめえ入江っ」

金之助が直樹に殴りかかった。とっさに避ける直樹。

「いって」

拳は空を切り、金之助は勢いのままステージ上にもんどりうった。

「キ、金之助!」

クリスが金之助に駆け寄る。
金之助はそんなクリスを自分の背中にかばった。

「ふ、ふざけんなや入江!琴子にたらずクリスまで」

金之助が怒鳴る。

「クリスは、クリスは渡さんでぇ!」

わーっと歓声が沸き起こる。続いて囃し立てる声。
そこでようやく金之助は我に返った。

「よかったな。言えたじゃん」

真っ赤になって立ち尽くす金之助に、直樹は自分の頭に載っていた冠を載せてやる。

「金之助…アタシノコト、好キナンノデッカ」

クリスが瞳を潤ませながら金之助をみつめている。

「そうや!も、文句アッカ!?」

とてもクリスを正視できず、思い切りそっぽを向いてヤケのように言い放つ。
次の瞬間、クリスが金之助に抱きついていた。
そのまま、金之助にキスをする。

「俺、もういいだろ」

司会者に言うと、直樹はそんな二人に背を向け、ステージを降りた。

(さて、と)

直樹は会場を見回した。
金之助とクリスのキスに最高潮の盛り上がりだ。
探す姿は、その後ろ、木々の間に見える。
直樹はまっすぐにそこに向かった。



「あたしなんて、ミス斗南にもなれなくって、それによく考えたらミセスだってこともすっかり忘れてて」

琴子は木の幹にすがり付くようにしてべそをかいていた。

「こ…こんなことなら…、ずっと入江くんと一緒にいて、もっとたくさん遊べばよかった」

ひっく、ひっくと泣きじゃくりながら言う琴子。

だったら、最初からそうすればよかったものを。

(ったく…自分がミセスなの忘れてんじゃねーよ)

直樹はため息を吐いてしまう。

「それで?」

直樹は琴子がすがり付いている木に肘をつき、寄りかかって訊いた。

「それで、入江くんと最後の大学祭の思い出を作って、それで」

「それで?」

今度は、琴子の肩を抱き寄せ、ぐっと顔を近づけて訊いてやる。

「―――」

琴子が真っ赤になって固まった。大きな瞳をさらに大きくして直樹を見ている。

(…ほんと、かわいいやつ)

思わず口角が上がる。

「じゃあ、最後の大学祭の思い出を作るか」

直樹はそう言うと、顔を傾けた。

「ミスター斗南から、お前に」

甘い声で囁き、唇を重ねる。

琴子は目をみはっていたが、やがてゆっくりと閉じた。

キスは次第に深く、甘くなっていく―――


「あの時、金ちゃんが来なかったら、クリスにキスしてたの?」

唇を離し、琴子の涙を指でぬぐってやると琴子がぽつりと訊いた。

(…お前…まだそんなこと言うか)

内心、嘆息する直樹。

「金之助が来なかったら、お前がとんでくる予定だったんだけど」

「なるほど」

直樹の返事に納得したような顔をした琴子。

「ばーか」

直樹はそんな琴子の額を小突いた。

「えっ…何よもおっ」

(ったく…俺がお前以外にキスなんかするわけないだろ)

本当に、彼女はわかっていない。

でも、だからこそ、ずっと直樹だけを追いかけてくるのだ。

(まっ、あんまり暴走されてもな)

直樹は琴子の顔を覗きこみ、じっとみつめる。

「コトリンのモデルはお前だけど」

「うん」

琴子は赤い顔のまま頷いた。

「でもお前はコトリンでもなければ、ましてや“ミス斗南”でもない」

「…うん」

「ミセス入江、だろ?」

「入江くん…」

「それじゃ不満?」

「そんなわけないよ!あたし、ずっと入江くんの奥さんになりたかったんだもん!!」

直樹を見上げ、必死に言う琴子に、直樹の顔が綻んだ。


そう。それは唯一無二の存在。

(お前は、俺だけのもの)

想いを込め、直樹はもう一度琴子に長い長い口づけを落とした。





翌日。

「さあ、できたわ~」

昼下がりのリビングで、紀子は満足げな笑みを浮かべていた。

テーブルの上には、1冊の分厚いアルバム。表紙には“愛のメモリー '96斗南祭”とある。

「今年は琴子ちゃん、お兄ちゃんと別行動してたからあんまりツーショット写真が撮れなかったんだけど」

パラパラとページをめくる。
初めのうちは、ナース服の琴子が一人で写っているものや、看護科のクラスメイトと一緒に写っているものばかりだ。

「で・もっ」

紀子はあるページでめくるのをやめ、その写真を眺める。

「クリスちゃんにキスしようとした時は、どういうつもりかと思ったけど」

そしてにんまりと笑った。

「まったくお兄ちゃんたら、やっぱり琴子ちゃんにゾッコンラブね~」

ちょうど開いたそのページには、直樹が琴子にキスしている写真があった―――





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ



ツンデレ直樹のデレ編(笑)。
原作の、「それで?」と琴子に訊く直樹の表情に萌えな私でございます。

最後の部分、蛇足かな~と思いつつ、入江ママならこのシャッターチャンスを逃すことはあるまい、と書いちゃいました。
(*≧m≦*)
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Re:
たまち様

コメントありがとうございます。

そうですね、琴子はいろいろ考えて行動すると必ず裏目に出ちゃう(笑)。でもそんな所が直樹は可愛いのでしょう♪

紀子さん、本望と言っていただけてよかったです!そりゃもう、あの方があのシーンを放っておくはずないですよね。美味しい展開に、写真の数も増えまくったことでしょう。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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