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俺だけの…(前)
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今日から斗南大学の大学祭が始まる。

数週間前から、斗南大学のあちこちにはアニメ部が製作する“コトリン”のポスターが貼られていた。もはや、斗南祭の風物詩と言っても過言ではない。実際、“コトリン”が上映されるようになってから、斗南祭の来場者は大幅に増加したのだ。
今年はコトリンに加え、マナリンなるキャラクターも誕生し、新作“ナース戦士コトリン&マナリン”として上映されるらしい。前売りは完売し、今年も相当な数のオタク系男子が押し寄せるだろうと言われている。
しかし直樹は、我関せずとそのポスターの前を通過した。

「入江~。奥さん頑張ってるな~」

後ろから、同期の医学生に声をかけられた。

「『ミス斗南には入江コトリン琴子を!』ってさ、朝からすごいPRしてたぞ」

「………」

琴子からは大学祭では別行動を取ろう、と言われていた。
こういうイベントが大好きな琴子にしては、珍しいことである。その時は深く考なかったが、それが目的か。

そう言えば、今年はミスター斗南が新設され、ミス斗南との強制キッスをするのだと医学部の誰かが言っていた。

(俺がミスター斗南になったら、自分がミス斗南に選ばれないと他の奴とキスさせられるから、必死になってるってわけか)

ったく…とため息を吐く。

(まあ、あいつらしいっちゃあいつらしいけど)


直樹がミスター斗南に選ばれるかどうかはさておき。
直樹のためなら凄まじいパワーで突き進むところは相変わらずである。

しかし。

(……あいつ、もうミセスなんだけどな)

ま、勝手にさせとくか。直樹はそう決め、歩を進めた。


☆☆☆


医学部は船津の発案により、ホルモン焼き屋を出店していた。
国家試験が近いため、医学部の6回生は学園祭どころではない。
しかし、さすがに全てを実行委員の船津に押し付けるわけにもいかず、係分担がなされていた。
屋台の組立係を申し出た直樹だったが、「お前はとにかく店番をやれ」と言われ、こうしてホルモン焼きを焼くはめになっている。
容姿端麗の直樹が店に立っているため、医学部の屋台は午前中から大盛況である。

「入江さん、今、胃を追加しましたから!あと、肝臓も!」

船津が嬉々として動き回っている。

「お前、ミノとかレバーとか、ちゃんと呼び名があるだろうが」

「…はい?何か言いました?あ、これ膀胱です」

「………」

先程から、ホルモン焼きを買っていく客に牛の部位の解説を加えているため、引かれまくっている船津である。

「忙しそうね」

聞き覚えのある声がした。

「松本?」

声をかけたのは松本裕子だった。

「久しぶりに大学に来てみたのよ。どう?一緒に回らない?どうせ、相原さんは別で忙しいんでしょ?」

「ああ、ちょうどあと少しで交代だから」

こうして、交代の時間が来てから直樹は裕子と学園祭を回ることになったのだった。



「どう、仕事の方は」

「まあまあね。ようやく、面白い仕事もまかせてもらえるようになったけど。でも、いろいろ融通のきかないことも多くって」

裕子は、すでにコンピューター関係の企業に就職して社会人になっている。

「松本なら、自分で起業するって道もあると思うけど」

「まあね。それも視野に入れてるわ」

直樹と裕子は校舎の中にいた。お互いの近況を話ながら、展示を見たり模擬店を回ったりしている。

「…あら、たいした混雑ぶりね」

裕子が足を止めて言った。
視線の先には人だかり。看板には“ナース戦士コトリン&マナリン”と書いてある。アニメ部の上映会場である。
どうやら会場に入りきらないらしく、廊下にまでいわゆるオタク系男子が溢れ返っていた。そして、会場は異様な盛り上がりを見せている。フラッシュ音も凄まじい。

「ミス斗南にはぜひ入江コトリン琴子を皆さんよろしくお願いしまーす!あ、マナリンはいいそうですから」

中からマイクを通した声が響いてきた。言わずもかな、琴子の声である。

「じゃ、最後にポーズ取ってもらいましょー!」

そして沸き上がる歓声。フラッシュ音も最高潮である。

「相原さん、相変わらずね。そこまでしてミス斗南になりたいのかしら」

裕子は呆れて言う。

「今年はミスター斗南っていうのもできて、ミス斗南とキスさせちゃうんですってね」

「…らしいね」

直樹の表情は変わらない。しかし裕子は、その声音に何となく不機嫌な響きを感じ、内心くす、と笑う。

(全く、素直じゃないんだから)

直樹がそのポーカーフェイスの下、実は琴子への独占欲を隠し持っていることは、裕子にはだいぶ前からわかっている。それは、直樹に片思いしていた頃から――。

しかし、琴子ときたら。

(まあ確かに、ミスター斗南は彼でしょうけど)

直樹ほど顔がよく、かつ学内で有名人はいない。
だから琴子は、自分もミス斗南になろうと躍起になっているのだろうけれど。

「ほんとに、相変わらず、相原さんは自分の立場がわかってないのね…」

裕子は思わず呟いた。

そう。彼女はわかっていないのだ。

ミス斗南になどならなくても、彼女は彼にとって絶対の存在なのだということを。

(ま、教えてなんかあげないけど)

裕子はふっ、とわずかに笑うと、

「さあ、次はどこに行きましょうか」

素知らぬ顔で、直樹に声をかけたのだった。


☆☆☆


こうして学園祭は過ぎて行き、迎えた最終日。

直樹はこの3日間、ホルモン焼き屋の店番をしつつ、それ以外の時間は使っていない教室に医学書を持ち込み、勉強して過ごしていた。
琴子は相変わらず大学では直樹の前に姿を現さず、ミス斗南のPRに忙しくしていたらしい。
おかげで、集中して勉学に励むことができたが――それはそれで何となく物足りなく感じてしまう直樹である。

(ったく、俺も相当だな…)

それに、直樹を放って琴子が何をしていたかといえば。

(あいつ、またナース姿でオタクどもに愛想を振り撒いてたんだろーな…)

アニメ部の上映会場での琴子を思い出すと、何やらもやもやとしたものが心に溜まっていく。

(ったく、あんなに写真撮られやがって)

しかし、今さら琴子にやめろとは言えない直樹である。

ため息をつきつつ、直樹は校舎内を歩いていた。
学園祭もそろそろ終盤、後夜祭を前に片付けが始まっている時間である。
ホルモン焼き屋が気になった直樹は、一応様子を見に行こうとしていた。

と、向こうの通路から話し声が聞こえてきた。

「あのな…わし…クリスのこと…」

金之助の声だ。

「好きなんでしょ」

言い淀む金之助に、琴子が言う。途端にわーっと騒ぐ金之助。

「……そうなんや」

金之助はうなだれ、ようやく認めた。

「金ちゃん、やったね」

琴子が嬉しそうに言う。

「でも、わし…料理人としても半人前やし、金もないし…わし、自信ないねん!」

しかし金之助は琴子に背を向けて声を絞り出すように言った。

「金ちゃん、クリスのこと、大事に想ってるんだね」
琴子は金之助の背中に語りかける。

「だけどね。クリスが待ってるのは、金ちゃんが一人前になることじゃなくて、金ちゃんの『好き』って言葉だよ」

「そんなこと…わし、わし……」

(…ふうん)

気持ちを素直に言葉にできないのは同じ、か。

直樹はそっと、その場から離れた。





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


長くなってしまったので、ここで切ります。
初めて前後編になりました。
(^^;

あの大学祭の裏側です。直樹は何をしていたのか、書いてみました。
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コメントありがとうございます
たまち様

コメントありがとうございます。
この大学祭の裏、ずっと書いてみたかったんです。
琴子に完全放置された直樹ってシチュエーションなんて、そうそうないですからね。
そうそう、直樹は琴子探していますね、きっと。放置されているからこそ、でしょうか。

ほんと、二人は何しているんでしょうか(笑)
コメントありがとうございます。
ぴくもん様

コメントありがとうございます。

イタキスって、直樹の心情とか行動がはっきり書かれていないところが多くて、それが妄想を呼ぶんだと思うんですが、このエピソードはまさにそうで、私がずっと書いてみたかったものなんです。

いつもはまとわりついてる琴子が直樹を完全放置、なんてシチュエーション、他にないですもんね。書いてる間、私も楽しかったです(笑)。

こんな感じだった、と思ってくださって嬉しいです!!
千夜夢様

コメントありがとうございます。

リンクの件も、お忙しい中作業していただいてありがとうございました。紹介文も・・・ありがとうございます!
嬉しすぎです!

こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いします。

この大学祭の裏側、すっごく書きたかったんです。面白いって言っていただけてほんと嬉しいです。
私は原作大好きなので、キャラクターがこんな感じって言っていただけるとほっとします。
後編もがんばりますね~。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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