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我らが息子に乾杯
お父さん二人の語り合い☆


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ある冬の夜――

「アイちゃん、いいかい」

入江家の重雄の部屋。
仏壇に向かって手を合わせていた重雄は、襖の外から聞こえてきた声に手を下ろした。

「ああ、いいよ。イリちゃん」

重雄の返事に、すっと襖が開き、重樹が顔を覗かせた。

「ちょっと、どうだい?」

重樹が手にした盆を重雄に見せる。その上には徳利とお猪口が二つ、それにつまみが載った小皿があった。

「いいねぇ」

にっこりと笑い、重雄は小さな卓袱台を移動させ、座布団を二人分、向かい合わせに敷いた。

座布団に腰を下ろし、お互いのお猪口に酒を酌み交わす。

「やっぱりこう寒くちゃ熱燗に限るなァ」

「ホントホント」

しばし二人、お猪口を傾け、ちびちびと酒を味わう。。

「アイちゃん」

「ん?」

「直樹が…いろいろ、すまなかったなあ。琴子ちゃんにずいぶん寂しい思いをさせて。しかも、入籍を先延ばしにしたりして」

重樹が頭を下げた。

「やめてくれよ、イリちゃん」

重雄は慌てて言った。

「直樹くんは、そりゃあもう、これまで大変な責任を背負っていたんだ。自分のことよりも、それに決着をつけるのが先だというのは当たり前だ」

「しかし…」

「それになあ、イリちゃん」

まだ少し気がすまない様子の重樹に、重雄が言葉を継ぐ。

「昨日、直樹くんが来たよ。入籍したって報告に」

「直樹が?」

重樹は驚く。

「琴子を選んだことで、親父の会社が少しでも揺るぐようなことにはどうしてもしたくなかった。だから、どうしても会社を建て直すまでは入籍することはできなかった、と…そう言っていたよ」

「……」

「男として、そうするのは当然だと俺は思う。直樹くんは、もう立派な大人の男なんだよ」

重雄はお猪口を手にし、ぐいっと飲み干した。

「いや、俺はこんな立派な息子ができて嬉しいよ」

「イリちゃん…」

重樹はしばらく重雄をみつめていたが、やがてその顔には笑顔が広がった。

「そうだな、直樹は確かに変わった。大人になったというのもそうだが…なんというのか、人間味が出てきたよ」

「ああ、それはあるかもしれねぇなあ」

笑顔で言う重樹に重雄も同意する。

「昔は何を考えてるのかわからないところがあったがなあ…これも琴子ちゃんのお陰だな。…そうそう」

そこで重樹は何か思い出したようにくすくす笑いだした。

「なんだい、イリちゃん」

重雄が重樹のお猪口に酒を注ぎながら訊く。

「いや、先月、琴子ちゃんがモデルになったキャラクターで直樹がゲームを作っただろう?」

「ああ。今すごい売れてるんだってなァ。てぇしたもんだ」

「そのゲームソフトの完成祝賀会は主要取引先の方々を招いた内々のもので、これには琴子ちゃんにも出てもらったんだがな」

「ああ。それは琴子が嬉しそうに話していたよ。直樹くんが妻だってちゃんと紹介してくれたって」

重雄は、琴子の笑顔を思い出して言った。

「そう。で、その他に、パンダイの新製品が発売されるってことで、マスコミの前で発表会をするんだよ」

「ああ、なるほど」

「広報の人間は、これはとにかく大々的にやろうってことで、発表会にも琴子ちゃんに出てほしいと直樹に言ったんだ。話題にもなるしな」

「ま、まあそうだよなぁ」

重雄は初めて聞く話に少々驚いている。

「ところがなぁ…直樹のやつ」

重樹はここで堪え切れなくなり、くくく、と笑いだした。

「初めは、完成祝賀会の日に自分は会社を辞めるから、自分はもう部外者になる。だから協力はできない、と言っていたんだ」

「はあ」

「でも、広報部長はなかなか引かなくてな。この新製品を起死回生の一手にするためにあらゆる手段を打たねばならない、と言い張った」

「……」

「広報部長は、モデルになった琴子ちゃんに出てもらって、あのキャラクターのコスプレでもしてもらえばオタク層へのアピールには持ってこいだと言ってなあ」

「コ、コスプレって…あのキャラクターの格好を琴子に!?」

重雄が目を剥いた。

「そうすれば、ゲームソフトだけじゃない。フィギュアや衣装なんかも売り出せる。そして、琴子ちゃんはオタクのアイドルとして芸能界デビューも夢じゃない。奥様がアイドルなんてすごいじゃないか、と」

「芸能界って…」

重雄は絶句している。

「わしもな、さすがにそこで部長を止めようとしたんだ。そしたら、その前に直樹がキレた」

「キレた?直樹くんが?」

「『アイドルの妻なんて俺は要らない!そのままのあいつがいいんだ!!』…とね」

「―――」

普段の直樹からは想像もできない科白に、重雄は一瞬目を見張り、そしてすぐに破顔した。

「ははっ…そんなこと言ったのかい直樹くんは」

「さすがに広報部長も引き下がったよ。とにかくすごい剣幕だったからなぁ」

重樹は愉快そうに笑い、また酒を飲み干す。

「あ、そうだ。アイちゃん、これは他言無用に頼むよ。特に、琴子ちゃんと紀ちゃんには絶対に言わないでくれ」

「ああ…それはいいが…」

こんなことを聞いたら、琴子はそれはもう舞い上がるだろう。そう思っている重雄に

「いや、実は直樹に口止めされてね。絶対に琴子とお袋には言うなって言うんだ。もし言ったら、今後会社の相談事は一切応じないって」

と重樹は笑いながら言った。

「まあ、アイちゃんには言うなとは言ってなかったから、こうしてしゃべってしまったけどな」

重樹は舌を出している。

「イリちゃん…」

重雄もくすっと笑い、重樹のお猪口に酒を注いだ。そして自分のお猪口を手にして、すっと上に持ち上げる。

「乾杯しようか」

「ん?おお、そうだな」

重樹もお猪口を持ち上げる。

「では…」

「俺たちの息子に」

二人の父親の顔に笑顔がこぼれる。

「「乾杯」」

かちん。ふたつのお猪口が音を立てた。




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


直樹のいないところで直樹を語ってみよう!ということで、お父さん二人のないしょ話です♪

「ここから、はじまる」を書いた時にコミックス読み直したら、あの完成祝賀会ってマスコミ関係いないみたいなんですよね。
でも私が広報ならプレス発表の時にもモデルに出てもらっちゃうよなあ、と思い、今回のお話ができました。
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Re: こんばんは♪
たまち様

コメントありがとうございます。

重樹さんは家庭では影薄いですねー。というか、奥さんが強すぎるのか。
社長だから、会社人間にならざるを得ないのかもしれませんが。

ちっちゃい男・直樹(笑)。
琴子は幸いにも鈍いので、それに気付かない。そして、気づかない琴子が、直樹はかわいくてしょーがないのでしょう。。。。。

この夜は確かに直樹、くしゃみしまくりでしょうね。
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Re: ジェニィ様
コメントありがとうございます!

そうですね、パパ同士の視点のお話は確かに珍しいかもしれません。
このお二人は古くからの親友同士だし、結構こうして飲んだりする機会も多いだろうなあ、と思って
こんな内緒話を書いちゃいました。

日本全国大氷河期!
ならなくてよかった(笑)。
コトリン、ヒットしたのはいいけれど、その後、琴子ちゃんになにがしかの影響が出てきたら絶対直樹は
嫌なんでしょうね。

両パパのお話、また読みたいと言っていただけてよかったです。
ちょっと地味?な組み合わせかなーと思っていたので。
また機会があったら書いてみようかと思います。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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