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君に触れたくて
前作『あなたの誕生日』の続きです。


本当はもっと早く公開したかったのですが、いろいろあってすっかり遅くなってしまいました(泣)。


だいたい、『あなたの誕生日』だって、誕生日当日のお話じゃないし(苦笑)。

で、肝心の当日のお話が1週間以上遅れて公開って……


というか、今日って、二人の結婚記念日だし……


こんなサイトですみません。
よろしければ続きからどうぞ。



... Read more ▼
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ったく……

何だって親父、今日に限って早く帰れだなんて……

俺はイライラを募らせながら、ハイヤーの後部座席に体を沈めた。

資金援助を得られることになったとはいえ、パンダイはついこの間まで倒産寸前だった。
株価も上昇し、安定してきたとはいえ、まだまだやることは山積している。
おまけに、もう10日後に迫った結婚式。それに続く新婚旅行。
お袋に無理やり設定されたこれらのために、最近の俺は文字通り目の回る忙しさだった。
朝早く出勤し、帰りは深夜。
今日だって、まだまだ進めておきたい仕事があったのだが、

『今日くらいは早く帰りなさい』

なんて、数日前職場復帰したばかりの親父が言い出して、俺はほぼ強制的に会社から出されてしまった。
まあ、早いと言っても定時はとうに過ぎた時間ではあるんだが。まあ、いつもよりは2、3時間くらいは早いか。

しかし、あの親父の様子……何だか不自然だったな。おそらく、お袋の差金だろう。
俺に言っても埒が開かないと思って、親父に言って俺を早く帰らせたんだな。
ったく、お袋のやつ、今度は一体何を考えてるんだか……


まあ、お袋のことだ。

「仕事にかまけて琴子ちゃんを放ったらかしにして!」

なんて怒ってるんだろう。





琴子――

仕事中は、頭から追い出している顔が目に浮かんでくる。

つい数日前、金之助と結婚する、って聞いて、どうしてもそれが許せなくて。
他の男のものになるなんて、耐えられなくて。
衝動的に、この手に捕らえた存在。

この俺が、あんなことをするなんてな。

でも、たとえ会社が資金援助を受けられなくなっても、誰になんと謗られようとも、どうしても失えない。そう、気づいたから。

だから、あの雨の日、俺は考えるより早く走り出したんだ。お前を手に入れるために。

この俺にこんなことさせるなんて、ほんと、お前くらいだよ、琴子。



――だけど。

この数日間、俺はほとんど琴子と会話をしていない。
俺が仕事でほとんど家にいないせいで、すれ違いの生活が続いている。

たまに朝、出勤するときに顔を合わせることはあるけど、それも時間がなくてほんの一瞬。
昨日の朝も、ちょうど出勤するタイミングであいつが二階から降りてきて、とりあえず会うことはできたけど、それも二言、三言言葉を交わしただけ。


『行ってらっしゃい、入江くん』

玄関で俺を見送る琴子は、笑顔を浮かべていたけれど、その瞳の中には少し切なげな光が浮かんでいた。

ったく、そんな目で見るなよ。会社に行きたくなくなるだろうが。
俺は振り返らず、わざと素っ気ない態度で家を後にしたんだ――



一度は、自分の気持ちに気づかず、失いそうになっていた。
だからこそ、今、もっとあいつをそばに感じていたい。

本当に俺のものなんだと……そう、実感したい。



それなのに。

あーっ、こんなことになっているのも、全部お袋のせいだ。
お袋が結婚式だの新婚旅行だのとこんな急にセッティングしなければ、さすがにここまで忙しくはなっていなかったはずだ。

あいつに触れたくても触れられない、こんなことには――




「社長代理。着きましたよ」

「え、……ああ」

気がつくと、車は家の前に停まっていた。俺は運転手に促され、車を降りる。

外に出た途端、ひゅうっと乾いた風が通りすぎていった。
そういえば、もう11月だもんな。気づかない間に、すっかり肌寒くなっている。

時間は……10時過ぎ、か。
まだ、起きてるよな……

俺は、素早く門を明け、玄関へと向かう。足取りが、自然と速くなる。


そして、玄関のドアを開けると。

「おかえりなさい!入江くん」

俺を出迎えたのは、琴子の明るい笑顔だった。
それは、昨日の朝俺を見送った時とは違う、なんの曇りもない表情で。

「……ただいま」

その満面の笑顔を何だか眩しく感じつつ、俺は靴を脱いで玄関に上がる。

「はい。カバン。貸して」

にこにこしながら、琴子は俺の持っている鞄に手を伸ばしてくる。

「あ、サンキュ」

少しこそばゆい気持ちになりながら鞄を渡すと、琴子は嬉しそうに受け取り、廊下を歩く俺の後をついてきた。


――ふふっ。何だか奥さんみたーい。

後ろから、そんな呟きが聞こえてくる。

奥さんみたいって……なるんだろーが、俺の奥さんに。もうすぐ。

浮かれたようなその様子に、思わず笑いがこみ上げ、あわてて堪える。




リビングの扉を開けると、中には誰もいなかった。

裕樹はもう寝ているんだろうが……お袋はどうしたんだろうか。
いつもなら、まだ起きてテレビでも観ている時間だが。

俺がその疑問を口にしようとした時。

「あの、入江くん。お腹空いてない?夕飯、ちゃんと食べた?」

琴子が少し気遣わしげに訊いてきた。

「いや、大丈夫」

今日は主要取引先との会食があった。親父にいろいろ言われながらも、早く帰れなかったのはこのためだ。

「そっか。ねっ、じゃあコーヒー飲まない?」

俺が答えると、琴子がまだ浮かれた様子のまま、そう言い出した。

「あたしも飲みたいって思って、ちょうどお湯沸かしたところだったの。だから、一緒に飲もっ」

そんな琴子の様子からは、少しでも俺と一緒にいたい――そう思っているのが伝わってくる。

「じゃ、たのむ」

「うん!じゃあ、ちょっと待っててね」

俺の返事に更に笑みを深め、琴子はぱたぱたとキッチンの方へと向かっていった。



琴子の姿が見えなくなると、俺はソファに腰を下ろし、息をついた。

たったこれだけ、琴子の顔を見て、会話をして――それだけで、体の奥に溜まった疲れが取れていくような気がする。


――そう。
一緒にいたい……って、
そう思っているのは、お前だけじゃない。




程なくして。

「お待たせ~」

湯気のあがるマグカップが2つ載った盆を持った琴子がキッチンから出てきた。

俺は、カップを受け取ろうと琴子の方に体を向ける。

しかし。
琴子はカップをこちらに運んでは来なかった。笑顔でこう言ったのだ。

「ね、入江くん。こっちに来て」

そう言うなり、琴子は盆を持ったまま、リビングのドアに向かっていく。

「あたしの部屋で飲みながら少しお話しようよ。ねっ」

屈託なくそんなことを言われ、俺の思考ははた、と止まってしまった。


琴子は真っ直ぐ、俺を見つめている。
その表情は、俺と会えたことが本当に嬉しくて仕方ない、そんな顔。

――しかし。
こんな時間に、部屋に俺を入れようと……?


「こうして、入江くんにちゃんと会えるの久しぶりだし。少しお話したいなって思って」

内心戸惑う俺を他所に、琴子は明るい表情のまま、続ける。

「あ、でも入江くん、疲れてるよね?ごっごめんね、こんなこと言って」

黙っている俺に勘違いしたのだろう、琴子が慌てたように言い繕った。

「……いや。大丈夫だよ」

「本当?じゃ、来てきて!」

途端にまた輝くような笑顔になって、琴子はドアを開け、リビングを出た。
俺は、その後を追う。







たん、たん、たん。

階段を昇る琴子が刻む、弾むような足音。

そんな音までもが、浮かれるような軽やかさだ。

どこまでも、琴子は無邪気で。
ただただ、俺と一緒にいたい――純粋に、そんな気持ちでこんなことを言っているんだろう。


だけど、俺は――





「はい、どーぞっ」

2階の自室の前に着くと、琴子は部屋のドアを開けた。促されるまま、俺は部屋に入る。


この部屋に入るのは、いつ以来だろうか。
相変わらずのリリカルな色彩の部屋。
でも、何故か今日は違って見える。

琴子は運んでいた盆を机の上に置いていた。

「よかった。入江くんが今日いつもより早くって……っ」


琴子がそこまで言うのが早かったか、俺の腕が琴子の体に回るのが早かったか――


琴子の言葉が、不意に途切れる。


俺は背後から琴子を抱き締めていた――強く強く。

ずっとずっと、触れたかったぬくもり。
柔らかくて、ふわふわで。
どことなく甘い香り。
俺を誘うように。

俺は、そっと琴子の首筋に顔を寄せる。



「い、入江くん……」

琴子の表情は見えない。でも、その耳は真っ赤だ。顔もまた、同じだろう。
俺は更に力を込め、琴子を腕に閉じ込める。
その感触を、確かめるように。



「あ、あの、入江くん……」

俺が何も話さないでいると、琴子がおずおずと口を開いた。

「……何?」

琴子の耳許でそっと囁く。

「あ、あのね……あのね」

「うん」

「お、おかえりなさい……」

「それ、さっき聞いた」

「あ……そうね」


さっきまでの屈託のなさはどこへやら。琴子はすっかりおとなしくなってしまった。

思わずこうしてしまったけれど……
でも、やっぱり顔が見たいな。
俺は腕の力を弱めると、琴子の両腕を掴み、こちらに向かせた。

予想通りの真っ赤な顔。俺はつい顔が緩みそうになる。

「あ、あの……あのね」

俺に真正面から見つめられ、琴子は更に言葉に詰まったらしい。何とか言葉を探していたが、ふと思い出したように一瞬目を見開き、それから微笑んだ。

「入江くん。お誕生日おめでとう!」

腕の中で、琴子が俺を見上げて言う。
それはもう、最高の笑顔で。



「ああそうか。俺、今日誕生日だったんだな」

今日――といってもあと1時間ちょっとだが。

「えっ入江くん、まさか忘れてたの?」

琴子は驚いたように目を見張る。

元々自分の誕生日なんて、ずっと嬉しいなんて思ったことがなかった。毎年、どうでもいいとすら思っていた。

それに加えて、今年は毎日こんな忙しさだ。全然気づかなかった。
だからお袋は、今日俺を早く帰らせようとしていたんだな。


「だから、今日のうちに入江くんに会って、ちゃんとお祝いしたいなって」

そう言うと、琴子は俺の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きついてきた。
ふわりと、シャンプーの香りが俺を包む。

「よかったあ……ちゃんと言えて」

心からほっとしたような、幸せそうな――そんな笑みを浮かべて。

腕の中から、琴子が俺を見つめる。
向けてくる視線が、たまらなく可愛くて、……愛しくて。
目が、離せない。

「そっか」

俺は、腕の力を緩め、琴子の顔を覗き込んだ。
近づく俺の顔に、琴子の瞳が大きく見開く。

「じゃあ――もらおうかな。お祝い」

「――え?」


琴子の頤に手をかけ……そして。

「ん……」


何日かぶりに重ねた唇は、柔らかくて、どことなく、甘い。
まるで、不可抗力に囚われていく。


ああ……――
何日かぶりに味わう、この感触。
この甘い香り。
俺を惹き付けてやまない。
自然と、口づけはどんどんと深くなる。

「……っ」

何度も繰り返されるキスの合間に、琴子が吐息を漏らした。

潤んだ眼差し。
切なささえも含んだ、そんな表情。

それは、今まで見たことのない琴子で。

俺は、そんな琴子がもっと見たくなって、顔中にキスの雨を降らせる。

額、まぶた、頬……

ふと、耳に口づけた時。

「あっ…」

琴子が、かすかにそんな声を漏らした。
そんな声もまた、聞くのは初めてで。



俺は、我を忘れそうになる――






「琴子……」

体の奥底から、広がってくる熱。

琴子を、俺だけのものにしたい。
そんな欲望が、どうしようもなく湧き出てくる。

そのまま、押し倒してしまいたい衝動。

駄目だ。
もう、止められない……



俺が、帰ってきた時から揺さぶられ続けた理性を、ついに手放そうとした、その時。



……………………
……………………
……………………



すんでのところで、気がついた。


じっと、こちらを見つめる視線に。
俺の背中に向けられた、これは――

俺は、そっと、振り返る。ドアの方に。

そこで見たのは。

僅かに開いたドアの隙間。
そこから覗くのは、カメラのレンズ――!


――お袋っっ!

弾かれたように俺は琴子から体を離し、ドアへと駆け寄った。


「ビデオカメラなんて回してんじゃねーよっ」

「あーら、ごめんなさい。ドアがちょっと開いてたもんだから、つい」

俺がドアを開けても、全く動じずにそんなことを言うお袋。


ドアがちょっと開いてた――?
そんな迂闊すぎることって……
いや。
閉めたの琴子だったな、確か。
だったら……ありえるかもしれない。

しかし、ついって何だよ、ついって。どー見ても確信犯じゃねーか。

姿が見えないからどうもおかしいと思っていたら、ずっと撮ってたのかよ。ったく……

「お、おばさん……?」

突然の出来事に、琴子は目を白黒させている。

「ほら、もう撮るんじゃねーよっ」

「あーら、気にしないで続きすればいいのに。ねっ、琴子ちゃん」

「いえ、あの……///」

「お袋っ!」

「はいはい。じゃ、おやすみなさい。いい夜を、ね」

最後にパシャッとデジカメのフラッシュを光らせると、お袋はふふっと不敵に笑い、部屋を出ていった。

「いい加減にしろっ」


俺はもう、怒りを通り越して脱力してしまう。
なんというか……これが自分の母親かと思うと……

琴子は呆気に取られたままだ。
しーん、と部屋に沈黙が訪れる。


あーもう。
なんだか、完全に気が削がれた……


「じゃ、俺、風呂入るから」

俺は何とか気を取り直し、そう切り出す。

「う、うん」

俺の言葉に、琴子ははっと我に返った。

「あ、あの……入江くん。これ」

琴子が机の上に置かれたマグカップを取り、差し出してくる。

「よ、よかったら飲んでね」

「ああ、ありがとう。じゃ、おやすみ」

「う、うん。おやすみなさい」

少しぎこちない琴子の笑顔を背に、俺は琴子の部屋を出た。そのまま階下に向かう。

一口、もう冷めてしまったコーヒーを口にすると、ほろ苦い風味が口内に広がった。
俺は、深く、ため息をつく。

はあ……この家じゃ、どこに目があるかわかったもんじゃねえ。

結婚式まで、あと10日か……
結婚式のあと、それから新婚旅行。
そこでは、絶対邪魔は入らないはず。

そこで心置きなく過ごせるように、明日から仕事を片っ端から片付けてやる。


俺はそう決意を新たにすると、まずは疲れの溜まった体を休めるべく、風呂に向かった――





☆おまけ☆


あー、びっくりした。
おばさん、まさかあんなことするなんて。


でも……

すっごくドキドキしちゃった……
入江くん、何だか見たことない顔して、あたしを見て。
切ないような、それでいて少し怖いくらいに熱い視線。
初めて見るあんな表情に、あたしは一気に緊張しちゃって。
でも、それでいて目を逸らすことができなくて。
ずっと見つめてほしい。
離さないでほしい……って、そう思った――


一応、ベッドに潜り込んだけど、まだ全然寝られそうにない。
まだ、あの入江くんの顔が、目に焼き付いてる。




あ、そうだ。
緊張したのは、このせいもあるよね。
あたしはパジャマの襟元から、ちょっとだけ中を覗き込む。



…………//////


この間、理美とじんこに選んでもらった下着。
これを買った後、ちゃんとしたプレゼントも買ったんだけど、でも。

『ま、これもいいけど、この日はやっぱりあんたがプレゼントなのよ』

『入江くん、絶対喜ぶって』

なんて、二人に言われて……。


入江くん、こんなんで喜んでくれるのかな……
まあ、でも。
結婚式終わったら、きっと、また…………



…………
…………
…………
…………
…………//////



そ、それまで、心の準備、しとこう……

あの、入江くんの視線を受け止められるように。

今はまだ、一緒にいるだけで、言葉を交わすだけで……幸せで。

今日だって、入江くんがいつもより早く帰ってきて、すっごく嬉しくて。
二人でお喋りできるって、それだけで舞い上がっちゃったんだよね。

だけど。
あたしも、もっと、入江くんに近づきたい。
もっともっと、入江くんをそばで感じたい。
入江くんに――触れてほしい。



入江くんが、大好きだから。


あ、明日はエステに行く日だ。頑張らなきゃ。
それから、理美に教わったバストアップ体操も。

入江くんに、少しでも――綺麗だって思ってもらえるように。

うん。
明日も、頑張ろっ!


そんな決意を新たに、あたしはその日、眠りについたのでした――





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


琴子を後ろから抱き締める直樹の図、が書きたくて☆

直樹さん、さぞや翌日から仕事に気合い入ったでしょうね……
まさか、新婚旅行の最終日までオアズケ食らうとも知らず(笑)。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title
照れて、顔真っ赤な、琴子ちゃんも、かわいいけど、入江君も可愛いよね。v-10
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プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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