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雪の日の過ごし方
雪が降ったわけでもないのに(私は関東在住)、何故かこんなお話ができました……
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「わあ、雪だあーっ」

そんな歓声が聞こえて、俺は目を覚ました。

朝か…今、何時だ?
今日は大学は休み。久々にのんびりしようと思っていたのに…ったく。
まだ少し重い目蓋を開け、横を見やる。
声の主は布団から出て、パジャマ姿のままベッドに膝をついていた。そうしてわずかに身を乗り出し、カーテンの隙間からヘッドボードの上の位置にある窓の外を見ているようだ。

「…雪?」

俺が呟くと、琴子が振り返った。

「あ、入江くん。起こしちゃった?」

起こしちゃったも何も…あんな大声出しといて何言ってんだか。

「ね、ほら見てみて。すごい積もってるよ」

眉間にしわを寄せる俺の様子にも気づかないのか、琴子の声は弾んでいた。

…そういえば昨日の天気予報で、これから都内でも大雪が予想されているから注意するよう呼び掛けていたな。

上半身だけ体を起こして布団から出ると、途端に冷たい空気が体を包んだ。道理で雪が降るわけだ。寒い。

俺は琴子の後ろから窓の外を見た。

「…すげぇな」

予想外の風景に、俺はそれしか言葉がなかった。

今は一体何時頃なんだろう。薄暗い空は、灰色の雲が広がっている。
そして、見慣れた町並みは、一面雪に覆われていた。それも、かなり分厚く。

「ね、すごいでしょう。東京でここまで降るのってなかなかないよね」

「まあな」

しかも。

「まだ降ってる。いつまで降るかなあ」

今も、まだ静かにしんしんと雪は降り続いていた。
雪に覆われ、いつも閑静な住宅街がよりいっそう静けさを増している気がする。

「昨日の天気予報では、朝まで降るって言っていたし、この様子だとまだしばらく降りそうだな」

「そっか…」

俺の言葉に、琴子はそう言うと、何やら考え込んだ。

「あの時と同じくらいの雪かなあ」

ぽつりとそんなことを呟いたかと思うと、うふふ、と笑っている。

――あの時?

「…ああ、お前が胃痛起こして俺んち来た時な」

俺が言うと、途端に琴子は慌てた。

「えっ、やだ聞こえたの」

「お前の独り言がでかいんだよ」

「だって、何だか雪を見てたら思い出しちゃって…あの時のバレンタイン」

琴子は懐かしそうに言った。

…そう。
ここまでの雪が降ったのは、あの時以来だ。
俺が独り暮らししていた頃、大雪で帰れなくなったこいつをマンションに泊めた、あの日。

あれから、もうすぐ2年になるのか…

俺がそう思い起こしていると。


くしゅん!
琴子がくしゃみをした。

「ったく、そんな格好でいるからだ」

「だって~」

「風邪引くだろ。ほら来い」

俺は琴子の腕を引っ張って抱え込むと布団をかけた。
琴子の肩は少し冷えている。俺は温めるようにその肩を包み込んだ。

「えへへ、あったかーい」

腕の中に収まった琴子が、俺を見上げて笑う。

「やっぱり、あの時とは違うね」

そう言って、俺にぎゅっと抱きついた。

「今は……入江くんがこんなに近い」



あの時――バレンタインデーの夜。

あの時は予想外にこいつを家に泊める羽目になって、…らしくなく動揺して。
それを何でもないように押し隠していたっけ。

でも、今は。
一つのベッドの中にいるのは同じなのに――しかも、あの時よりも、広いベッドの中にいるのに。
俺たちの距離は、あの頃よりずっと近くなった。

こうして二人でいることが、自然で、しっくりきて。何だか落ち着く自分がいる。

「ま、確かにあの時とは違うな」

懐かしく思い出しながら、俺は言った。

「お前の寝相もだいぶよくなったし。蹴られることもまあ減ったし」

「えっ…まだあたし、入江くん蹴っちゃったりするの!?」

実際は、今は寝ている琴子に蹴られることはない。
…今は、いつも俺が腕の中に閉じ込めてるからな。…こんな風に。

「あの時は、チョコ渡せなかったんだよね…その次の年も」

ふと、琴子が少し残念そうに言った。

「そういえばそうだな」

その次の年――去年は、何を間違ったのか、こいつの手編みのマフラーはアニメ部の奴に渡ったんだったな。
ったく、何やってるんだか……今となっては、こいつの作ったものを他の奴が身に付けていると思うと、何だか気分が悪くなる。
まあ、あいつの手に渡ったのを知っていながらそのまま放置したのは俺なんだが。

「今年はちゃんと渡したいなあ…」

「いいよ。無理しないで」

「え、でも結婚して初めてのバレンタインデーだし」

半ばむきになったように言う琴子。でも。

「…マフラー、間に合いそうにないんだろ」

「何で知ってるの!?」

…バレバレなんだよ。
この間、偶然見つけたんだが、まだまだ半分にも満たないような長さだったな。

恐らく取り掛かるのも遅かったんだろう。入籍するまでバタバタしていたし、後期試験もあったし。
この分じゃ、俺がこいつの編んだものをつけられるのはまだまだ先になりそうだな。

まあ、気長に待つけれど。…先は長いから。

「じ、じゃああたし、今から頑張って編み物…」

「いいよ、それは」

バレているならと開き直ったのか、布団から出ようと体を起こしかけた琴子を俺は捕まえた。

「でも、確かにこのままじゃバレンタインに間に合わないし」

「いいって」

琴子を引き留めていたら、欠伸が出た。まだ眠い。

まだ俺から逃れようとしている琴子をしっかり抱え込み、腕の中に抱き締める。ぎゅっ、と腕に力を込めると、琴子はようやくおとなしくなった。

そうだ。
こんな寒い日に、しかもこんなに早い時間にそんなことしなくていい。

――それよりも。

せっかくの休日なんだ。今はこうして、お前を腕に抱いて眠りたい。
この上なくあたたかい、このぬくもりを。


あの頃とは違う、今の俺たち。
こんな大雪の日は、堪能したっていいだろう――?



程なくして。
俺たち二人はまた、いつしか再び眠りに落ちていた。

誰よりも近くで。
お互いを、あたため合いながら――





☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


新婚時代、バレンタイン数日前のお話です♪たまに、甘いの書きたくなるんですが、いかがでしたでしょうか…?

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Re: マロン様
コメントありがとうございます!


> 雨を見ると、あの日、雪を見ると、あの日って、感じでしょうか(笑)。
>

ほんと、そうですよね。何年経っても記憶を思い起こしそう。


雪のバレンタインの日の対比が、いいって言っていただいて嬉しいです。萌えました?


確かに、あの時からは、考えられないくらい二人の関係は変わりましたね。
お互いに必要不可欠な二人です。(*^^*)
Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!


うちの直樹、スマートですか?
私の中では、このお話の前の夜は直樹さん、琴子を堪能したんじゃないかと思ってます(笑)。

>いつまでも待つのが直樹の楽しみなのかもしれません。


直樹は頑張る琴子を見てるのが好きですよね。それが自分のためであれば尚更です。
決して上手とはいえないマフラーを待ってる直樹…それだけで愛を感じます。(*^^*)
プロフィール

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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