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Over the distance
琴子ちゃん、Happy birthday!!


何とか滑り込みセーフ、お話を更新できました(汗)。あまりに時間がなく、携帯にて更新しております。


一応、時系列的には、以前書いた『琴子の愛妻特急便』の続きとなります。



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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


研修医の生活は、本当に暇がない。
不規則な勤務形態で、何日も帰ってこれない日もある。
たまの休みは、泥のように眠る。そして目が覚めたら家事に明け暮れる。
今は独り暮らしの俺。
今日はまさに、そういう日だ。


昨日、2日ぶりに帰って来たからな…。洗濯物が溜まり、部屋も少しだが散らかっていた。これらを片付けるのが、休みの日の日課だ。
部屋の片付けをしていると、洗濯機が止まった。俺は洗濯かごに洗い終わった衣類を入れると、ベランダに向かう。

ベランダに出ると、からりとした心地好い風が肌に優しく吹き付けた。
この前まで、朝でもうだるような暑さだったのに――こうして、季節はいつの間にか巡っている。


――最近、涼しくなったからね。風邪引かないように、気をつけてね。


先ほど聞いた留守電のメッセージが、ふと頭に浮かんだ。
留守電の録音時間を気にしつつ、吹き込まれたあいつの声。
それは、単に俺の身体を心配しているだけじゃない、どこか切羽詰まった切なさが滲み出ていた。

ったく……
そんな声を録音するなよ。そんな声を聞かなくったって、お前の気持ちなんか充分すぎるくらいわかってる。
はあ、と溜め息をつきつつ、俺は洗濯物を干し始める。

数日前まで、ここは本当に賑やか…いや、うるさかった。
俺が急に夏休みを取ることになり、慌てて課題を終わらせてやってきた琴子。それから琴子の夏休みが終わるまで、ここで二人だけで生活をしていた。

『入江くんは忙しいんだから!家のことはあたしに任せてね!』

張り切った琴子は、とにかく俺の世話を焼きたがった。
まあ、そこは琴子のこと。掃除をしようとすれば、ものを引っくり返して逆に散らかしたり。
料理をすれば失敗の連続。生煮えの煮物に、べちゃっとした炒めもの。

騒がしくて、相変わらず俺のペースは乱されっぱなし、なのに。それに妙に落ち着く自分がいて。
それが、今は。

静かな――静かすぎる部屋。
不在の在を感じる、というのは、こういうことなんだな。

特に、今日はあいつが東京に帰ってから初めてのまともな休みだ。仕事に行けば忙しくて、そんなことを感じる暇もないが、こうして一人、この部屋にいると、一層静けさを感じる。
そして、それを不自然に感じる自分がいる――



洗濯物を干し終わり、部屋に戻ってきた俺は、ふとそれに目を止めた。

壁に掛けられたカレンダー。
ちょうど開いている今月の日付の中、1つだけ印がついているものがある。

いや、これは印というのか…ピンクのハートと蛍光マーカーでやたらと目立つように飾り付けられている。
その日付。

――9月28日。


あと数日でやってくるその日。
あいつが来る前は、そんなものはなかった。これに気づいたのは、ついさっきのことだ。
ったく、あいつ、いつの間に……

ただ、その日付にはやたらと目立つようにはなっているものの、「何の日」なのかは書いていない。
この辺が、あいつらしいといえばあいつらしい。昔から、図々しいようでいてどこか変に遠慮することがあるからな。

しかし。
この日は、当直なんだよな……あいつだって昼間は大学だし、果たして電話で話すことができるかどうか…

そう考えて、ふと気づく。
久しぶりの休みの今日。
俺の頭に浮かぶのは、やっぱりあいつのことばかりだということに。



***



疲れた……
この2日、文字通り目の回るような忙しさだった――
元々大手術の助手として入ったことに加え、急患や急変が重なり、ほとんど寝ていない。当然、このマンションに帰ることなどできるはずもなかった。

すでにもう深夜と呼べる時間帯。眠りについた街を歩いて、ようやく帰りついたこの部屋。重い体をすぐにベッドに沈めてしまいたいのを堪え…俺は体を引きずるようにして、それに向かう。


そして、押す――電話機の録音再生ボタンを。

聞き慣れた機械音声が、今日の日付を告げた。
そして。

――メッセージ ハ 0件デス

そんな無機質の声が、他に誰もいない部屋に響いた。

……

0…

0?

しばしの間、思考が止まる。
メッセージ件数が、0…?

いつもなら、録音時間いっぱいまで使いきって、メッセージが入っているのに。
俺となかなか電話で会話ができないと、その分だけ元気を無くしていく――そんな声音のメッセージが溢れているはずなのに。

一体何故…?

何か、あったんだろうか?

疲れて眠気も催してきていたはずの脳内は、すっかり目を覚ましている。そこに、そんな考えが浮かんだ。

あいつが、俺に1日たりとも電話をかけてこないなんて、今までなかったことだ。
毎日毎日、それも1日に何度も、あいつは電話をかけては留守電にメッセージを残していた。

それなのに。あいつが…あの、琴子が。
俺がここを留守にしていたのは2日間。
その間、1件もメッセージを残さないなんて……

俺は、思わず受話器を取り、かけ慣れた番号を押そうとし…手を止めた。
今はもう真夜中。かけたところで、皆寝ているはずだ。
琴子に何かあれば、お袋が俺に知らせないわけがない。
そうだ。そのはずだ。
琴子だって、今はもう大学が始まっている。忙しくてこちらに、電話をかけるどころではなかったのかもしれない。
俺は冷静に考えて、受話器を置いた。
とにかく、今日は休もう。
明日もまた、仕事だ。大手術の助手に入ることになっている。
俺はどこか釈然としないながらも、着替えを取りに行くべく、立ち上がった。



***


それからまた、2日経って――

俺はまた、前回帰った時と同じように重い体を引きずるようにして、マンションの自室に辿り着いた。
あれから、よく眠れないうちに、急変があったとの病院からの至急の電話。俺は早朝から病院へと向かうことになった。
ようやく、その急変の患者の容態が落ち着き、こうして帰って来れたのだが――


――メッセージ ハ 0件デス


2日前と同じように留守電の録音再生ボタンを押すと、またもこうしたメッセージが流れた。

また、0……まだ、0…?
ったく。何なんだよ。

苛立ちのような、憤りのような、…不安のような。
何とも言えない、そんなものがない交ぜになった感情が浮かんでくる

だって、今日は……

カレンダーにつけられた、あの印に目を走らせる。

そして…さらに、俺は掛け時計に視線を移した。それは、2本の針がちょうど重なる瞬間だった。


俺は、受話器を取り上げた。
迷わずに、昨日押そうとして押さなかった番号を押す。

TRRR…………

TRRR…………

呼び出し音が繰り返される。それは、何ともまどろっこしく、長く聞こえた。


不意に呼び出し音が途切れ、俺はひそかに息を飲む。


――も、もしもし…

「………」

受話器の向こうから聞こえてきたのは、確かに琴子の声だった。
明らかに元気のない、沈んだ声だが間違いない。
ここ数日、聞いていなかったこの声。


――もしもし?もしもーし?

何も言わないでいると、琴子が不審に思ったのか、訝しげに呼び掛けてくる。

俺は、そっと受話器に唇を寄せた。

「琴子」


――……………


返事はない。
その代わりに、受話器の向こうから息を飲む気配が伝わってくる。

「琴子?聞こえてるんだろ?」

そんな反応が何だか可笑しくて、俺は思わず笑みが零れた。


――い、い、入江くん……?

ようやく聞こえた琴子の声は、信じられないといわんばかりに恐る恐る発せられたものだった。

「ああ」

――い、入江くぅーん…あ、あたし

俺の返事に、琴子はそこまで何とか言うと、わあーんと泣き出した。

――い、入江くん入江くん!ホントに入江くんだよ、ね…ああ、よ、よかったよぉーっ

もう、ものすごい号泣だ。

「何泣いてんだよ」

呆れた風な口調で言いながらも、俺は内心ほっとしていた。

――だ、だって……


ぐすっと鼻を啜りながら、琴子は話し始めた。


――あ、あたし……今日…今日だけは、やっぱり入江くんと電話で話がしたくって。留守電クンとじゃなく、ちゃんと入江くんと話がしたかったの

「…ああ」

――でも、入江くんはすっごく忙しいし…この日だって、そんな暇ないかもしれないし…そんなことをお義母さんに言ったら、『それは、琴子ちゃんの方がいっつも電話しちゃうからいけないのよ!しばらくはこっちから電話するのはやめて、ちょっとお兄ちゃんを慌てさせちゃいなさい』って…

「………」

どうもおかしいと思ってたら、お袋の差し金だったのかよ……ったく。


――あ、あたしも…最近、も、もしかしたらあんまり留守電のメッセージ入れるのって、うるさいかなあって思って…入江くんに、しつこいとか、めんどくさい奴って思われたくない、し……

そんなこと、考えてたのかよ。ったく。

――でもでも、何日か電話しないでいたら、何だか不安になってきて…い、入江くんがあたしのこと忘れてたらどうしようとか、色々考えちゃって…

「ばーか」

俺は、泣きながら途切れ途切れになる琴子の言葉を遮った。

「お前のことなんて、ずっと前からよくわかってんだから……今さらそんな遠慮してんじゃねーよ」

――い、入江くん……

琴子の声が、いよいよ涙声になる。

ったく、馬鹿な奴。
でも。
そんなところまで俺は、分かりすぎるくらい分かっていて。
そして、それが、自分でも不思議なくらい放っておけなくて……愛しくて。

そんな気持ちが、体の奥底から沸き上がってくる――

「誕生日おめでとう…琴子」

沸き上がる想いに身を任せるように、俺はそんな言葉を唇に乗せる。
そう。今日は、9月28日。琴子の誕生日だ。

すると――

ずびびーーーっ!

受話器の向こうから、そんな盛大な音が聞こえた。

…おい。もしかしなくても、この音は。

――うー…、い゙、い゙りえくぅん…ごめ…、ちょっともう、久しぶりに入江くんの声聞いたら涙止まらなくって…今、何か言った…?

しゃくりあげながらそう言う琴子の声が、やっと聞こえてきた。

――あっ、あれ?もうティッシュないかも…ご、ごめんね入江くん、ちょっと待って

「………」

思わず固まる俺を他所に、そんなことを言いながら、琴子の声が少し遠くなった。
どうやらティッシュを探しに、少し電話から離れたらしい。

ホントに、こいつは――


――ごめんね入江くん。もう大丈夫だから…って、何笑ってるの?

「何って、お前…」

ようやく電話口に戻ってきた琴子。
きょとんとした表情が、見えなくても目の前に浮かんでくるようで、俺は込み上げる笑いを押さえることができない。

あんな絶妙なタイミングで盛大に鼻をかんだことにも。
お前の留守電メッセージがなくて、俺がどんな感情になったかなんてさっぱり気づいていないことにも。

俺は今、笑いを止められそうにない――


そして、気づく。
こうして、俺は毎日の激務から癒されているんだということに。
こうして、俺の様々な感情は、いつだってこいつに引きずり出されるんだということに。

遠く離れていても。
それは、ずっとずっと、変わらないんだ。

何よりも、お前が俺を支えてくれるんだから――


――あ、入江くん、しばらく電話してなかったから、話したいこといっぱいあるんだけど…時間ない、よね…?

「いや。聞くよ」

俺だって、しばらくぶりに、ゆっくりお前の声を聞いていたいんだ。

そして、その夜。
俺は、琴子のとりとめない話に耳を傾けながら、ふっと疲れが癒されるのを感じていた――




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


そんなわけで、どうにも甘い雰囲気にはなりきれない、当ブログのイリコトです。すみません…
まあ、琴子ちゃんが直樹の「誕生日おめでとう」を聞くのは、やっぱりあのホテルの一幕であってほしかったので。

甘い素敵なお話は、他の素敵サイト様にお願いしたいなと思います。



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Re: マロン様
コメントありがとうございます!

いえいえ、お話自体がほんとに当日ぎりぎりでしたので、コメントは間に合わなくて当然です。
こんなへっぽこサイトの更新にいち早く気づいていただきありがとうございました!
返信も遅くなってしまい、申し訳ないです・・・


琴子の留守電メッセージが途絶えるということは、直樹にとってかなりダメージになったんじゃないかと思います。
特に、夏休みが終わって琴子が帰ってしまってから日が浅いですから、余計ですね。

この頃の二人は、お互いにどんなに必要としているかを電話の声を通して再認識している、そんな感じですよね。 




Re: たまち様
コメントありがとうございます!


このお話、甘い雰囲気と言っていただいて嬉しかったです!
離れ離れではあるんだけれども、だからこそお互いを想う気持ちが募り、たとえ電話を通してでもお互いの声に癒される・・・
そんな二人を書いてみたかったので。

仰る通り、直樹って、自分の感情を表に出さない(出せない)からこそ、よけいにそれが心の中で大きくなってしまうんでしょうね。
本当に、琴子に関してだけは自分の心をはかりきれないのか、見通しが甘すぎですね。

そんな時こその紀子の暗躍!(笑)
確かに、これまであんなにメッセージが来ていたのに、突然ゼロって・・・留守電クンもびっくり!!

この時期だからこそ、とにかく琴子がいないことで不安定になって、いつもならお見通しの紀子のたくらみにも気付かなかった直樹でした☆
 (*^_^*)
Re: りょうママ様
コメントありがとうございます!

返信が遅くなりまして、申し訳ないです・・・

直樹さんが神戸に行っている頃って、原作に書かれていないので妄想の浮かぶところなんですよね。
私、自分が遠恋をしたことがないせいか、どうもこのシチュエーションに憧れるのかもしれなくて、けっこういろいろと
妄想してしまうんですよ。

確かに、その日が休日なら、紀子ママは琴子を神戸に行かせているでしょうね。
琴子も遠慮しつつも、直樹会いたさに神戸にまっしぐら!っていうシチュエーションもありそうですね。

こういうお話も書いてみたら楽しそうですね。
(*^_^*)
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!

返信が遅くなってしまって申し訳ないです・・・

こういうことを繰り返しているうちに、直樹は東京に帰りたくなっていったんでしょうね。
電話で、琴子の相変わらずな要領の得ない話し方も、たとえ盛大に鼻をかんでいても、いとしさが込み上げて来たんじゃないかと。(笑)

直樹にとって、琴子は本当に凄い存在で、唯一無二なんですよね。
そのことを、離れてみて今まで以上に直樹は実感していることでしょう。

紀子の作戦だったことは、琴子のいない寂しさによっていつもらしくなく気付かなかったんですね。
だからこそ、本当にしゃくだったしょうね。

でも、その作戦に珍しく乗っかろうとするくらい、遠く離れた琴子が恋しい直樹です。

Re: heorakim様
コメントありがとうございます!

楽しみにしていただいて嬉しいです!本当に最近、なかなかお話が更新できなくて申し訳ないところではあるのですが・・・

直樹は自分から神戸と東京、琴子と離れることを選択したわけなんですが、まさかここまで琴子がいないダメージが深いとは思っていなかったと思います。
自分から言い出したから耐えるしかない直樹。いつも、自分の心の中を把握しきれていないんですね。

heorakim様も、これからの季節、体調に気をつけてお過ごしくださいね。
Re:ののの様
拍手コメントありがとうございます!
相変わらず返信遅くてごめんなさい。

はい、何とか当日に間に合いました~(汗)。ののの様は0時アップ素晴らしいです!

やっぱり神戸編、好きですか?私もです!
に会えなくて寂しい直樹を妄想すると、何だか萌えるんですよね…やっぱり私もSでしょうか(爆)。

そんな直樹をいじめるべく、留守電メッセージゼロ作戦、敢行です!
これで、あのいっぱいになった琴子のメッセージに、普段自分がどれだけ癒されているかを実感したでしょうね。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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