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Unlimited
なかなかお話を更新できずにおります・・・

お話はなんとなく書くことができても、いろいろ修正したりする時間が持てず、公開できませんでした。

一応、時系列的には前作「天才医師の休息」の後のお話になりますが、ちょっと、雰囲気は違うかもしれません。

よろしければ、つづきからどうぞ。

... Read more ▼
・・・・・・・・・・・・・・・・・・


玄関のドアを開けると、歓喜の鳴き声と共に、大きな塊が飛び付いてきた。

「ああチビ、久しぶりだな。お袋はいないのか?」

名前とは裏腹の大きな体を撫でてやりながら、俺は玄関に入る。

「ああ、ちょっと待てよ。少し時間はあるから、後で遊んでやる。とりあえず荷物を置かせてくれ」

ちぎれんばかりに尻尾を振ってしきりに飛び付き、甘えてくるチビにそう言うと、俺は靴を脱ぎ、家に上がった。家の中は静まり返っている。俺は荷物を持ち直すと階段を昇った。

2ヶ月ぶりの我が家。しかし、今はチビの他は誰もいないようだ。いるとしたらお袋だけだったんだが、出掛けたんだな。


2ヶ月前、俺は病院の階段から落ちて足の骨を折る怪我を負い、入院した。
今日ようやく退院し、妙な見送りをされつつこうして帰ってきたのだった。
全く……勤務時間中にあんなことして騒いでんじゃねーよな、あいつは。
その様子を思い出し、俺は思わず苦笑しながら寝室のドアを開けた。

「………」

途端に目に飛び込んでくるリリカルな色彩。お袋の趣味によりレースとフリルで飾られたその部屋は、俺の趣味とは程遠い。だが、これを見て帰ってきたことを実感している自分が可笑しくなる。

新婚当初――ここで眠るようになってしばらくの間は、慣れなくて落ち着かない気分になったもんだけどな。全く、変われば変わるもんだ。

だけど。
俺が本当に帰ってきたと思うには、今、この部屋には重要なパーツが抜けている。

俺は肩から荷物を下ろし、息をついた。そして目に入ってきたのは、部屋の真ん中にでんと置かれたベッド。
こうして誰もいない時に見ると、ほんと、でかいよな。俺はそこに腰をかけてみる。
病院のベッドとは違う、程よいスプリング。

しかし、俺がこのベッドに一人で寝ることは、実はほとんどない。
夫婦共働きで、俺が医者、あいつが看護師だから、俺が当直で夜いない時もあれば、あいつが夜勤でいない時もある。でも、あいつがいない夜、俺は大抵書斎でパソコンで調べものをしたりしてそのまま寝てしまうことが多い。
……そんなこと、あいつはきっと知らないんだろうな。

そして、この2ヶ月の間、こうしてこのベッドであいつは一人で寝ていたのか――やたらに広い、このベッドに。

俺は、ベッドから降りると、バッグを開け、中身を手早く片付けていく。
今日は午後から診察をするため出勤することになっている。

荷物が多いこともあり、こうして一度帰って来たけど、まだ本当に帰って来たという気はしないな。

俺は溜め息をつくと、病院に戻るまでの間、チビと遊んでやるために階下へ向かった。


***


「おー入江。退院&復帰おめでとう!」

午後。
久しぶりに出勤し、医局に行くと、西垣先生に声をかけられた。

「これだけ長いこと休んだんだからな、その分頑張ってもらうよ…と言いたいとこだが。医者が体を壊してたら元も子もない。体調管理はしっかりやってくれよ」

ぽんと軽く肩を叩かれた。

「そうですね」

俺は神妙に答える。

「研修医が過労で倒れたら、指導医の管理能力に疑問をもたれるでしょうしね」

「なっ…俺はそんなこと言ってないだろーがっ。ただお前の体調を心配してだなあっ…いやいや、まあそれはともかく」

こほん、と咳払いをして西垣先生は無理やり話を変えた。

「お前が入院してる間、琴子ちゃん頑張ってたぞ」

「……」

琴子が頑張っていたのは、入院してはいたが、俺だって知っている。
そんな俺の心中を知ってか知らずが、西垣先生は何故か嬉しそうな顔をして俺を見ていた。

「いやあ、ホントに健気に頑張る女の子ってのは可愛いよなあ。まあ彼女の場合、失敗がなくなったわけじゃないんだが、それでも一生懸命な姿ってのは人の心を打つもんだ。患者からの人気も花丸急上昇中だぞー」

……健気に頑張るのは琴子の最大の美点だ。
そのことは、この俺が一番よく知っている。言われるまでもない。
何が言いたいんだ?ったく、この人は……
俺が言い返そうとしたその時。

「ま、あの看護計画はちょっと酷かったけどな…」


ぼそりと西垣先生が呟いた。

――看護計画?
怪我をする前、あいつにつきあって徹夜したのはあいつの看護計画のためだった。
それを、何故西垣先生が?
俺が口を開きかけた時。

PPPP……
西垣先生のPHSが鳴った。
それはすなわち病院内の緊急の連絡。さすがのこの人も、一瞬にして表情を変え、電話に出る。

「はい。…わかった。すぐ行きます」

ごく短い会話の後、通話を切ると俺を見た。

「急患だ。交通事故で3人運ばれてくる。行くぞ」

その言葉に、医局の中の空気もまた、一気に引き締まったものになる。

「はい」

俺は返事とともに、心に浮かんだ雑念を振り捨てる。
久しぶりの、この緊張感。
俺はこうして、気の抜けない戦いの場へと戻ったのだ――



***



「ただいま」

俺がもう一度帰宅したのは、その日の終わる1時間ほど前だった。
午後から出勤したとはいえ、2ヶ月ぶりの勤務にさすがに体力的にも精神的にもどっと疲れを感じていた。

「お帰りなさい!」

玄関には琴子が出迎えに出ていた。
そう言われるのも久しぶりだな。そのせいか、琴子の笑顔がどことなく眩しい。

「入江くん、お疲れ様。復帰初日なのに遅かったね。大丈夫?」

笑顔の中にも気遣わしげな様子を浮かべつつ、琴子は俺の顔を見つめてくる。

「ああ。やっぱりやることも多くてな」

俺は息をつきながら応え、靴を脱いで階段を昇った。琴子は俺の後をついてくる。
背中に感じる気配。それは、いつもと同じといえば同じなのだが・・・それでいて、どことなく、違う気がする。

それは、きっと。
久しぶりに、こいつと一緒にここにいる、ということを、俺が今、徐々に感じているから。
午前中に一度俺一人でここにいた時とは明らかに違う、そんな雰囲気を。
俺が敏感に、感じ取っているからに、他ならない。

そんな思いを感じつつも、俺は何食わぬ顔で寝室のドアを開けた。

俺が寝室に入り、続いて琴子が中に入る。
それだけのことで、午前中に帰って来た時とは雰囲気が一変した気がする。

「なんだ、勉強してたのか」

机の上に書類が広げられているのが目についた。
やや乱雑に広げられたそれは、つい先程まで琴子がそこに向かっていたことを物語っている。

「あ、うん。看護計画。もう少しで終わるの」

琴子は慌てたように机の前に来ると、急いで広げられた書類を片付け始めた。

「入江くんは疲れたでしょ?シャワー浴びる?」

手早く書類をまとめて簡単に片付けると、琴子は俺を振り返った。

「いや、病院で浴びてきた」

「そっか。じゃ、もう寝ないと」

にっこり笑うと、琴子は俺の背中を押し、ベッドの方へと導こうとする。

「退院したばっかりなのに、こんなに遅くまで頑張ったんだもんね。ゆっくり休んでね。あ、着替えは出しといたよ」

「ちょっと待てよ」

俺は立ち止まって琴子を制止した。

「お前、看護計画は大丈夫なのか?俺が入院してる間、一度も見せに来なかったけど」

そう。
俺が入院する前に見た時、琴子の看護計画はひどいものだった。あれでは突き返されるのも無理はない。
それが、俺が入院してからは全く見せに来ていない。
あんなひどいものを提出していたこいつが、一人でやり遂げているとは思えないのだが。

「大丈夫だよ!ちゃんとやってるし、これだってもう少しで終わるんだから」

琴子は胸を張って言い返した。

「ホントか?ちょっと見せてみろよ」

俺は机の上に手を伸ばす。

「い、いいよ!大丈夫だから!」

慌てて琴子は机の上に覆い被さった。

「入江くんは、2ヶ月ぶりに仕事してこんなに遅くなっちゃったんだから!早く寝ないと!」

「看護計画を見るのなんて、そんなに時間かからないだろ。ほら、見せろよ」

「いいってば!」

……ずいぶんむきになってるな…何なんだよ。

「お前がさっさと見せれば時間はかからないだろーが」

「だから、大丈夫だよ!ちゃんと見てもらったから!」

「見てもらった?」

……誰に?

俺は思わず眉間に皺を寄せていた。
そんな俺に気づいたのか、琴子は不承不承といった様子で口を開く。

「……看護計画はね、あんまり大変だったら西垣先生が相談に乗るって言ってくれて……だから大丈夫だよ。入江くんは、これからは休める時にはゆっくり休んでね」

「………」

だから、西垣先生はあんなことを言っていたのか……

しかし、何言ってんだこいつ。
久々に出勤した俺に気を使っているのはわかったが……
俺以外の男に頼ろうと?

「ねっ入江くん!そんなことより慰安旅行、行くでしょ?」

俺の表情が変わったのにも気づかず、琴子は無邪気に俺を見上げる。

「……」

今度は何を言うかと思えば。
そーいえば、朝もそんな話をしていたし、今日の休憩時間中にも、ナース達が入江先生も行かれますよね?なんて聞いてきたな。

「朝にも言ったけど、俺はできれば行きたくない」

俺は間髪入れず答えた。
琴子はえーっと声を上げる。

「何言ってんの入江くん!これまで、過労で倒れるくらい頑張ってたんだもん!体をリフレッシュするべきよ!…まあ、過労で倒れたのはあたしにも責任あるけど……だから、あたしはぜひ入江くんは参加するべきだと思うの!」

一息で捲し立てたあいつは、物凄い力説っぷりだった。
顔の前に手を組んで、ひたすら俺を見上げている。

ったく……
やっと退院して家に帰って来たってのに、旅行なんて気分になれねーよ。
それより、この2ヶ月の間を取り戻すことの方が俺には大事なことなんだ。
わからないのか?

今、俺が、この場所で、お前の目の前にいること。
それが2ヶ月ぶりだということ。
そして、お前の目の前にいる俺の中に渦巻く……ただただ単純で、底の知れない望み。

いい加減、気づけよ。

「…お前、そんなに職場の旅行に行きたいの?」

俺は抑えた声でそう訊いた。

「うん!行きたいよ!入江くんと旅行!」

…いや、だから職場の旅行だろーが。
今日俺に慰安旅行に行くか訊いてきたナースも、教授陣だって来るんだぞ。二人になれるわけないだろうが。

そして、2ヶ月ぶりに夫が帰ってきたというのに、頭の中は職場の旅行のことでいっぱいなのも気に食わない。
更に言うなら、俺以外の男に頼っていたことも、全く、本当に、気に食わない。

「……わかったよ」

俺はそんな心中をとりあえず隠し、溜め息をつきながら言った。

「慰安旅行には行くよ。1泊だったよな?」

それ以上はちょっと無理だな。今の俺には。

「ホント!?入江くん!」

途端に顔を輝かせる琴子。

「ああ」

「海水浴場もホテルのすぐそばにあるんだって。海なんて全然行ってなかったよね。暑くなってきたし、泳いだら気持ちいいだろーねっ」

「……」

「あ、あたし新しい水着、買っちゃおっかなっ。うふっ、楽しみー……」

満面の笑みで話していた琴子は、しかし最後まで言葉を続けられなかった。

俺に、唇を塞がれていたから。
唐突の息を止めるような深いキスに、琴子の思考は停止状態に陥っている。

「ったく……」

ようやく唇を外してやると、琴子は力が抜けきったようにふらついた。すかさず琴子の腰を抱き寄せ、支えてやりながら顔を覗き込む。
上気したその顔は、今までの浮かれた様子は微塵も残らず消え失せ、ぼうっと俺を見つめている。
俺はそんな琴子の様子にとりあえず満足しながら、言い放つ。

「思い知らせてやるよ。俺が、どんなに――」

お前に触れたかったか、を。

そこまで口に出すより早く、俺は性急に動き出す。
もっともっと、琴子が他のことを考えられなくなるように。
身も心も俺だけでいっぱいになるように。

俺だけがお前のことを求めてるなんて許せない。
職場の旅行なんかより、もっと大事なことがあるだろう?

――なあ。琴子。


俺はこの2ヶ月、とても満足には触れられなかったぬくもりを、自分の中に引きずり込んでいった――




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

直樹があの寝室に一人で寝てるのがどうしても想像できない、とか。
直樹の入院後、琴子の看護計画はどうしたのか、とか。
やっと退院したのに旅行なんて行く気になれないよな、とか。
直樹は、琴子が少しでも他の男に頼るようなことをしたら、本当に心の底から嫌なんだろうな、とか。
そんな妄想が生じて書いたお話です。

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Re: たまち様
コメントありがとうございます!

毎日本当に暑いですね・・・実はちょっと夏バテ気味です・・・

おお、チビがもし話せたら・・・って、おもしろいですね!
今回のこともそうですが、直樹が神戸に行っていた間も、いろんなネタを知ってそうですしね。

はい、琴子は相変わらず直樹の心知らず・・・
原作読んだ時に、直樹が退院したっていうのに、そっちのけになっていて、それって直樹的にどーなんだろうって思いまして今回こんなお話になりました。
やっと寝室で琴子と過ごせるのに、琴子が他のことを考えているなんて、心の狭い直樹にしてみたら許せないでしょう。
しかしそんな直樹に琴子は気付くはずもなく(笑)。

夏はまだまだこれからですが、たまちさんも、体調には気をつけてお過ごしくださいね!
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Re: マロン様
コメントありがとうございます!

入院中は、直樹にしてみれば琴子が近くにいるようで満足に触れられない、そんな微妙な期間だったと思います。
だからこそ、早く二人だけになりたかったでしょうね。

それなのに、琴子は他のことばかり考えていたり、他の男に頼っていたり。
琴子はいつもそんな感じで直樹の所有欲を刺激してしまうんでしょうね、無意識に。
そんな、相変わらずな二人でございます(笑)。

まだまだ暑い日が続きますが、マロン様も体調には気をつけてお過ごしくださいね!
Re: heorakim 様
拍手コメントありがとうございます!

寝不足になるくらい長時間かけて読んでいただいたんですか・・・!ありがとうございます!
そんな風に仰っていただけて、感激しております。やっぱり、書いている方としては、読者の方々がどんなふうに感じていらっしゃるのか、気になっておりますので、すごく嬉しかったです。

確かにイタキス、ドラマは終わってしまいましたが、イタキスの力って、単なるブームでは終わらない、凄く私たち読者を魅了する力を持っていると思います。だからこそ、こうやって二次小説サイトが多く生まれているのでしょう。

実は最近、なかなか自分の思うような作品が書けず、ちょっと落ち込み気味で、そろそろこのブログも潮時かな・・・なんて思ったりしておりました。でも、こうしてコメントをいただいて感想を伝えていただいたりしていると、本当に励まされ、まだ書いてみようかな…と勇気づけられます。
いただいたコメントは全て読ませていただいております。また、返信も書かせていただきます。
こうして、イタキスを愛する者同士、そうやって世界を広げていきたいなと思っておりますし、このブログがそんな場所になれば、と願っています。

ありがとうございました。

Re: りょうママ 様
コメントありがとうございます!

そうですよね!
直樹からしてみたら、琴子に、直樹の入院中はずっと寂しかったとか、退院して嬉しいとか言ってほしかったでしょうに・・・
それなのに、久しぶりに二人きりになれるのを楽しみにしていたのは、まるで直樹だけ?というようなこの状態・・・

琴子に対する所有欲が尋常じゃない直樹が、許せるはずないですよね♪
でも、そんな直樹の心琴子知らず…(笑)

この日は、一晩かけてじっくり(笑)琴子に思い知らせてやったことでしょう(爆)。
No title
入江君は、態度にこそ出さないけど、高校のときもそうだったけど、以外なほど、勉強を見てあげたり、看護計画など見てあげたり、意外なほど好きなんですよ、面倒見がいいのかな?それは?琴子ちゃんに限るんでしょうけど、独占欲の固まりですからね、西垣先生が、見てくれたことが、入江君には、怒りが走ったんですね!私も、途中読んだとき、入江君嫉妬したんじゃない、と、思ったら、あんのじょうでした。v-15
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

彼にとって琴子ちゃんは「自分のもの」ですからね。他の男になんて頼っていたら、それはそれは嫌で仕方ないでしょう。
本当に嫉妬深いんだから、この人は(笑)。
実は面倒見がいい、というのは、琴子ちゃん限定ですが、それは放っておけないってことなんでしょうね。
No title
入江君は、琴子ちゃんに、夢中、琴子ちゃんわからないでしょv-10
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!
返信が遅くなってごめんなさい。

琴子ちゃんはいつまでたっても、自分がどれだけ愛されてるかわからないんですよね。入江くんもわざと気づかれないようにしてる節がありますしね。それでも相変わらずラブラブな二人です。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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