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Baby,You're my home
前回の記事に書いたわりに、あんまり甘くはなりませんでした……

短いですが、よろしければどうぞ。

... Read more ▼



・・・・・・・・・・・


窓の外の景色が、高速で流れてゆく。
窓際の席に座る直樹は、肘をついてそれを眺めていた。
しかし、実のところ、その瞳には景色は全く写ってはいない。
つい先程、日本一の山の前を通過したのだが、それも目に入っていなかった。
思い浮かぶのは――

(あいつ、驚くだろうな)

そう思うと、思わず口の端が上がる。
そして、直樹は3か月前のことを思い出していた――





――いーりーえーくーんー…

この世の終わりのような声が受話器の向こうから聞こえてくる。
続いて、ずびっと鼻を啜る音。
さっきからずっとこの調子だ。
直樹はふー…と深い溜め息を吐いた。

「仕方ないだろ。神戸の病院に空きがないっていうんだから」

――だって~、あたし国家試験受かったのに………頑張ったのに~!

「そうだな、おまえはよく頑張った」

もはや浮かぶ言葉を受話器の向こうからただ叫んでいるだけの琴子の台詞を、直樹はしっかりと受け止めてやる。

――なのに、入江くんと一緒に働けないなんて………

わーん!と琴子が泣き出すのが聞こえた。一体、今日何度目であろうか…

「でも、斗南病院に入れるんだろ。よく知ってるとこだし、よかったじゃないか」

――でも、入江くんがいないもん。

直樹の言葉に、間髪入れず琴子が言い返してくる。

「桔梗や品川たちも一緒なんだし」

――入江くんと一緒がいいんだもーん!

まるで子供のように、琴子が駄々をこねる。
もはや、どんな慰めも効果はないようだった。
ひとしきり、そんなやり取りが続いて。

――入江くん…入江くんは、いつ帰ってくるの?

琴子の声は、すがるようなものになっていた。

「それは…まだわからないな」

それは本当だった。
そもそも直樹だって、琴子が国家試験に受かったならば、神戸の病院で一緒に働けると思っていたのだ。東京に戻ることなんて、考えているはずもない。

琴子が神戸に来たら、このマンションじゃ手狭になるな、とか。
このシングルベッドも買い替えるか…実家のものほど大きくはなくても、ダブルベッドにした方がいいか、とか。
何よりもいつでも琴子の笑顔がそばにあり、いつでも触れられるようになるのだ。そう思ったら、直樹の心も浮き立つかのようだったというのに。

(なんで、空きがないんだよ…)

電話の向こうの琴子を宥めながら、直樹もまた、内心ぼやいていた。
もしかしたら、正直に態度に表せない分、直樹の心は琴子のそれよりずっと沈んでいたかもしれない。苛立っていたかもしれない。
まだ泣き続ける琴子に、直樹はもう一度深い溜め息を吐いた。


***


それから3か月後――
こうして、直樹は新幹線に乗っている。

あの電話を受けてから、直樹の毎日もまた、重く、どことなくどんよりしたものになっていた。

直樹は待っていたのだ――琴子が看護婦となって神戸にやってくるのを。
二人で一緒に働き、患者を助けること。
それが、直樹の――いや、直樹と琴子ふたりの夢だったのだから。


しかし、予想外の人員募集なしという神戸の病院からの通達。
まさかそんなことになろうとは思わなかった。
人員に空きが出るのはいつになるか、それは当然わからない。
疲れた体を引きずるようにして帰り着くマンションの部屋。
しばらくは琴子と一緒に暮らせないとわかってからというもの、もはや住み慣れたこのマンションも昨日までとは違って見えた。
そう、ただのがらんどうのように。


何だか、「家」じゃないみたいだ。
自分が帰るべき場所。それは――。


そう感じた時、直樹の心は決まっていた。





「ほんまに、急やったなあ」

神戸医大病院での最後の勤務の日。
挨拶をした直樹に、同じ診療科の医師、川島が言った。

「琴子ちゃんがこっちに来られんかったからって、あわてて転勤するとはなあ」

そんな川島の言葉に、直樹は答えず、ただ笑みを溢す。

「すっきりした顔して…全く」

川島は半ば呆れたように言った。

「まあ、琴子ちゃんによろしく」

「はい」

…確かに川島のいう通り、自分の顔は晴れ晴れとしているに違いない。その自覚はある。

やっと、帰れる。
自分のいるべき場所に。


***


琴子は斗南病院に看護婦として配属され、4月から働いている。
お互い忙しくなり、これまで以上に連絡が取りにくくなった。
しばらく電話でも話せない日が続くと、気になって仕方なかった。

たまに電話で話すと、どことなく疲れた声をしている。
そんな声を聞くにつけ、直樹の心もまたざわついていた。
そんな日々にも、ようやく別れを告げられる。



通常業務に加えて引き継ぎ業務。マンションに帰れば引越し準備。忙しさにかまけて、つい連絡をしそびれてしまった。
いっそのこと、このまま連絡をしないで出勤してみようか。

(あいつの働きぶりも見てみたいしな)

きっと、毎日騒動を巻き起こしながら、それでも必死に働いていることだろう。

(いや、俺がいない病院であんまり仕事が手につかないで余計に失敗が多くなってるかもな)

そう思い、くすりと笑みが溢れる。

(あいつは俺がいないと駄目だから)

あの電話を受けてから、直樹もまた琴子を想う気持ちが募って仕方なくなったように。

(俺たちは、いつもそうやって、お互いに必要としてきた)

想い、想われ。
抱いて、抱かれて。
そうやってふたりは生きてきたし、これからもそうだ。
これ以上、離れているのは無理だ――互いに。
だから、帰ろう。
お前の元に。




「まもなく、東京ー、東京」

車内アナウンスが流れ、少しずつ列車が減速してゆく。

直樹が帰ったら、琴子はどんな顔を見せてくれるだろうか。

(初めは大泣きかもな)

でも、その後はきっと弾けるような笑顔を見せてくれるだろう。

溢れる笑顔も、その目に浮かぶ涙も――すべてが愛しくて。

そう。
直樹が帰る家は、琴子その人。

これからは、ふたり、ずっと一緒に。




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

タイトルはB'/zの古いアルバムの中から。
弾むようなギターサウンドが、帰る喜びで浮き立つような心と重なる、素敵な曲です。
直樹も帰るとき、こんな気持ちだったかな?と思って書きました♪
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Re: マロン様
コメントありがとうございます!
例によってレスが大変遅くなっていてすみません・・・

神戸から帰ってくるのを知らせなかったのは、本当にどうかと思います。この人は、自分の言葉足らずがどんな影響をもたらしているか、よくわかっていないのでしょうか。

確かに!私も思いましたよ。空きがないって、ナースはいつも人手不足なイメージですから。

まあ、細かいことはさておき(笑)、このお話では琴子不足が極まって急いで帰って来た直樹が書けたので、個人的には満足しています。

私もB’z、昔好きでした。今は、なんだか音楽聞かなくなっちゃったなあ・・・
Re: 紀子ママ様
コメントありがとうごさいます!
相変わらず返信遅くてごめんなさい。

そうですよね、私もそこんとこ、こんなお話書いておきながらわかりません!
多分、いくら忙しくてもそれくらい伝えることはできなくはなかったんじゃないかと思います。
でも、忙しさを言い訳に、わざと言わなかったのか・・・?と個人的に思っていたりします。ほんと、しょーがないですねぇ。

神戸に行く時!私もそれ思いました!
あの時、琴子は直樹の心情を聞いたから、決心できたんですよね。
もうちょっと、琴子も気持ちも考えてあげてくれー、と思います!

Re: たまち様
コメントありがとうございます!
レスが遅くて申し訳ないです・・・

普通に考えたらそんな変な時期に戻ってくるのかな、って私も原作読んだ時から疑問でした。
でも、よほど琴子不足に陥った直樹は、そんなことも可能にしてしまったのかなー、と書いたのがこのお話です。
いい加減耐えられなくなったんですね。

確かに!教授になんて言ったんでしょうね?
仰るとおり、直樹って琴子以外にはいろいろ話すとこありますもんね。
でも肝心の相手には言わないなんて、まったく進歩のない人です(笑)。


Re: ののの様
コメントありがとうございます!
レスが遅くって申し訳ないです・・・・・・

原作の中で直樹の行動って、突っ込みどころが結構ありますが、このエピの直樹についてはその最たるものかもしれないですね。ほんとに、一番大事な琴子に対しては一番言葉が足りてない!


> ……でも突然戻って琴子の働きっぷりをみようなんて、発想が琴子ちゃんと同じだよ……

←確かに!夫婦ってだんだん似てくると言いますが、直樹もなんだか似てきたんでしょうか・・・(笑)

言葉足らずな直樹の心中を暴くのが私のブログを始めた理由でもあるので、こういう話は書いていて結構楽しいです。
嬉しいお言葉、ありがとうございます!

ホントに、暑い日は暑くなってきましたね。子供たちはまだ暑さになれず、なんだかいつも眠そうです・・・
これから夏に向かっていきますが、のののさんも体調に気をつけてまた楽しいお話を書いてくださいね♪

Re: ねーさん様
コメントありがとうございます!
返信が遅くなってごめんなさい!

甘いっていっていただいてよかったです。
このエピは、突っ込みどころですよね。
なんでこんな変な時期に帰って来たのか?
琴子不足に耐えられなくなった直樹が、もう無理矢理にでも根回ししたんでしょうね。

そして相変わらずの言葉不足!
そうそう、一人暮らしから実家に帰って来た時も、いきなりでしたね。
小学生的!ホントですよね!天才のくせに!

歓迎パーティーの裏でラブラブなふたり、私も好きです♪飢え・・・そうですね。早く二人になりたかったのかな?(笑)
Re: ジェニィ様
コメントありがとうございます!


> ご自分もでしょう。入江くん!

その通り!(笑)
だから急に帰って来たくせに、何を言っているんでしょうね。
もうちょっと、一番大事な琴子ちゃんにもちゃんといろいろ伝えてあげてほしいな、と思いますが・・・うちの直樹さんはホント、素直じゃないんです・・・

最近更新ペースがかなりのんびりですみません。書きたいお話はいろいろあるので、ちょっとずつ書きすすめています。楽しみと言っていただいて嬉しいです!ありがとうございます。

入江君と、琴子ちゃん何時でも、一緒だもんね、二人が忙しくなって、学生時代のように、琴子ちゃんが、入江君のところに、遊びにも、連絡の。、電話もできなくなり、琴子ちゃんだけではなく、きっと、寂しくなったのかな、琴子ちゃんの仕事ぶりだけではなく、入江君の方が、ずっと気になっているんでしょうね。
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!

そうですよね。琴子ちゃんも社会人になり、しかも看護師なんて不規則な仕事だから連絡もままならず…そんな状況に先に根を上げたのはきっと直樹だったのかもしれません。でもそれを素直に言い表せないのもまた、直樹の仕様・・・相変わらずの二人なのです。
(*^_^*)
No title
入江君だって同じ癖に?入江君だって、琴子ちゃんが神戸に来て、一緒に働くのをだれよりも、楽しみにしていたはずでしょ、琴子ちゃんが、看護師の国家資格が受かり、琴子ちゃんだけでなく、入江君だって楽しみにして、いたのに、ほんと直じゃないなて思いきや?本当は、神戸の病院の研修2年を、1年に繰り上げ、神戸から、斗南病院に戻るなんてね、琴子ちゃんの願い、入江君の願いである,斗南病院に戻ってきて来るんだね、二人の願いでもあるんだもんね。v-207v-221
Re: なおちゃん様
コメントありがとうございます!


そうですよね!
絶対、直樹さんも同じ思いでいたくせに・・・本当に素直じゃない男です。
一足先に慣れない職場に出て、激務をこなしていた直樹。だからこそ、琴子が神戸にやってきて、一緒に働けるのを琴子以上に渇望していたのだと思います。それがまさかの募集なしって・・・それこそ、実は琴子以上にショックだったでしょうね。

そのショックを力に変えて、研修期間を繰り上げた直樹。もうもう、それこそ愛ですよね!
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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