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ドニーズへようこそ 4
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・・・・・・・・・・・・

「ふう…」

金之助は持っていたコーヒーカップをソーサーに戻し、息をついた。
コーヒーはおかわり自由。つまり飲んでカップを空にすれば、また琴子が持ってきてくれるわけで。
琴子についでもらったコーヒーの旨さに――といっても何の変哲もないファミレスのブレンドなのだが――すっかり幸せを感じた金之助は、あれから2回、琴子にコーヒーのおかわりを持ってきてもらっていた。
そのまま味わうために砂糖もミルクも入れない上に、ずいぶん急ピッチで飲んだため、さすがに少し胃が痛い。

(いや、そんなん関係あらへん)

琴子が笑顔で注いでくれるコーヒーのためである。多少の胃痛など問題外だ。

「すんませーん、コーヒーのおかわりを……」

かれこれ5杯目となるコーヒーを持ってきてもらうため、金之助は厨房の方を向いて片手を上げた。

「はい、ただいま」

(…ん?)

返ってきた声に、金之助は思考を止めた。

「お待たせました」

コーヒーサーバーを手にやってきたのは、やはり琴子ではなかった。見知らぬ女性店員が金之助のカップを持ち、コーヒーを注いでいる。

(な、なんでや?琴子、どこ行った?)

今までは、琴子がにこにこしながら来てくれたのだが……店内を見回しても、琴子の姿は見当たらない。

「こっ…琴子はどこや!?どこにおんねん!」

コーヒーを注ぎ終わり、立ち去ろうとしていた店員に詰め寄る。

「琴子?ああ、相原さんですね。今、あそこでデザートを作ってます」

「デザート?」

女性店員の指差す方を見てみると、ホール係が飲み物を作るカウンターの向こう、ガラス張りになっているブースに、琴子の姿があった。

(な、なんであいつもおんねん!)

琴子の隣に直樹がいるのが目に入り、金之助は血相を変える。離れているのでよく見えないが、直樹が琴子に何か言い、琴子は頷きつつデザートを作っているようだった。

(おうおう、何でそんな近くに!)

二人の間の距離が気に食わない金之助。
そうこうしているうちにデザートは完成したらしい。琴子は満面の笑みを浮かべ、作ったものを盆に載せ、客に運んでいく。

(うおっ、琴子お手製のデザートやあっ)

それだけで、とてつもなく美味しそうに思える。

(デザート……そーや!)

金之助はもう一度店員を呼ぶべく片手を上げた。




新たに入ったデザートの注文に、直樹は眉をひそめた。
このブースからもフロアの様子が見渡せる。
金之助が女性店員に何か話していたのは見えていた。その直後にこの注文である。

「注文入ったの?なになに?…あ、白玉あずきね!」
注文票を見ていた直樹の後ろから、戻ってきた琴子が覗き込んでいる。

「白玉あずきは作ったことないなあ。えっと、まずはあずきを器に入れて…」

手順を確認し始める琴子。作る気満々のその様子を直樹は一瞥し……。

「よし、じゃあお前一人で作ってみろよ」

「えっいいの?わかった、頑張るね!」

直樹の一言に、俄然やる気を出した琴子。さっそくデザート用のグラスを出してきた。

「おい、このグラス違うだろ。もっと小さいやつだろーが」

「えっ、そーだっけ」

相変わらず失敗が多い琴子。えへ、と舌を出しつつ違うグラスを取り出し……琴子のデザート作りが再度始まった。




(おお、作っとる作っとる)

金之助はその様子をじっと見ていた。
デザートを注文した後、金之助は席を飛び出し、琴子の様子がよく見える所まで移動してきていた。
ここは琴子達のいるブースの真正面に位置する二人用の席。その椅子に金之助は膝をのせ、スタッフ用のスペースとを仕切る敷居に両手を乗せた。それでも間に少し距離はあるが、これが二人との最短距離となる場所である。

その席には一人で来ていた客が金之助の向かい側に座っていた。突然の相席に「ちょっとあなた…」と驚いているが、金之助は全く目に入っていない。
金之助がガラス張りの向こうを覗くと、琴子は真剣そのものの顔で下を向き、何やら作業していた。金之助の位置からは下の方はよく見えず、二人の声も聞こえないのだが、琴子が一生懸命に作っていることはわかる。

(うおっ、琴子可愛えーなー)

すっかり顔が弛む金之助。

(あいつは要らへんけどな)

視界から直樹の姿を排除し、ひたすら琴子を見つめる。琴子は金之助の視線に全く気がつかず、作業に没頭している。
ふと、琴子が振り返った。直樹に何か言われたらしい。琴子の顔に驚きが浮かんだ。

(何や?どないした?)

すると。
直樹が琴子の前にあったデザートグラスを取り上げた。中にはあずきと白玉が盛り付けられている。
それに、直樹はおもむろにスプーンを突っ込み、中身をすくうと、自分の口に入れた。

「はあっ!?」

思わず声を上げる金之助。あれは自分が注文したもののはず。店員が食べるものではない。何より、あれは自分のために(←注:思い込み)琴子が丹精込めて作ったものなのだ。
琴子も、直樹の行動を驚きの顔で見つめていた。その瞳が、さらに見開かれる。
直樹が、自分の口に入れたスプーンで再び白玉あずきをすくった。それを今度は琴子の口に入れたのだ。

「なっ……」

思わず絶句する金之助。琴子の方も、目を白黒させ真っ赤になりながらももぐもぐと咀嚼し……目を見開いた。
そんな琴子に、直樹がまた何か言っている。琴子は頷き、ブースを離れていった。

(あいつが食べたスプーンが、琴子の口に…)

あまりのことに金之助は呆然とし、しばらくの間佇んでいた。
直樹は黙々と新しくデザートグラスを出し、あずきを盛り付けている。その様子は、金之助には全く目に入っていなかった。

「あの……すみません」

そんな金之助に、正面に座っていた客が恐る恐る声をかけた。

「あの、連れが来たので、どいてもらっていいですか?」

待ち合わせをしていたその客は、本当なら早く席を移動したかったのだが、他に空席がなく、仕方なしに金之助と相席をしていたのだった。

「………」

金之助は無言で椅子から降り、とぼとぼと自分の席に戻った。
ソファに座り、しばし呆然としていると。

「お待たせしました」

上から声が降ってきた。

「白玉あずきでございます」

そう言って金之助の前にデザートグラスを置いたのは、他ならぬ直樹だった。
その顔を見て、一気に金之助に生気が蘇る。

「お、おんどれぇっ!あ、あの、俺の白玉食いやがったなあっ」

「はい?お客様がご注文された白玉あずきはこちらになりますが」

平然と言う直樹。

「何ぬかしとんねん!さっき、琴子が俺のために作ったデザート食いやがったやろ!それに、あんな、自分が使ったスプーンで、こ、琴子に……っ」

「まあ、あれはお客様の口に入れるわけにはいきませんから」

「はあっ!?」

「では失礼します」

くるりと踵を返し、直樹は厨房の方へと戻っていく。

「くう…っ、入江の奴……っ」

金之助は腹立ち紛れにまたコーヒーをがぶ飲みしてしまう。

「う……」

冷めたコーヒーは余計に苦く、重く感じる。先程よりも胃がキリキリと痛み出した。
カップをどん、とテーブルに置くと、直樹が置いていったデザートが目に入る。

(くう…あんな奴が作ったもんなんか食えるかいなっ)

金之助はまたコーヒーカップをあおる。しかし、そろそろ胃が悲鳴をあげ始めていた――。




「あ、入江くん。ホントだね。あたし、白玉を加熱しすぎたみたい。これにちゃんと書いてあった」

直樹が戻ってくると、琴子はデザートのマニュアルを開いていた。先ほど直樹にちゃんと読んでこいと言われ、バックヤードから持って来たのだ。

「あたしが作ったの、ふにゃふにゃだったもんね」

「あれじゃ客に出せないだろ」

「うん…でも、次は間違えないようにするね!」

「ま、頑張れば」

どこまでも前向きな琴子に、直樹は相変わらずの反応を返す。

「でも、入江くんは作るのも早いね。あたしがいない間に、もう作って持っていったんだ」

「あんまり待たせたらいけないだろ」

「そうだね。それに、あの失敗作より入江くんが作ったやつの方がお客さんは喜ぶよね」

「…どうかな」

「え?」

「いや、なんでも」

直樹は首を振り、壁にかかる時計を見上げた。

「さ、そろそろ上がるか」


***


「くっ……」

金之助は、体勢を変えながら呻き声を上げていた。

(な、なんや腹の調子がおかしいな…)

散々コーヒーを飲んだ金之助は先ほどからいよいよ腹痛が激しくなってきていた。通路の奥にあるトイレの前まで来たのだが、あいにくの使用中。壁に寄り掛かりながら痛みをやり過ごしていた、そんな時。

「そーいえば、金ちゃんどうしたかな」

通路の先の方から、そんな声が聞こえてきた。そこには、厨房の方へと続くスタッフ専用の入口があるのだ。

(こ、琴子…っ)

何とか呼ぼうとするが、痛みのためなかなか声が出ない。

「もう帰ったんじゃねーの」

そう答えたのは直樹の声だった。

(くっ…ここにおるっちゅうねん!)

臍を噛む金之助。

「大丈夫かなあ、金ちゃん。コーヒーかなり飲んでたけど」

「そういや、お前も前にここでコーヒー何杯もおかわりして胃痛起こして俺んち泊まったっけな。あのすげぇ雪の日」

「あっ…そうだね…///」
(な、なんちゅうことを思い出させやがって…!)

今まで忘れていた過去の話を思い出させられ、金之助は思わず歯ぎしりした。

「あ、俺今日は実家に帰るから」

「えっ本当!?珍しいね入江くんが帰ってくるなんて」

途端に琴子の声が華やいだ。

「ドイツ語の辞書を置いてきたのに気づいてな。取りに行くから」

「そーなんだ。じゃ、一緒に帰れるねっ」

(な、何やとぉっ)

金之助は目を剥いた。
いよいよ腹痛が堪えがたくなり、ほとんど床に座り込んでいる状態である。

「ほら、行くぞ」

「はーい」

二人の足音が遠ざかっていく。
そして。

「こ…ことこぉ……」

通路にそんな声が響き…金之助はついに床に倒れた――






入江家のダイニング。

「はい、クリス!それに金ちゃん!特製フルーツ白玉でーす」

琴子はそう言いながら、持ってきたものをテーブルに置いた。

「Oh!カラフルデンナ~」

「ホンマやな。キレイやー」

すでにテーブルについていた金之助とクリスは、歓声を上げた。

「クリスは白玉食べるの初めてかな?いっぱいフルーツ入れたし、これなら悪阻でも大丈夫じゃない?」

「ソーデンナ。コレナラ食べラレソーヤ」

「これ、琴子が作ったんか?旨そーやな」

金之助が早速、大きなガラスの器に入ったフルーツ白玉をスプーンで掬おうとした時。

「ちょっと待て」

ちょうど直樹が入ってきた。手に琴子が持ってきたのと同じ、フルーツ白玉が盛られた器を持っている。

「食べるんならこっちにしとけ」

言いながら、直樹は琴子の持ってきた器を押しやり、自分が持ってきた方をゲスト二人の前に置いた。

「こっちはお袋作。クリスは今大事な時期なんだから、琴子の作ったもんなんか食べて腹でも壊したら大変だからな」

「何よそれ!大丈夫よ、失礼ねっ」

憤慨する琴子。

「へぇ。だったらほら、これ」

言うが早いが、直樹は琴子の作った白玉をスプーンですくうと、琴子の口に突っ込んだ。

「――!」

「ほら、どうだ?」

琴子に声をかけると、自分もそのスプーンで琴子の白玉をすくい、自分の口に入れる。

「…ふにゃふにゃ…」

「だろ?ったく、進歩のない奴」

もぐもぐと口を動かしながらしょんぼりする琴子の頭を直樹が軽く叩いた。

(やっぱり琴子の作ったもんは他の奴には食べさせへんのやな)

金之助は内心呆れながらそんな二人の様子を見ていた。
琴子のことは、とうに吹っ切れている。
もう自分もクリスと結婚し、父親になろうとしているのだ。そんな自分にも直樹は嫉妬している――こんな涼しい顔をして。

(進歩ない奴はどっちやねん)

過去、その無自覚の嫉妬にさんざん煮え湯を飲まされた金之助としては、そうとしか思えない。
そんな金之助の心の声が聞こえたのか――

近くに置かれたベビーベッドの中。
すっかりご機嫌な琴美が、きゃっきゃっと笑っていた――




☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


金ちゃん、だいぶひどい目に…ご、ごめんよ……

ちょっと私、最近糖分不足なので、そろそろ甘いお話が書きたくなってきた・・・・・・

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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何気に、入江君て琴子ちゃんと間接kiss してますね♪
無自覚なのか?計算なのか!
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Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございます!レスが遅くなってしまってごめんなさい。

笑っていただけて何よりです!
本当に無自覚で困りますね直樹さん。
気付いているのか、同じスプーンを口に・・・って、萌えていただいて嬉しいです!
確かに金ちゃんは、琴子作の白玉食べていたら病院行きだったかもしれませんね。

日本胃腸学会!笑!
確かにそこでも貴重な存在でしょうね、直樹の胃袋・・・・・・
愛情は無自覚でも胃を強くするんでしょうか。

楽しんでいただいてこちらも嬉しいです♪
Re: マロン様
コメントありがとうございます!レスが遅くなってごめんなさい。

はい、金ちゃんと琴子は同じ猪突猛進タイプですよね。だから、コーヒーで同じように胃痛で倒れるわけで・・・
しかし倒れた後の待遇は雲泥の差!金ちゃん可哀想・・・

はい、直樹さんはきっと無自覚ながらも琴子に惚れている男の気配はいつでも鋭く察知するのでしょう。わざと相手の嫌がることをするところ、本当にちっちゃいですね。


最後、金ちゃんはずいぶん大人になりましたが、直樹は父親になっても相変わらず・・・
そういうところは、特に男性は何年たってもきっと変わらないと思います。たとえ天才といえども(笑)。
Re: りょうママ 様
コメントありがとうございます!

レスが遅くなりまして申し訳ないです・・・
はい、間接kissしてますね~☆
どうなんでしょうね?天才の頭の中はどうなっているのか・・・(笑)

なんにしろ、無自覚でも琴子loveなことには変わりありませんね~
Re: たまち様
コメントありがとうございます!

レスが遅くなりまして申し訳ないです・・・

そうですね、金ちゃんはきっと琴子が作った物ならばきっとなんでも美味しいでしょうね~
そんな小さなことですら直樹さんは許さない!特にコーヒーだから、かもしれません。

どこまでも小さく、お子ちゃまな直樹です(笑)。

最後のところは、金ちゃんは実際、ずいぶん大人になりましたから、そんな直樹の行動をいい加減見通せるのではないかと。
特に、金ちゃんは啓太事件の時に直樹の感情の正体について言及した張本人ですからね。
ほんとに、こういう独占欲っていうものはいつまでも変わらないのです・・・(笑)
Re: ねーさん様
拍手コメントありがとうございます!

大丈夫ですか??
この時期って朝は涼しいけれど昼間は暑いくらいだし、体調を壊しやすいですよね。お大事にしてくださいね。
それでも、ブログをきちんと更新しているところはほんと、すごいです!尊敬・・・・・・

うちは相変わらず、のんびりペースです・・・甘いお話はもう少しお待ちくださいね。
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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