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天才くんの新婚旅行
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今日また、酔いつぶれて寝てしまったあいつをベッドまで運んだ。

「ったく」
思わずため息が出てしまう。
今俺たちがハワイにいるのは、新婚旅行だったよな、確か。
行きの飛行機の中で知り合った麻里とかいう女とその旦那が妙につきまとってくるせいで、さっぱり二人きりになれない俺たち。

それだけならまだしも、夜になると部屋に押し掛けて、やれ酒だと言ってきて、気づくと琴子が大虎になっている……というパターンが、ここ数日続いている。
こいつと結婚すると家族の前で宣言してから、なんと2週間で挙式、そしてこの旅行に来ることになったために、俺は2週間ほぼ休みなしで働き通し、家にもまともな時間に帰れず、という日々を送った。
その間、晴れて婚約者となったあいつとは会話どころか顔も見られない日が続き……
結婚式では、花嫁の支度に忙しいあいつとは顔を合わせても、ゆっくり話をする暇などなく。
そして披露宴は……
くそっ、思い出したくもないものを思い出した。そのせいで気分は最悪、その夜はせっかくの初夜だというのにそんな気になかなかなれず、早々にベッドに入っていたら、あいつはどうやら俺が先に寝てしまったと思ったらしく、俺より先に寝入ってしまい……

つまり、このハワイに来るまで、俺は琴子に触れることができなかった。

そして、このハワイにおいても。


すーっ、すーっ……
静かな部屋に、琴子の寝息だけが聞こえる。

「ったく、人の気も知らないで……」

つい、口から本音が飛び出した。
眠る琴子は、いつにも増してあどけなく見える。
けれど。

かすかに開いた、ピンク色の唇に目を奪われる。
そういや、清里でもこの唇に惹き付けられてキスをしてしまったんだっけな。

そんなことを思い出していると、
「う……ん……い、りえ、く……」
「琴子?」
起きたのかと思って顔を覗きこむ。
しかし、また、すーすーという寝息。
なんだ、寝言かよ。
ったく、ちょっと、期待しちまったじゃねーか。

と、琴子が不意に寝返りを打った。
そう、こいつは本当に寝相が悪い。ってのは、あのバレンタインの夜にわかっていたことなんだが。

「ん……」
また、琴子が動く。脚が大きく持ち上がり、………おい。
今日、琴子は淡いピンクのワンピースを着ていた。その裾がめくり上がり、白い大腿があらわになっている。

「勘弁してくれよ……」
また、ため息とともに出てくる本音。
ここ数日、俺を悩ませるのはこの琴子の夜の無防備な姿、だったりする。
ハワイに来てからは当然薄着だから、結構露出度の高い服を着ているわけで。
酔いつぶれて寝入ると、寝相の悪さも相まって、かなり正視できない状態になったりするのだ。
ったく、拷問かよ。
でもここで寝込みを襲うわけにもいかないし。
間違いなく、あいつ初めてだろうしな……
あの雨の日のまで、散々琴子を傷つけ泣かせてきた。そのせめてもの罪滅ぼしに、あいつを大事にしてやりたい……そう思っている。思ってはいる、が。
「…………」
いつの間にか、ワンピースの肩紐が下がり、胸元が見えかかっている。
色白のあいつの、さらに際立つ白さが何とも艶かしく見えて………

「いい加減にしてくれ……」
思わず琴子に布団をひっ被せた。



☆☆☆

なあ、琴子、わかってんのか?
俺をこんな風にさせるの、お前が初めてだよ。

お前に出会うまで、ただ何となく生きてきた。
特に望むものもなく、何かに執着することもなかった。
そんな俺の周りを騒がしいものに変え、医者になるという夢を持たせた。
そして、俺の中にこんなに強い感情があることを教えた。
琴子でなければだめだ、と。
………だから、お前が、お前の全てが欲しいんだ。





結局、この悶々とした夜は最終日の前日まで続いた。
毎晩のようにやってくる麻里夫妻。
できれば、さっさと追い返したいのだが、あんまり無下にすると、何だかがっついてるみたいだしな。
琴子も琴子で、邪魔されて面白くないからって、弱いくせにすげぇペースで酒をあおってて、気がつくとやっぱり大虎と化している。
まさかとは思うが、俺……避けられてるのか?
俺と一線を越えるのがいやだとか。

いやいや、まさかそれはないよな。

そんなことを考えつつ、本屋で専門書を見ていると、「い、入江くん」
書店の中で所在なげにしていた琴子が話しかけてきた。
「ハワイも、今日で終しまいでしょ。それで、二人で海行ったりディナーしたりしたいな、なんて…」
うつむいて、少し赤い顔でそんなことを言うあいつ。……ったく……可愛いじゃねーか。
「いいよ」
思っていることを悟られたくなくて、わざと素っ気なく答える。
「ホント!?」
…そりゃ、新婚旅行だしな。それが当たり前だろう。「そーいやこっちに来てお前と二人になったおぼえががないな」
俺が言うと、そーなのそーなの、と頷いている。
「夜は夜で大虎だしな。暴れるわクダ巻くわ色気もねーんだから」
わざと嫌味っぽく言ってやる。ホント、なんで、俺がこんなに悶々とした夜を過ごさなきゃなんないんだよ。
「今晩は飲まないもん!だから一緒にいよーね」
…必死だな。まあ、こいつもいろいろ、思うことがあるのかもな。
なにしろ、今夜はハワイ最後の夜なんだから。
「はいはい」
答えながら俺は、心の中で今夜のことを思い、ひそかにほくそえんだ。







しかし、二人っきりの夜はそう簡単には迎えられなかった。

腹痛を訴える麻里を診ようとした俺に
「いやっ!他の女の人なんかさわんないでよ!」

琴子が叫んだ。
…何を言ってるんだ?そんな変な意味でさわるわけじゃないってのに。
俺が触れたいのは、お前だけなのに。
……わからないのか?

悶々とした日々を送ってきたことも相まって、俺の口調は必要以上に冷たくなったかもしれない。
琴子はホテルを飛び出して行ってしまった。

それでも、医者の卵としては、患者を診なければならない。
診たところ、麻里の腹痛は特に重病ではなさそうだった。
しかし、俺が言った薬を買いに旦那が出ていくと、麻里の態度が一変した。
甘ったるい声を出し、俺に手を伸ばしてくる。媚びた態度にヘドが出そうだ。
俺はその手を振り払った。
「お前と琴子を比べるな」こんな女に関わっているヒマはない。早く琴子を探しに行かなければ。
俺はホテルを飛び出した。



こんなに焦ったのは生まれて初めてかもしれない。
ワイキキ周辺を探したが、琴子は見つからなかった。英語はできないし、地理も疎い。間違いなく迷子になっているんだろう。
治安の悪いところに迷い込んだりしたら……あいつは金も持ってない。ヘタをすれば最悪の事態になりかねない。
なりふりかまってはいられなかった。
俺は親父の持ってるマンションに行き、新婚旅行に便乗して来ていた家族皆に事情を話し、琴子を探してもらうことにした。



あいつ、どこまで行ったんだ?辺りは暗くなってきている。
暑い中走り回ったせいで、俺は汗だくになっていた。
まさか、もう誰かに連れ去られたなんてことは……
嫌な想像が頭によぎった時。
「入江くーん、大好きー」聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「成田離婚したくなかったよーっ」
……なんだよ、成田離婚って。
離婚なんかするわけないだろ。まだ何にもしてないってのに。
急いで声のした方へ向かう。
そこには、大柄な現地人の男性に肩をつかまれ、泣きながら叫んでいる琴子の姿。
……琴子に何をしてる!?

「Hey,What the matter with my wife?」

…そうだ、こいつは俺の妻、だ。
「入江くんっ」
琴子が泣きながら抱きついてきた。どうやら、無事なようだ。
ほっとして琴子を抱き締める。
そして…、琴子に声をかけたらしい男性を見て、ふとその胸に目が止まった。あれは……。

その彼はひどく爆笑している。
彼は警官だった。琴子を小学生の女の子だと思った、と笑いながら言った。

まあ、こいつは日本人の中でも童顔の方だからな……
ともあれ、声をかけたのが警官でよかった。
彼が手を振って去っていく。
ふーっと息をついていると、
「あの…ごめんなさい」
琴子がうつむいて謝った。
「あたし、ヤキモチ焼いちゃって…自分のことしか考えてなくて、イヤな女だったけど……」
泣きながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「だけど……」
「ばかやろう」
俺は琴子を引き寄せた。
「心配しただろ」
そして、何か言いかけた唇を、自分のそれでふさぐ。久しぶりに感じる琴子のぬくもり。
なんとなく視線を感じはしたが、そんなことはどうでもよかった。
とにかく琴子がここにいることを確かめたくて、俺は長く長く口づける。
久しぶりに感じる琴子の唇は、柔らかく、そして……ひどく甘かった。




「美味しい!」
フルーツを頬張る琴子。
俺たちはホテルの部屋に戻り、シャワーを浴びた。
予約していたディナーには行けなくなったので、ルームサービスを取ったのだ。。
「ディナーは残念だったな」
そのために、かなりめかしこんでたもんな。
俺が言うと
「ううん!入江くんとふたりだったら、何でも美味しいよ」
そう言って幸せそうに笑う。
「入江くんは、もう食べないの?」
パイナップルをフォークに突き刺して琴子が訊いてくる。
「いいよ、俺は」
「そう?」
琴子は首を傾げたが、手は休みなくフォークを動かしている。
ったく、よく食べるヤツだな。
でも、俺が今食べたいものは別にあるんだ。
「ごちそうさま~」
フォークを置いて、琴子がニッコリ微笑む。
「お前、よく食べたな」
ちょっと呆れて言うと
「だって、走ったらお腹すいちゃったんだもん」
無邪気に笑う。ったく、琴子らしいけど。
ルームサービスも食べ終わり、琴子は急におとなしくなった。
何となく、沈黙が訪れる。
「あっ、これってどうすればいいのかなっ」
ルームサービスの皿を指差して、琴子が言い出した。
「どっかに返しに行くの?あ、フロントに電話するとか」
「……琴子」
琴子が言うのを遮って、俺はソファから立ち上がり、ベッドまで歩いて腰を下ろした。
「おいで」
琴子に手をさしのべる。
「……え、あ、はい…」
琴子は目を見開いていたが、ゆっくり俺の方に歩いてきた。
俺の前に立った琴子の顔に手を伸ばし、その頬に触れる。
「きょうまで長かったな」琴子の顔をみつめ、俺は囁く。
「うん、でも平気。入江くんと一緒にいるだけで嬉しかったもん」
琴子ははにかんだように、そう言った。
それも、こいつの本音だろうな。
だけど。
「俺は、もう、平気じゃない」
琴子を腕の中に閉じ込める。甘い匂いが鼻腔をくすぐった。

そう、俺は
もう、我慢はしない。




☆☆☆


遠くに、波の音が聞こえる。
俺は、ベッドに横たわり、ひどく穏やかな気分で、それを聞いていた。
シーツの上に、長い髪が広がっている。
その光景が、すごく好きだと思った。
琴子はよく眠っている。
あどけない寝顔は、さっきまでとはまるで別人のようだ。
お前、あんな顔、他の誰にも見せるなよ。

くすぐったいような、甘ったるいような。
………満ち足りた、心。
ホントにお前は、俺にいろんな感情を与えてくれるんだな……
ようやく結ばれた俺たちを、静かな時間が包んでいる。
夜明けまで、あと少し。
俺は、素肌のまま眠る琴子を胸の中に抱き寄せると、目を閉じた。
もう少し、この余韻に、感情にひたっていよう。
生まれて初めて感じる、胸いっぱいの幸せに。


☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ


初めて書き上げた作品です。
あの新婚旅行で、直樹はクールに振る舞ってましたが、実はこんな夜をすごしていたんじゃないかな、だからこその名セリフ「俺は、もう、平気じゃない」がでてきたんじゃないかな、というところから妄想してます。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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おあずけ♪
たまち様


おあずけ直樹、書いていても楽しかったです♪

確かに!
黒歴史がもう少しで誕生するところだったんですね!
披露宴が黒歴史だから、それが、さらに最悪な方向へ向かうかもしれなかったんだ。
よかったね、直樹(笑)
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Re: みゆっち様
コメントありがとうございます!

とってもキュンキュンだなんて!
そう言っていただけて、こちらこを嬉しいです!書き手冥利につきます。

やっぱり天才は忍耐力も常人とは違うのでしょうか?(笑)
葛藤する入江くんは、書いていて楽しかったです☆
プロフィール

あおい

Author:あおい
「イタズラなKISS」にはまり、妄想のあまり書いた二次創作小説と言う名の駄文置き場です。
ひそやかに、かつマイペースに更新いたしますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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